【繰上げ受給】長生きしたら損ってこと?「最大24%の減額が一生涯続く」妻は遺族年金もらえる?
「繰上げと繰下げ」それぞれの年金増減率はいくら?
【繰上げ受給】長生きしたら損ってこと?「最大24%の減額が一生涯続く」妻は遺族年金もらえる?
今月は15日に年金支給日がありましたが、通常65歳から受け取る年金は前倒しの「繰上げ受給」や遅らせる「繰り下げ受給」などの選択肢があります。
繰上げ受給をすると早く年金をもらえる安心感はある一方、減額が一生続きます。今回は厚労省や日本年金機構の資料をもとに、繰上げが本人・妻に与える影響や、夫婦で検討すべきポイントをわかりやすく解説します。
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【繰上げと繰下げ】それぞれの年金増減率はいくら?
老齢年金は65歳からの「本来受給」が基本ですが、60歳から前倒しして受け取る「繰上げ」や、66歳以降に遅らせて増額する「繰下げ」も選択できます。
「繰上げ受給」は60歳から受給できる制度ですが、その代わりに請求する時期に応じて1か月あたり0.4%ずつ年金額が一生涯減額されることになります。
繰上げ受給のイメージ図
一方の「繰下げ受給」は66歳以降75歳まで受給を遅らせる仕組みで、遅らせた分だけ年金額が増えるという特徴があります。繰下げ受給は、請求する時期に応じて1か月あたり0.7%ずつ年金額が一生涯増額されることになります。
繰下げ受給のイメージ図
ちなみに、老齢年金の繰上げ受給は、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を同時に請求する必要があります。このため、一度繰上げを選択すると、すべての老齢年金が減額されることになります。
一方、繰下げ受給は老齢厚生年金と老齢基礎年金のどちらか一方のみを選択することも可能です。たとえば、老齢基礎年金は65歳から受け取り、老齢厚生年金だけを繰り下げて増額させる、といった柔軟な選択ができます。
【繰上げ受給】選ぶ人は全体の0.9%!9割以上が65歳から受け取る!
年金を現在受給されている方は、今どんな選択をしているのでしょうか?厚生労働省の統計によると、令和5年度末時点の老齢厚生年金の受給者では、繰上げを選んだ人は全体の0.9%、繰下げは1.6%にとどまり、依然として9割以上の人が「65歳から受け取る」選択をしています。
老齢厚生年金の繰上げ・繰下げ受給状況の推移
ただし注目すべきは、繰下げを選ぶ人の割合が年々じわじわ増えてきている点です。長寿化や老後資金への不安を背景に、将来の年金額を増やそうと考える人が少しずつ増えているといえるでしょう。
一方で、繰上げは依然としてごく少数派であり、「早くもらいたい」というニーズはありながらも、減額リスクの大きさから敬遠されている状況が見て取れます。こうした受給行動の背景を踏まえると、「繰上げを選ぶと本人や妻にどんな影響があるのか?」を理解することが大切になります。
【繰上げ受給】長生きしたら損?「最大24%の減額が一生涯続く」
昭和37年4月2日以降生まれの方(ひと月あたりの減額率0.4%)
まず本人への影響としては、繰上げによって早く受け取れる安心感がある反面、その後の受給額は一生にわたり減額されたままとなります。昭和37年4月2日以降生まれの方の場合、ひと月あたり0.4%ずつ減額され、60歳0か月から受け取ると合計で24%減額となります。「最大24%の減額が一生涯続く」となれば、家計にもかなりの影響を及ぼすのではないでしょうか。
さらに、いったん繰上げ請求をすると取消しはできず、任意加入や追納、障害年金の請求など将来の選択肢も制限される点に注意が必要です。
また、65歳になるまでの間は、雇用保険の高年齢雇用継続給付(60歳から65歳までの間、賃金が60歳時点の賃金から75%未満に低下した場合に支給される給付金)との関係で、年金が一部停止されることがあり、受け取れる額がさらに減るケースもあります。
結果として、長生きすればするほどトータルでは損になる可能性が高く、慎重な判断が求められます。
【繰上げ受給】妻は遺族年金もらえる?
夫が年金の繰り上げ受給を選ぶと、妻の年金にも影響が出る可能性があります。重要な点として、夫が会社員だった期間が20年以上あるなど、加給年金の支給要件を満たさなくなった場合は、加給年金を受け取ることができません。また、仮に要件を満たしていても、夫が年金を繰り上げ受給した場合、加給年金の支給開始は繰り上がらないため、夫婦の年金総額を考える際には注意が必要です。
振替加算のイメージ
一方で、夫が亡くなった場合に妻が受け取る「遺族厚生年金」については、繰り上げ受給の影響を受けません。遺族厚生年金の額は、夫の年金加入期間や報酬額に基づいて計算されるため、繰り上げによって減額された年金額が基準になることはありません。
このように、繰り上げは本人にとっての安心感を得る代わりに、夫婦全体で受け取れる年金額の計画に影響を与える可能性があるため、選択には夫婦トータルで考えることが重要です。
【繰上げ受給】夫婦での話し合いが必要不可欠
今回は、年金の受け取りについて「夫が繰上げをすると妻にはどんな影響があるのか?」を解説しました。年金の繰上げは、減額した年金が一生涯続くことになるため、夫婦全体の年金総額を大きく減らす要因となりかねません。
一方で繰下げは年金額を増やす選択肢ですが、生活資金や健康状態などとの兼ね合いも重要です。どちらを選ぶかは「長生きしたら損か得か」だけではなく、夫婦のライフプラン全体で判断することが必要です。だからこそ、一人で決めず夫婦で話し合い、シミュレーションをしてみることが大切です。本記事が年金を考えるきっかけになれば幸いです。
参考資料
・日本年金機構「年金の繰上げ受給」
・厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和5年度」
・日本年金機構「加給年金額と振替加算」
・日本年金機構「年金の繰下げ受給」