懐かしさが新しい「国産ビンテージカー」、個性的デザインで若者も魅了…サブスクやSNSが人気後押し

 懐かしさが新しい。1960~90年代に販売された国産車が「ビンテージカー」「ヤングタイマー」などと呼ばれ人気だ。個性的なデザインと、快適一辺倒ではない操作性が車好きの心をとらえているようだ。(長岩真子)

レトロなデザインが目を引く男性の車(2日、東京都渋谷区で)=佐藤俊和撮影 ※画像を一部修整しています

 低重心の真っ赤な車体、丸みのあるルーフラインと丸い形のライトに味がある。いすゞ自動車のベレット1600GT。東京都内に住むオーナーの男性(54)はハンドルを握りながら、「素早い加速が心地よい。木製ハンドルや円形メーターなどの内装も気に入っている」とほほ笑む。

 ベレットは1963年に発売され、73年まで生産された小型乗用車だ。1600GTは64年に誕生。長距離を高速で走行できる性能の高さを表す「GT(グランツーリスモ)」を初めてうたった国産車で、「ベレG」の愛称で親しまれた。

時代を感じるハンドルやメーター

いすゞベレットのさざ波マーク

 男性は20歳で免許を取得してから、ベレット一筋。最初に運転したのは、父親が所有するセダン型で、20代半ばに1600GTを入手した。以来、約30年間、整備士向けのマニュアルを参考に自身で部品を交換するなどして乗り続けている。

 「シンプルな構造で、操縦しやすく、修理も楽。新しい車に乗り換えようと思ったことがない。走れる限り乗り続けたいですね」

 車離れが叫ばれる中、国産ビンテージカーは若者の注目も集める。昭和レトロブームや、SNSでかつての「名車」を容易に見られるようになったことが一因。車のサブスクリプション(定額利用)サービスを手がけるKINTO(キント)では、ビンテージカーを借りる人は50代に次ぎ、20~30代が多いという。

 日本クラシックカークラブ(CCCJ)の山路日出夫さんは「今の時代にはないノスタルジックなデザインが受けている。幼い時に憧れた記憶を懐かしんだり、親や祖父母が乗っていた時代に思いをはせたりしながら楽しめることも魅力なのだろう」と話す。

 中古車サイト「グーネット」の運営会社で執行役員を務める大塚憲司さんによると、国産ビンテージカーの中でもスポーツカーはとりわけ人気で、発売時の倍以上の値が付くものも少なくない。「状態のよい車が少なく、需要過多の状況。人気車種の価格上昇は当面続く」とみる。

映画や漫画で活躍

 人気を集める国産ビンテージカーには、映画やゲーム、漫画で取り上げられたものも多い。

 日産自動車が生産した1930~2010年代の車約280台を公開している座間事業所(神奈川県)で、同社の歴史担当の中山竜二さんが「国内のみならずアメリカで絶大な人気を誇る」と胸を張るのが、1999年に発売した「スカイラインGT―R」だ。カーアクション映画「ワイルド・スピード」シリーズで主要キャラクターの愛車として登場した。

 ホンダのシビックは、アメリカの映画監督、クエンティン・タランティーノの作品で度々使われた。72年発売の初代は、斬新な台形ボディーが特徴だった。トヨタ自動車のAE86型「カローラレビン」はレーシングゲームに、同型の「スプリンタートレノ」は漫画にも登場し、「ハチロク」の愛称で親しまれる。