DeNA・藤浪の年俸5000万円は格安か 古巣の阪神戦はメディアも注目、「集客とグッズ収益アップ」も

■制球力不安で復活に懐疑的な見方も, ■「復帰はメディアにとってありがたい」, ■メジャーに再挑戦する可能性, ■かつて3度も海を渡った投手がいた

 3年ぶりに日本球界に復帰し、DeNAに入団した藤浪晋太郎。報道によると、契約期間は今季終了までで、推定年俸5000万円という。同じくシーズン途中の入団が決まったドリス(阪神)は推定年俸1400万円、乙坂智(巨人)は推定年俸420万円と報じられているのに比べると、DeNAの藤浪への期待値の高さがうかがい知れる。

 藤浪は今季のメジャー登板なし。マリナーズ傘下3Aで21試合に登板して2勝1敗4ホールド、防御率5.79で6月17日に自由契約で退団となった。それでもDeNAは藤浪を再生可能と判断し、獲得に乗り出した。背番号「27」を託したことも期待の表れだろう。DeNAの前身の大洋で201勝をマークした平松政次が背負ったエース番号で、その後もロッテから移籍した小宮山悟氏(現早大監督)、阪神からFA移籍して先発の軸として活躍した久保康友(現関西独立リーグ・兵庫)などが継承している。

 7月18日に横浜市内で開かれた入団会見で、藤浪は、「長いイニングも短いイニングもできると思っている。まだまだリーグ優勝を狙える位置だと思いますし、球団の方々にも本気で逆転優勝を狙っているというお言葉をいただいたので、少しでも貢献できるように、本気で優勝を目指して、そこのひとつのピースになれるように頑張っていきます」と決意を口にしている。

■制球力不安で復活に懐疑的な見方も

 ただ、復活に懐疑的な見方が多いことも事実だ。米国での投球映像を確認したというパ・リーグ球団の編成担当は「直球の球威は十分ですが、制球力の不安という課題を抱えたままだったので、日本球界に復帰しても厳しいかなと感じました。日本球界から3年間離れて、NPB公式球を投げる感覚を取り戻さないといけないし、残りのシーズンが2カ月ほどであることを考えると、短期間で制球力を改善させるのは非常に難しいミッションです」と明かす。

 藤浪が活躍できなかったとしても、DeNAは損をしないという見方もある。スポーツマーケティングの担当者は「商業的に言えば、年俸以上の市場価値があると思いますよ」と言い、次のように分析する。

■制球力不安で復活に懐疑的な見方も, ■「復帰はメディアにとってありがたい」, ■メジャーに再挑戦する可能性, ■かつて3度も海を渡った投手がいた

■「復帰はメディアにとってありがたい」

「DeNAの本拠地・横浜スタジアムは連日満員御礼でにぎわっていますが、スター性がある藤浪が入ることでさらに注目度が上がる。メディアへの宣伝効果が大きく、個人グッズなどが発売されれば物販の売り上げも期待できます」

 注目されるのが、古巣・阪神戦だ。首位を独走する阪神は佐藤輝明、森下翔太を中心とする強力打線を有する。近本光司、大山悠輔は藤浪と同学年で、気心知れたかつての戦友たちを相手に藤浪がどのような投球を見せるか楽しみなファンは多いだろう。藤浪自身も会見で対戦したい選手として、佐藤の名前をあげていた。

 スポーツ紙デスクは「阪神が首位を快走し、セ・リーグの灯が消えかかっている状態で、藤浪がセ・リーグ球団に復帰したことはメディアにとってありがたいです。阪神戦で快投を見せれば、1面になるでしょう。DeNAが上昇気流に乗って阪神と首位争いを繰り広げるような展開になったら、さらに藤浪への注目度が高まります」と期待を込める。

■メジャーに再挑戦する可能性

 一方、藤浪の契約期間が今季終了までということについて、阪神を取材してきたスポーツ紙記者は「DeNAとの契約が切れたら、来年以降は米国で再挑戦する可能性が考えられます。藤浪にとってメジャーは特別な場所ですから」と推測する。

 藤浪はDeNAの勝利のために全力を尽くすが、日本球界で好成績を残すことができれば、自身のメジャーでの市場価値を上げることにもつながる。メジャーリーガーの代理人は藤浪の「進化」に注目していると話す。

「藤浪の160キロを超える直球は大きな魅力であることをメジャーの各球団は把握している。問題は制球力に尽きます。ここを改善できれば、評価がガラッと変わる。藤浪がプレーした各球団は様々なアプローチで修正に取り組んだが、改善できなかった。DeNAがAIを活用した科学的アプローチで藤浪の制球力を向上させるとメディアで報じられていました。10年近く制球に悩んでいた投手が劇的に改善されるケースは今までなかったので、興味深い取り組みです」

■制球力不安で復活に懐疑的な見方も, ■「復帰はメディアにとってありがたい」, ■メジャーに再挑戦する可能性, ■かつて3度も海を渡った投手がいた

■かつて3度も海を渡った投手がいた

 実際にメジャーでプレーして、日本球界に復帰した後、メジャーのマウンドに戻った投手がいる。日米通算815試合に登板した岡島秀樹氏だ。

 巨人、日本ハムでプレーした後、メジャーのレッドソックスに移籍し、07年にワールドチャンピオンに貢献するなど、セットアッパーとして活躍。11年限りで退団して日本球界に復帰すると、12年はソフトバンクに所属して56試合登板で24ホールド、防御率0.94の好成績を挙げた。そのシーズン終了後に再びメジャー復帰を目指してアスレチックスとマイナー契約。13年5月にメジャーに昇格し、5試合に登板したが、シーズン途中で自由契約になる。その後、ソフトバンク、DeNAでプレーした後、現役最終盤の40歳のときに3度目のメジャー挑戦でオリオールズとマイナー契約を結んだが、メジャー昇格はかなわず16年に現役引退している。

 藤浪は期待通りの活躍をして逆転優勝に向けた救世主になれるか。そして来年はどのマウンドに立つのか。藤浪の復活劇が注目される。

(ライター・今川秀悟)