10年前では不可能だった…「エイリアン:アース」地球を舞台にした新機軸ドラマ、プロデューサーの狙い

10年前では不可能だった…「エイリアン:アース」地球を舞台にした新機軸ドラマ、プロデューサーの狙い
SF映画の金字塔『エイリアン』(1979)の出来事から2年前の地球を舞台にした、初のドラマシリーズ「エイリアン:アース」。制作したのは、真田広之主演のドラマ「SHOGUN 将軍」を世界的ヒットに導いた米FXだ。同作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるデヴィッド・W・ザッカーが撮影地であるタイでインタビューに応じ、全8話のシリーズで描く新機軸の『エイリアン』について語った。
「エイリアン:アース」が描くのは、ウェイランド・ユタニ社の宇宙船が墜落した2120年の地球。宇宙船には「暗黒の宇宙で回収された5種の地球外生命体」が積まれており、地球を統治する大企業・プロディジー社が開発した初のハイブリッドが、生命体回収の任務を任される。ショーランナーを務めるノア・ホーリーは、人気マーベル・コミック「X-MEN」に基づくドラマ「レギオン」や、1996年公開の同名映画から着想を得た「FARGO/ファーゴ」を手がけた気鋭のクリエイターだ。
「映画は2時間のサバイバル作品として構築されていますが、今回はテレビシリーズという長尺のフォーマットを構想する必要がありました」と切り出したデヴィッドは、「10年前では、テレビシリーズ化は不可能だった」と実現へのハードルは非常に高かったと振り返る。実際、ノアは2018年ごろから企画を構想しており、ドラマの完成までは7年の歳月を費やしている。

ドラマシリーズ化が大きく前進するきっかけとなったのが、「地球を舞台にする」という新しい方向性だった。「地球については、これまで断片的に語られていましたが、あまり深く定義されていなかった神話的要素も多くあります。その部分をしっかりと脚本上で掘り下げるのがノアの役割です。彼は、それを見事にやり遂げました」
デヴィッドが求めたのは、シリーズ生みの親であるリドリー・スコット監督が手がけた1作目の美学を踏襲し、『エイリアン』の世界観で地球を本物らしく再現することだった。FXは昨年、日本の戦国時代をオーセンティックに描いた「SHOGUN 将軍」でエミー賞を総なめした成功例がある。
「本物らしさは、最優先の目標でした」とデヴィッド。「この作品が十分な水準に達していることを、シリーズファンに感じてもらえるようにしたかった」と狙いを語る。

リドリーは製作総指揮として本作に参加しており、「ノアとは企画の初期段階から、オリジナル版の資料を見た上で何度も話し合い、その後も進捗を確認してきました」とデヴィッドは証言。特にリドリーが驚いたのは、1作目に登場した宇宙貨物船「USCSS ノストロモ」を“再現”した「USCSS マジノ」の造形だったという。
「リドリーにとって感動的だったのは、ノアがノストロモ号を文字通り“再現”することを選んだ点です。マジノ号は(内装が)多少異なる船ですが、ノアは20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)のアーカイブからブループリントを探し出し、丸ごとセットで再現しました。リドリーにとって、46年前の船が新たな形で蘇ったのは、本当にスリリングな体験だったのです」
「エイリアン:アース」はかねてより、複数シーズンでの展開が想定されてきた。続編が更新されれば、リドリーが手がけた『エイリアン』とのリンクも期待できるが、デヴィッドは「現時点ではそういった意図はありません」とキッパリ。「映画は映画で独自の世界観を持ち、テレビシリーズも共通する要素はありますが、直接つなげる計画はありませんでした。この世界の設定がそれほど確立されていなかったことが、ノアに大きな創作の自由を与えたのです。もし複数シーズンが実現すれば、その過程で何らかの接点が生まれる可能性はありますが、それはあくまで物語の流れの中で見えてくるものでしょう」と映画とのリンクは慎重な姿勢を見せた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
「エイリアン:アース」ディズニープラス スターで独占配信中(毎週水曜日に新エピソード追加)