祝・還暦! 乞う復活! ヤンチャとロマンに満ち溢れた名車「シルビア」の軌跡
祝・還暦! シルビア!!! ヤンチャとロマンに満ち溢れた名車の軌跡
2002年に生産終了しながら、走りが楽しめるFRスポーツクーペとして今でも根強い人気を誇るシルビア。同車といえば大ヒットした5代目S13のイメージが強いが、実は今年で生誕60年を迎える長寿モデルでもあるのだ。そこで今回は、60年間で生まれた歴代シルビアを紹介する。
文/木内一行、写真/日産
【画像ギャラリー】オジサン世代にはたまらない!! 「シルビア」の軌跡(16枚)
「日産随一の高級クーペとして世に送り出された」 初代、2代目
祝・還暦! シルビア!!! ヤンチャとロマンに満ち溢れた名車の軌跡
エッジを効かせたクリスプカットと名付けられたボディラインや、パネルの継ぎ目を極力少なくしたデザインにより、高級クーペにふさわしい美しいスタイリングを実現。ただ、全長3985mm、全幅1510mmと非常にコンパクトだった(初代)
生産終了から20年以上経っているにもかかわらず、人気に衰えがないシルビア。今ではスポーツクーペとして知られている同車だが、当初のキャラはちょっと違っていた。
1964年の東京モーターショーで「ダットサン・クーペ1500」として披露され、翌年に「日産・シルビア」として市販された初代は、日産のイメージリーダーカーにもなりうる2シーターの高級クーペだったのだ。
クリスプカットと呼ばれる美しいスタイリングのボディは熟練工によるハンドメイドで、レザーを用いた室内も豪華。シャシーは既出のフェアレディと共有し、エンジンも同じ1.6リッターが搭載された。
そして、手の込んだ作りもあって新車価格は120万円と非常に高価。兄弟車のフェアレディ1600が約90万円、最上級セダンのセドリックでも115万円ほどだったことを考えると、いかに高額だったかがわかる。
そのため、生産台数も554台と少なく、わずか3年間で生産終了となったのだ。
初代の生産終了後しばらく絶版となっていたが、1975年にその名が復活。「ニュー・シルビア」と改称するとともに、小型スペシャルティクーペに生まれ変わった。
見どころはなんといってもスタイリングで、どこを見ても斬新。良し悪しは別として、とにかく個性的なのだ。
一方、多くのコンポーネントは他車から流用してコスト削減。当初はロータリーエンジンを搭載する予定だったが燃費問題から頓挫……というのは有名なハナシ。
唯一無二のスタイリングは注目度こそ高かったものの、販売面で苦戦。初代の華々しいキャラクターから一転、シルビアのなかでも影の薄い存在となってしまったのである。
「走りのキャラを強め、レースシーンでも活躍」 3代目、4代目
アクの強いデザインの2代目は、3年半という短いモデルライフを経て1979年にモデルチェンジ。3代目は小型スペシャルティというポジションを受け継ぎながら、より幅広い層に受け入れられることを目指したという。
そのため直線基調のシャープなデザインを採用し、2代目のイメージを一掃。デビュー時はハードトップのみだったが、半年ほど遅れてハッチバックも追加された。
また、技術の進歩が著しい時代ゆえ、エンジンの進化も目覚ましい。
当初は1.8リッターと2リッターの自然吸気SOHCだったが、1981年には1.8リッターSOHCターボを投入。翌年には、スカイラインRSと同じ2リッター直4DOHCのFJ20も搭載した。
このように、ターボとDOHCを手に入れた3代目はより走りのキャラクターにシフト。それをアピールするかのように、スーパーシルエットシリーズやWRCなど国内外のレースシーンに送り込まれ、活躍したのである。
続く4代目が登場したのは1983年。スポーティ性とファッション性に磨きをかけ「本格的な小型スペシャルティスポーツ」に進化した。
エクステリアでは低いノーズとリトラクタブルヘッドライトを採用したことが特徴で、先代同様クーペとハッチバックを設定。
エンジンは1.8リッターのCA系と2リッターのFJ系で、最強グレードにはDOHCターボのFJ20ETが搭載された。
また、世界初や日本初といった先進装備の数々が採用されたことは、実にスペシャルティカーらしい。
