「深夜のラーメン」は罪か…わたしたちが高カロリー夜食を求める理由

女性も「がっつり、こってり、炭水化物」

「何も作りたくない」けど、お腹は減る。特に寝る前に食べる夜食は、一日の疲れもあって、ごく簡単にできるものか、できれば誰かに作ってほしい。  

2024年6月、情報サイトさぶろくの「夜食」についてのアンケート調査によると、食べたい夜食の1位は「ラーメン」だった。

理由として、「太るのは分かっているけれどガッツリ食べた方が満腹感があるから」(20代女性)、「夜は温かい汁ものをさっとたべたくなる。特に、ドーミーインの夜泣きそばが最高」(30代女性)、「夜食にはあっさりの醤油ラーメンがいい。炭水化物と塩分が欲しくなります」(40代女性)などが寄せられた。

テレビの食レポなどで、「さっぱりしていて女性向き」だの「食べやすい小ポーションだから女性にもおすすめ」などと「女性好み=少食、ヘルシー、さっぱり味」などと決めてかかっているのを見るが、実際は女性も「がっつり、こってり、炭水化物」が好きなのである。

そうした「食べたい夜食に男も女もない」実情を知り尽くしているのが、看護師で漫画家の中山有香里さんが描くコミックエッセイ『疲れた人に夜食を届ける出前店3』(KADOKAWA)だ。

エモキャラたちが温かい夜食で癒す

2022年10月に『疲れた人に夜食を届ける出前店』を出版、第10回料理レシピ本大賞 in Japan コミック賞を、前年の『泣きたい夜の甘味処』での受賞と合わせて2年連続で受賞した。翌年2023年11月に続編を待つ呼び声にこたえ、『疲れた人に夜食を届ける出前店2』を発売。本書は、それに続く第3巻になる。

物語の舞台は、とある町の片隅にたたずむ夜食の出前店。そこで働くのは、店主のクマをはじめ、クマと働くサケ、出前アルバイトのゴリラやネコ、まっくろいコ、元引きこもりの吉村など、心優しきエモいキャラたちだ。毎日仕事に、人間関係に疲れ、心身ともにくたくたになって帰宅する人たちを、温かい夜食で癒す、シンプルなストーリーと実用的なレシピで構成されている。

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『疲れた人に夜食を届ける出前店』より ゴリラのデリバリー

前編「『何も作りたくない』日も食べたい夜食1位は『ラーメン』でも理性の働くときはアノ定番メシ」では、第17週目の月曜日からの1週間の夜食~涙を流した数だけえび天をサービスしてくれるうどんや雑炊、炊き込みごはんに加え、明太チーズや枝豆チーズの変わりベーグルの作り方~について詳しくを紹介している。

こってりとさっぱりの絶妙なチキン南蛮

後編は18週目の夜食をお伝えする。

月曜日は、お金を貸したまま彼女に振られた男性の、「受け入れがたい」月曜日のブルーなムードを吹き飛ばす、ボリューミーな味噌汁。オカンと一緒に現れたクマとサケが鶏とキャベツで作ってくれた。「おふくろの味」は、ハートとお金を同時に失った彼の心を、きっと癒してくれるだろう。

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火曜日は、なぜかバーのマスターと女性客に扮したクマとサケ。カウンターの端っこに座る傷心男性に、チキン南蛮とご飯を差し出す。 

鶏肉に溶き卵の軽い衣をまとわせ、カリッと揚げたチキン南蛮は、甘酸っぱいタレをからめ、さらにマヨネーズとケチャップ、玉ねぎとゆで卵で作ったタルタルソースをたっぷりとかける。こってりとさっぱりの絶妙な味加減は、彼の傷ついた心に、じゅうぶんな幸福を与えてくれるはずだ。

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水曜日は周りはサクッ、中はとろりのコーンクリームコロッケ。 

木曜は心が荒み、外見もコワモテな男性に、アイスの屋台。ミスマッチ、と思いきや、バニラアイスにトッピングされたチョコスプレーやチョコソース、苺やあんこ&ホイップクリームなどが疲れ切った彼の心を和ませ、ときめきを与える。

アンケートでも、食べたい夜食の2位に入っていたアイスクリーム。昔は「アイスクリームの歌」になるほど、憧れの存在だったが、今でも私たちの心を弾ませる魅力を放っているのだ。

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食欲と心を満たす「読む夜食」

金曜日は怒りで眠れない女性の負のパワーを熱源にして作った「豆腐チゲ」。怒りは抑えるのではなく、発散させることで、気持ちを前向きにできることを、ネコが教えてくれる。 

土曜日は、金も彼のハートも持ったまま消えた「カナコ」を、いまだ忘れられない男性に、サケが「アスパラベーコン」をおごる。ベーコンの油でいためるので、油は不要だが、仕上げのガリバタでおいしさ倍増。カナコの代わりに、アスパラベーコンで頭がいっぱいになりますように。

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ラストサンデーは、夜食アンケート1位のラーメン。この日は夜食店のみんなは「休暇中」だからと、ラーメンは出前のようだ(なので、レシピは載っていない)。 

作って「食欲」を満たし、読んで「心」を癒す、 “読む夜食”の本書。FRaU webでは、第18週目の7つの夜食と物語を漫画でお伝えする。

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本書に登場する配達員たちが届ける夜食は私たちの胃袋の飢えとともに、心の飢えも満たしてくれる。「罪悪感」「疲労」「寂しさ」「癒し」……こうしたポジティブとは言えない感情にもそっと寄り添ってくれるのが、この本書の魅力だ。

第3巻の巻末には、特別エピソード、スタッフたちの夏休みが描かれている。 

エアコンなしの暑い空き家住まいのネコたちをもてなす「夏のピザパーティ」や、吉村の世話を焼き過ぎているのではないかと自戒する魔王に、吉村からの涙の恩返しがあったり、「人を癒すには、まず自分から」と大切なことに気づかせてくれるクマとサケの休日など、ほのぼのした優しさの中に学びがある。