40代「資産家の娘」が「すい臓がんステージ4」を宣告…両親が受けた衝撃

40代の娘がすい臓がん、ステージ4に……

ある平日の午後、Sさまご夫婦からの突然のご連絡を受け、弊社にお越しいただきました。お二人ともご相談時とは明らかに違う、どこか切羽詰まった様子でいらっしゃったのです。

Sさまは以前より「オーダーメード相続プラン」のご依頼をいただき、現在もプランの実行支援を進めているお客様。状況をお尋ねすると、ご同居されている次女(40代・独身)の方が、すい臓がんのステージ4であると告知を受けたとのことでした。

突然の診断で、ご本人はもちろん、ご両親も大きなショックを受けておられるご様子でした。まさか、親よりも子が先に、という事態を想定していなかったのは無理もありません。しかし、ご家族はその悲しみを抱えながらも、現実に向き合い、これから何ができるのかを話し合うために、勇気をもってご来社されたのです。

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娘の紹介で参加したセミナーがきっかけ

このご家族とのご縁は、実はその娘さんが最初でした。

昨年の夏、弊社が開催する「相続対策セミナー」に、次女の方がお一人で参加されたのがきっかけです。相続に関心を持たれたのは、弊社代表の著書を読まれたことがきっかけでした。

その後、ご自身の判断でご両親を誘い、再度ご家族三人でセミナーに参加されました。ご相談にも前向きで、初回の面談を経て「オーダーメード相続プラン」の作成をご依頼いただく運びとなりました。プランは着実に進んでおり、家族の未来を整える準備をされていた矢先のことでした。

独身の次女が家を継ぐ予定だった

Sさまのご家庭では、自宅のほか、複数の土地を所有されており、それらを活用してガソリンスタンドをいくつか経営されていました。すでに経営は引退され、現在は「居抜き賃貸」に切り替え、継続的に賃料収入を得ている状況でした。加えて、賃貸マンションの経営もされており、全体としては億単位の資産を保有されています。

事業としては法人化されており、社長を務めるご主人と奥様、そして娘さんが役員として関与し、家族経営の形をとっています。

長女と三女はすでにご結婚され、他県にお住まいのため、ご自宅や不動産資産の承継については、自然と同居している次女が担う予定となっていました。次女もそれを理解し、賃貸経営や税務について勉強を始めており、「そろそろ任せられる」という段階まで来ていたのです。まさに承継のタイミングを迎える矢先の病気告知となりました。

不動産の共有名義と生前贈与

Sさまは相続対策の一環として、すでに一部の不動産を娘さんと共有名義にされていました。これは、生前贈与によってスムーズな承継をはかるための対策でした。

しかし、今回のように、贈与を受けた次女が先に亡くなるとなると、名義を持つ資産が一度親に戻ることになります。その結果、将来のご両親の相続時に、相続財産が増加してしまい、相続税の負担が重くなるリスクが出てきます。

そこで私たちは、ご本人が元気なうちに遺言書を作成し、保有する資産を長女や三女へ「遺贈」するようご提案いたしました。兄弟姉妹に直接財産を引き継ぐことで、再び親に戻すという非効率な流れを避けられます。これは「二次相続」を見据えた重要な判断です。

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独身の子どもが亡くなった場合の相続人

独身で、子ども(直系卑属)も配偶者もいない方が亡くなった場合、その方の財産を相続するのは以下の順序に従って「法定相続人」となります。

1位:両親(直系尊属)

まず、父母が健在であれば、父母が相続人になります。これは「直系尊属」と呼ばれ、配偶者や子どもがいない場合には、最優先の法定相続人です。

•  両親とも健在の場合:2分の1ずつ

•  父または母のみ健在:その一人が全額を相続

2位:祖父母(両親が亡くなっている場合)