その後、1986年のマイナーチェンジで内外装を刷新。エンジンもFJ系が消滅し、かわりに1.8リッターDOHCターボのCA18DETをトップに据えるなどのテコ入れを行った。
ただ、海外での人気はともかく日本では思ったほどのセールスを記録することができなかった、不遇の世代でもある。
「今でも人気が衰えないシリーズ最大のヒット作」 5代目
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曲線と曲面で構成したワイド&ローの流麗なデザインが男女問わず高く評価された。また、全長4475mm、全幅1690mmという比較的コンパクトなディメンションも、走り系のユーザーにとっては好都合だったのだ(5代目)
シルビア史上最大のヒットを生み出したのが、1988年に登場した5代目だ。
「アートフォース・シルビア」のキャッチコピーとともにデビューした5代目は瞬く間に人気モデルの仲間入りを果たしたが、その大きな要因はやはりスタイリッシュなルックス。
「エレガントストリームライン」と名付けられたボディラインを用いたスタイリングは流麗かつ美しく、その見た目から女性ファンが急増。デートカーとしても高く評価されたのだ。
その一方、FRで手頃なサイズ、そしてターボエンジン搭載ということから走り好きの若者を中心に人気を獲得したのである。
走りの骨格となる足回りはフロントこそ従来と同じストラットだが、リアには新開発のマルチリンクを採用。4輪操舵システムのハイキャスIIもオプションで用意された。
心臓部に迎えたのは1.8リッター直4のCA18系で、ターボと自然吸気の2種を用意。こうしたコンポーネントにより、FRターボらしい振り回して楽しめるクルマとして一躍人気になったのだ。
そんな5代目も、1991年にマイナーチェンジを実施。
エクステリアはグリルやヘッドライト、エアロパーツなどの小変更にとどめ、インテリアではシートのデザインを一新。メカニズムはさらに進化し、2リッター直4のSR20系を搭載。ハイキャスIIもスーパーハイキャスに変更された。
スポーツクーペとデートカーという両面で人気を獲得した5代目は、今でも高い人気をキープ。日本車の歴史に名を刻むほどのヒット作となった。
「肥大化で失敗し、復権を目指してサイズダウン」 6代目、7代目
大ヒットとなった5代目の後を受け、1993年に6代目がデビュー。先代の勢いそのままに……と思いきや、真逆の展開となった。
6代目最大のトピックは、3ナンバー専用ボディになったこと。丸みを帯びたスタイリングは流麗で美しく、大人のクーペといった印象。しかし、スポーティというイメージからはかけ離れてしまい、評価が大きく分かれた。また、それまでのコンパクトなボディサイズや機敏さを良しとするユーザーからは背を向けられ、人気を落としてしまったのだ。
とはいえ、キャリーオーバーされたシャシーは熟成の域に達し、ブレーキも容量アップ。搭載されるエンジンも、ターボのSR20DETは15psもパワーアップした。
このように、大きく重くなったことを払拭するだけの要件は備えていたが、見た目の大人しさとともに、3ナンバー化は完全に裏目に出てしまったのである。
そこでメーカーは、1996年のマイナーチェンジでエクステリアを一新。切れ長のヘッドライトを用いたシャープなマスクとし、リアコンビランプもスポーティなデザインに変更。この効果もあり人気は多少上向いたが5代目には到底及ばず、次の世代へバトンタッチした。
1998年にモデルチェンジした7代目では、以前の評価を取り戻すべく、大きな軌道修正が行われた。それがダウンサイジングだ。
再び5ナンバーサイズとなったボディはスピード感あふれる彫刻的なフォルムで、6代目のそれとはまったく違うイメージ。派手なエアロパーツ装着グレードも設定された。
メカニズムもブラッシュアップされ、エンジンはSR20系がキャリーオーバーされたものの、ターボ、自然吸気ともに最高出力は向上。ターボに新開発の6MTが組み合わされこともトピックだ。
こうして走りのイメージを取り戻し、機敏な走りが復活した7代目だったが、2002年8月に生産終了。1965年から始まったシルビアの歴史に幕が下ろされたのである。
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