「べらぼう」ていはいつから恋していた?気になるいくつかの疑問を橋本愛が解釈

「べらぼう」ていはいつから恋していた?気になるいくつかの疑問を橋本愛が解釈

 横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほか)で主人公・蔦屋重三郎の妻ていを演じる橋本愛。7月6日放送・第26回では、形だけの夫婦だった蔦重とていの関係に変化が訪れ、真の意味で結ばれる展開となったが、ていはいつから蔦重に恋愛感情を抱いたのか? そして、喜多川歌麿(染谷将太)の蔦重に対する恋心には気づいていたのか? 視聴者の間でも注目を浴びているいくつかの疑問について、橋本が解釈を語った。

 大河ドラマへの出演は、「西郷(せご)どん」(2018)、「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(2019)、「青天を衝け」(2021)に続いて4作目。そのうち「西郷どん」では吉之助(のちの西郷隆盛/鈴木亮平)の最初の妻、「青天を衝け」では渋沢栄一(吉沢亮)の妻と、くしくも主人公の妻を演じるのは3度目となる。「べらぼう」で演じるていは、日本橋の本屋「丸屋」の娘。蔦重とは、経営が傾き店じまいをしようとしていたところ、蔦重がその土地を買い、そこで店を構えようとしたことが縁で知り合った。

 二人の出会いは最悪な形で、ていは元夫の吉原通いが原因で店が傾いたことから吉原を良く思っておらず、初めは「吉原者」である蔦重を拒絶していた。いまでこそ「おしどり夫婦」となった二人だが、ていは、いつ頃から蔦重に惹かれるようになったのか。

 「“あ、好き……”って?(笑)。そうですね……1番大きい出来事はやはり浅間山が噴火したときの灰捨て競争だったのではないかと思います。蔦重さんが“遊びじゃねえから遊びにすんじゃねえですか!”と言うんですけど、多分おていさんは度肝を抜かれたと思うんです。おていさんは真面目な性格なので、自分を律し続け、隙間なくきっちり生きてきた人だと思うので、遊びによってこんなにも豊かな発想が生まれるんだと。蔦重さんが、自分の愛する日本橋の皆さんを笑顔にするのを見て、彼にはかなわないと思ったのが1番初めの感情でした。自分の非力さに打ちひしがれたりもするのですが、そこで嫉妬とか黒い感情に巻き込まれることなく、蔦重さんに対して素直に羨望のような、尊敬する気持ちを抱いたのがきっかけだと思います」

 第25回では祝言をあげるも、この時はあくまで「商いのため」の夫婦であり、寝室も別にしていた。二人の関係が変わったのが26回。大田南畝(桐谷健太)や歌麿(染谷将太)ら文化人に加え、田沼意知(宮沢氷魚)ら武家にも人脈がある蔦重の人望の厚さに圧倒されたていは、自分は不釣り合いだと自信をなくし、出家を決意する。そんなていを、蔦重は追いかけ必死に引き留める。この時のていの気持ちを、橋本はこう思い返す。

 「一言で言えば、本当に嬉しかったと思います。蔦重さんはつまらないと思ったことはないと言ってくれましたが、きっとおていさんは子供の頃からずっと人からそう言われてきただろうし、自分はつまらない人間だと自分にレッテルを貼って生きてきたと思うので、コンプレックスだと思っていたところをある種の才能という風に認めてくれて、自分の人生を丸ごと肯定してくれた。そして何より響いたのが、“この人ならこの先山があって谷があっても一緒に歩いてくれんじゃねえか”の言葉。もう、これ以上ないプロポーズですよね。おそらくおていさんは店をつぶしてしまったのは自分の責任だと思い込んでいて、どこか自分を責める気持ちがずっとあって。だから蔦重さんに惹かれていくほど“この人を不幸にしてしまったらどうしよう”“自分が店を傾かせる要因を作ってしまったら”と不安に思うようになったんじゃないかと。“谷があっても”というのは、苦しい目にあっても逆境に置かれてもという意味だと思うので、おていさんの中でも“自分も怯えず、ひるまず何が起きてもともに生きて行こう”と覚悟が決まった瞬間だったと思います」

 一方で、蔦重の言葉をまるごと受け止められたわけではなく、どこか信じ切れない気持ちがあったとも。

 「とびきりのセリフ、“おていさんは俺が、俺のためだけに目利きした俺のたった一人の女房でさ”に関しては“本当かな……”と(笑)。本来であれば泣いて喜ぶような言葉だと思うんですけど、信じていいのかと不安がゼロではなかっただろうなと。もちろん、蔦重さんの人柄を見ていて嘘じゃないのはわかってはいるんだけど、おていさんの考え方の癖として。でも、この人を信じたいと思う気持ちが愛情だとも思うので、おていさんが蔦重さんを愛していると自覚したシーンでもあったのではないかと思います。実は、涙したテイクもあったんですけど、おていさんには涙を見せない強さもあると思うので結果的に良かったと思います」

 ちなみに、このシーンでていは蔦重に「今をときめく作者や絵師や狂歌師、さらにはご立派なお武家様まで集まる蔦屋にございます。そこの女将には、もっと華やかで才長けた、例えば吉原一の花魁を張れるようなそういうお方が相応しいと存じます」と言い、視聴者の間では「吉原一の花魁」とは瀬川(小芝風花)を指すのではないかとの考察もあったが実際はどうだったのか?

 「わたしの中では知らないように演じていました。蔦重さんには過去に大切な人がいたんだと噂話などで聞いていてもおかしくはないと思うのですが、“こういう人がいたから”というふうには限定したくなかったんです。蔦重さんにはそれほど美しく、才ある人がふさわしいのではないかと、大きい視点でありたかったので」

 そして、蔦重に惚れているのはていだけではなく、歌麿も特別な感情を持っている。鈍感な蔦重はまるで気づいていないが、蔦重の母つよ(高岡早紀)がていに「歌はあの子の念者なのかい?」と問うたことで、ていが歌麿の思いに気づいたのではないかという見方もある。

 「わたしとしては気づいていないつもりで演じています。おていさんも恋愛経験はひどく少ないと思うので、人の機微には蔦重さんまではいかないけれど鈍感だろうなと。つよさんの“念者なのかもしれない”という言葉にはもちろん考えは及ぶし、おていさんが蔦重さんに言った“もしそういうことならどうぞご遠慮なく。歌さんと”というのは心からの言葉ではあるんですけど、蔦重さんからそんな関係じゃないと言われてからは気にしないように演じています。それに、歌麿さんの想いに気づいていないからこそ、蔦重さんに対して思いが深まっていったのではないかと。もし気づいていたら、おていさんの性格上、歌麿さんに遠慮してしまうと思うので」

 10日放送・第30回「人まね歌麿」では歌麿が蔦重の元を離れ、妖怪画の大家・鳥山石燕(片岡鶴太郎)のもとに身を寄せる展開に。これから先、蔦重とていの関係にも変化が訪れ、新たなフェーズに突入していくというが、本作で共演した横浜流星の印象について橋本は「武士みたいな迫力のある方」だと話す。

 「横浜さんに初めに抱いた印象はストイックで、武士みたいな迫力のある方だなと。初めてお会いした時、体幹がすごくて、お着物がとても似合っていらっしゃるなと思いました。おていさんのように実直で真面目な方だとも思っていたのですが、実際にお話ししてみると、とてもフランクな方で。ユーモアがあって、待ち時間、空き時間には共演者やスタッフの皆さんと冗談を言い合って笑っていたり。とてもフラットですし、わたしとしては心強く、とても助かっています」と頼もしい存在であることを明かしていた。(編集部・石井百合子)