もし父母がすでに亡くなっている場合は、その上の世代である祖父母が相続人となります。これも「直系尊属」にあたります。

3位:兄弟姉妹

両親も祖父母もすでに亡くなっている場合、次に相続権があるのは兄弟姉妹です。

•  兄弟姉妹が複数いる場合:均等に分ける

•  兄弟姉妹の中にすでに亡くなった方がいて、その人に子どもがいる場合(甥・姪):その甥や姪が代襲相続

両親が相続すると“戻ってしまう”財産

生前に、親から子どもへ不動産や財産を贈与していた場合、その子どもが先に亡くなると、親が再びそれを相続してしまうことがあります。

たとえば、

•  親→子へ生前贈与で不動産を譲渡

•  子どもが独身で親より先に死亡

•  結果として、再び親に相続で戻ってしまう

これは「せっかく進めた相続対策が、元に戻ってしまう」という意味で、次の相続時に課税対象が大きくなるリスクがあります。このような場合に有効なものが「遺言書」です。

もし独身のお子さんが「自分の死後、きょうだいに財産を残したい」と考えるのであれば、遺言書を作成しておくことが極めて重要です。

•  法定相続人が親であっても

•  遺言によって、兄弟姉妹や第三者に「遺贈」することが可能です

特に、生前贈与された財産がある場合などは、遺言によって承継先を明確にすることで、相続税対策にもつながります。

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親に渡さないための、公正証書遺言

ご両親と相談した数日後、私たちは次女の方の意思を尊重しながら、公正証書遺言の作成に向けたサポートを進めました。病院での療養中でありながら、ご本人はしっかりと意思を伝えられ、「家族に迷惑をかけたくない」との思いから、書類集めにもご協力くださいました。

体調の優れない中でも、常に明るく、毅然とした姿勢を貫かれており、ご両親は「娘に励まされている」とおっしゃっていました。その姿に、私たちも胸を打たれました。

人生において、誰しも「順番通り」にいくことを望みます。しかし、現実には思いもよらぬ事態が起こりうるもの。だからこそ、どのような状況でも「備えておくこと」の重要性を、改めて感じさせられる出来事でした。

病室でも作成可能な「公正証書遺言」

補足としてお伝えしたいのは、公正証書遺言は病院や老人ホームでも作成が可能ということです。公証人が病室に出張し、証人2名も同行して手続きを行います。

印鑑証明書や戸籍謄本、不動産の固定資産税納付書など、必要書類を揃えたうえで、内容が確定すれば、早ければ翌日にでも作成可能です。原稿の準備が整い次第、迅速に対応できるのが公正証書遺言の強みです。

必要となる書類は、以下の通りです:

•  印鑑証明書

•  戸籍謄本

•  不動産の固定資産税納付書

•  財産一覧など

内容が決まり、書類がそろえば、最短で翌日にでも作成可能です。公証役場が原稿を整え次第、出張日程が確定します。

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さまざまな家族の事情や運命

相続の現場では、さまざまな家族の事情や運命に立ち会います。今回のように、本人もご家族も「まさか」と思うような事態に直面することもあります。

Sさんご夫婦にも、娘さんにも何度も会っていましたし、ステージ4と宣告された娘さんは賢くてしっかり者というイメージでエネルギッシュなイメージの方が強かったので、今回のできごとは私どもにとっても驚きでした。

なにより、娘さんご本人が「妹に遺贈する遺言書を作りたい」という明確な意思をお持ちでしたので、その思いに救われながらお手伝いをさせて頂きました。

つらい現実ですが、そこから目をそらすことなく、できることを一つひとつ丁寧に進めることで、「後悔の少ない相続」を実現することができます。遺されるご家族にとって、準備された遺言は何よりの道しるべとなります。

相続は、ただお金や財産を分ける話ではなく、「生きた証を、どうつなぐか」という人生の最終章です。

私たちは今後も、お客様の人生に寄り添い、どんな状況でも安心して次の一歩を踏み出せるよう、精一杯サポートしていきたいと心に刻んだ経験となりました。