「汚い」「染めたら若く見えるのに」と言われることも…34歳で白髪染め&縮毛矯正をやめた女性の“想い”

 毛量が多く、癖毛であることに長年コンプレックスを抱えていたYukariさん(41歳・@yucurly_journey)。黒髪ストレートを保つために、高校3年生から15年近く縮毛矯正を続け、30歳からは毎月白髪染めをしていたのだそう。ところが34歳のとき、思い切ってそれらのケアをやめる決断をします。

Yukariさん

 白髪を染めるのをやめ、地毛のカールを活かしたスタイリングを探るうちに、自分の髪に対する気持ちが少しずつ変化していきました。

 2022年からは、自身の髪との向き合い方や日々のスタイリングをInstagramで発信。今ではフォロワー6万人を超え、“毛髪診断士”そして“癖毛アドバイザー”としてスタイリングレッスンも行っています。

 そんなYukariさんが長年抱えてきた髪の悩みや、白髪染め&縮毛矯正をやめたきっかけなどを聞きました。

◆「かわいそう」と言われてきた私の髪

「暇さえあれば必死にくせ毛を手で押さえつけていた」という中学生時代のYukariさん

――Yukariさんは、どんな髪の悩みがあったのでしょうか。

Yukari:昔から毛量が多く、癖毛なのがコンプレックスでした。小学校高学年くらいから、「髪の量が多いから大変だね」「癖っ毛って扱いにくいからかわいそうだね」と美容師さんから同情されるようになって、「私の髪の毛ってダメなんだ」と思い込むようになりました。

中学時代は髪の毛がうねるのが嫌で、常にオールバックで引っ詰めたひとつ結びでした。モワモワしたおくれ毛が出てくるのが許せなくて、強力なタイプのヘアスプレーでガチガチに固めていました。すると、先生から「整髪料を使うのは校則違反」と怒鳴られて、手洗い場の水道で髪を洗わせられたこともあり、自分の髪が大嫌いでした。

黒髪ストレート時代のYukariさん

高校3年生からは縮毛矯正をかけるようになり、髪が広がらないように重めのロングヘアでした。縮毛矯正とブリーチを同時にすると髪が傷みやすいので、ずっと黒髪で、20年間同じ髪型を続けました。

それでも、ヘアセットは全然ラクになりませんでした。1か月も経つと根本に地毛が伸びてくるので、ヘアアイロンで抑えるのが大変で、結局は髪を結んでごまかすしかなく、髪を下ろせないんです。29歳で第1子を出産してから白髪が増えて、月1回の白髪染めが欠かせなくなりました。

◆白髪染めも縮毛矯正も「マイナスをゼロに戻す」ケアだった

――縮毛矯正と白髪染めをやめたのはなぜだったのでしょうか。

Yukari:幼児2人の育児に忙しくなり、毎月の白髪染めに疲れてしまったんです。「私、おばあちゃんになってもこれを続けるのかな」という思いが込み上げて、2018年を最後に両方やめました。美容師さんにそう伝えると、「大丈夫ですか?」とビックリされました(笑)。

白髪染めも縮毛矯正も、「マイナスをゼロに戻す」ためのケアなので、せっかく美容院に行ってもワクワクする気持ちは湧かず、むしろ毎回憂鬱でした。それなのにお金はかかるし、スケジュールも空けないといけない。

白髪染めだけでも毎月4000円くらいはしますし、美容師さんからトリートメントを勧められてプラス数千円掛かってしまったりするので、縮毛矯正代も含めると年間でおよそ12〜13万円にもなります。それなのにいつも同じ髪型で、全然オシャレを楽しめていない自分に気がつきました。

◆グレイヘアに対する周りの反応

――最初は、どうやってグレイヘアに移行したのでしょうか。

Yukari:縮毛矯正をやめる前は、ある程度地毛を伸ばしてから一度ボブくらいの長さにカットしました。そして白髪と黒髪の境界が馴染むように、ハイライトを入れてもらい、白髪染めをやめました。

当時は、地毛を伸ばす間はまとめ髪にして耐えるしかありませんでした。でも今は、地毛とストレート部分の境目を目立たなくするような“脱縮毛矯正パーマ”をやってくれる美容室があるので、縮毛矯正をやめたい方は検討してみるといいと思います。

最初のうちはまだ、癖を抑えたい気持ちが強かったので、ヘアアイロンでワンカール風に巻いたりしていましたね。YouTuberの「Curly Girl Rin 天パのカーリーガールリン」さんや、海外のYouTuberを参考にしながら、癖毛を活かしたカールを作るようになってから、「私の髪っていいじゃん」と少しずつ前向きに思えるようになっていきました。

試行錯誤していたときコロナ禍に入り、人と会う機会が減りました。そこで、試しに髪をピンク色にしてみたんです。「縮毛矯正も白髪染めもしていないから、どんな髪色にもできるんだ」と、ますます気持ちが解放されました。

――周りの反応はいかがでしたか?

Yukari:子ども達はあまり何も言ってこないですね(笑)。ときどき、街でポスターを指差して「この人、ママと同じカーリーヘアだね」と言ったりするくらいです。私の髪を見て、天然パーマや癖毛に対してポジティブなイメージを持ってくれているのかなと感じています。

ママ友には、最初のうちは自分からは何も言いませんでした。老けてみられることを異常に恐れて、白髪があることを隠していたので「白髪を染めるのをやめた」と口に出すのが嫌だったんです。でもSNSで発信を始めてしばらく経つと、応援してくれる方が増えたこともあって、あまり気にならなくなっていきました。また、発信を見てくれたママ友から、「私もYukariちゃんみたいに白髪を活かすことにした」と声をかけてもらえたりするようになりました。

◆グレイヘアを始めたい人のロールモデルに

――否定的な意見はありましたか?

Yukari:当時通っていた美容師さんは否定的でした。白髪染めをやめると言うと、「ご家族がなんて言うかですね〜」「お子さんが嫌がったら、染めたほうがいいかもね」と。癖毛についても、「お子さんは似なくてよかったね」と言われたことがあります。悪気はなかったのだと思いますが、「どうして、“私らしさ”を否定することを言うんだろう」と悲しい気持ちになりました。

SNSのコメントは大半が肯定的なのですが、男女問わず特に年上の方から「白髪染めをしたほうがいい」というコメントをもらうことが多いです。「汚い」とか、「染めたら若く見えるのに」と書かれたりしますね。でもそれは他人の主観であって、現実の私とは関係のないことだと常に思っています。

――グレイヘアについてSNSで発信するきっかけは、何だったのでしょうか。

Yukari:コロナ禍で会えなかった親友に、2022年に再会したとき、白髪が多いことをカミングアウトしたんです。それまでは常に染めて、絶対にバレないようにしていました。

でも、白髪染めをやめて癖毛も受け入れたことで、自分の中ですごくいい変化があったことを伝えたくなったんです。すると親友は私のチャレンジをすごく褒めてくれて、「きっと興味がある人がたくさんいるから、インスタグラムで発信してみたら」と背中を押してくれました。

今ではグレイヘアについて発信する人が増えてきましたが、当時はまだグレイヘアと癖毛の両方を楽しんでいる人は見たことがありませんでした。そういうロールモデルがいたら、私自身もっと早くグレイヘアに踏み切ることができたんじゃないかと思います。「誰かが私の姿を見て安心してくれるといいな」と思って、発信してみることにしました。

実際にInstagramを始めてみると、驚くほど大きな反響がありました。とくに、“美容師さんに言われて傷ついた一言”という投稿に共感する声が多かったです。こんなにもたくさんの方が、癖毛や白髪のことで悩みながらも我慢していたんだなと。「今すぐに白髪染めをやめる勇気はないけど、背中を押してもらってよかった」という声もいただいて、やってみてよかったなと思いました。

<取材・文/都田ミツコ 撮影/鈴木大喜>

【都田ミツコ】

ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。