自動車部品の巨人、アイシンが明かす「電動化」の核心! パワトレ2億台突破の歴史とは? 「体格1/2」次世代eAxleが未来を変えるか
アイシン電動化戦略の現在地
2025年8月28日、アイシンは「パワートレイン技術説明会2025」を開催し、同社の中核をなすパワートレイン事業のこれまでの歩みと、電動化時代に向けた未来戦略を明らかにしました。

アイシンの「パワートレイン技術説明会2025」ではどのような内容が明かされたのか?[画像:FR用1モーターハイブリッドトランスミッション(10速AT タンドラ/セコイヤ/レクサスLX)]
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1961年のオートマチックトランスミッション(トヨグライド)の量産開始から数えて、2024年4月にはパワートレイン製品の生産累計が2億台を突破、また2025年には電動ユニットの生産累計が1000万台到達を見込むなど、アイシンは自動車のパワートレインの歴史とともに成長を続けてきました。
また2021年に「アイシン精機」と「アイシン・エィ・ダブリュ」が経営統合され、現在は「アイシン」の統一ブランドとして、日本だけでなく世界中の自動車メーカーにパワートレイン製品を中心として、車体、走行安全、エナジーソリューションに至るまで、幅広い製品を提供する自動車部品メーカーとなっています。
本説明会では、製品開発センター パワートレイン製品本部 本部長の糟谷悟氏、および同本部 PTシステム製品企画部 部長の須山大樹氏が登壇し、アイシンの強みであるコア技術と、多様化する世界の市場ニーズに応える電動化ラインアップについて説明が行われました。
●アイシンの中核を担うパワートレイン事業
アイシンの製品売上収益4兆8961億円のうち、パワートレイン事業が占める構成割合は54.74%にあたる2兆6801億円に達しており、同社の屋台骨を支える最大の事業セグメントとなっています。
また同社は「カーメーカーに最も近い自動車部品メーカー」として、クルマ目線での開発・評価を重視しており、北海道の豊頃試験場やアメリカのファーラビル試験場といった評価拠点を有していることが説明され、人工氷結路での評価や無響音室での評価など、過酷な環境下での徹底した品質追求をもとに各製品が開発されていることが説明されました。

生産累計2億台を達成、60年以上にわたる事業のあゆみ
●生産累計2億台を達成、60年以上にわたる事業のあゆみ
アイシンのパワートレイン事業の歴史は、日本のモータリゼーションの進展と共にありました。糟谷悟氏は、その歴史を4つの時代に分けて解説しました。
【1960年代〜】技術導入から独自設計技術の確立
1961年、同社は2速半自動AT「トヨグライド」の量産を開始。これは、海外からの技術導入を礎としながらも、品質至上を掲げて市場の不具合に対応し、アイシンが独自技術と品質・信頼性を確立していく原点となりました。
【1980年代〜】FF化とグローバル展開
1970年代の石油危機を背景に、自動車の省燃費性能が世界的に注目を集める流れとなり、各自動車メーカーのFF(前輪駆動)方式への転換が進みました。この流れにいち早く対応したアイシンは、1983年に自動車部品メーカーとして初めてFF用4速AT(AW-Z)を開発。またこれをきっかけとして、国内だけでなくグローバル展開もこの時期から本格化しました。
【2000年代〜】フルラインアップ化
さらなる環境意識の高まりを受け、燃費規制がより強化される中、アイシンは製品の多段化と電動化を推進。2002年には、従来の4速AT同等程度のサイズで優れた燃費性能と走りの魅力を両立したFF用6速AT(F21)を量産開始。さらに2004年には、世界初のインバーターと一体構造となる2モーターハイブリッドトランスミッション(T-030)を世に送り出し、電動化の先駆けとなりました。
【2010年代〜】電動化の本格化
この時期からCASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)が提唱され、自動車の概念が大きく変わり始めると、電動化の動きはさらに加速することになります。
その流れに対してアイシンは2019年はFF用1モーターPHEVトランスミッション、2022年にはデンソーと共同開発(BluE Nexus製)となるeAxleの生産を開始。
パワートレインの生産台数は順調に増加し、2024年4月には累計生産2億台を達成しました。2025年には電動ユニットの生産累計1000万台到達を見込んでいます。

デンソーと共同開発(BluE Nexus製)となるeAxle
●電動化を支える3つのコア技術
続いて登壇した須山大樹氏は、長年培ってきた内燃機関(ICE)向けATの関連技術が、BEV(バッテリー式電気自動車)時代においても競争力の源泉であると強調しました。
アイシンの電動化製品は、以下の3つのコア技術によって支えられています。
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1. トランスアクスル技術: 小型化、高効率、低騒音、高耐久性を実現するギアやケースの設計・生産技術
2. モーター技術: 小型、高効率、低騒音を追求したモーター開発技術。永久磁石モーターから誘導モーター、巻線界磁型モーターまで、ニーズに応じたフルラインアップの用意
3. システム化 / パッケージ化技術: ハードウェアからソフトウェアまでを一貫して開発し、車両目線で最適なパッケージングを実現する技術
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これらのコア技術を融合させることで、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEVといった多様な電動パワートレインへの技術や製品を、高いレベルで実現しているとのことです。
●地域ごとに異なる市場環境と電動化ラインアップ戦略
また、世界の自動車市場は、地域ごとに電動化の進展速度が大きく異なります。
アイシンは外部データを基にした調査で、2030年時点でのパワートレインミックスを予測。例えば、欧州ではBEVが50%に達する一方、アセアンではHEV/PHEVが主流であり、ICEも依然として大きな割合を占めると見ています。
このような多様な市場環境に対応するため、アイシンは地域と顧客の市場ニーズに沿った電動化ラインアップを各展開し、「高効率」「小型化」「静粛性」「高応答・高精度」の5つの課題を追求し続け、あらゆる電動化のニーズに応えることでグローバルでのカーボンニュートラルに貢献する戦略を掲げています。

電動化を支える3つのコア技術
●先行技術開発が目指す「体格1/2化」
また須山氏は先行技術開発の一例として、現在開発中の次世代eAxleについて「体格1/2化」の実現目標を掲げました。これは、現行の150kW級のeAxleと比較して、体積をおよそ半分にすることを目指す、非常に挑戦的な目標です。
この目標達成の鍵となるのが、減速機、モーター、パッケージそれぞれにおける技術革新です。以下のような要素技術をそれぞれ組み合わせることで、出力性能を維持したまま体積を大きく削減するべく先行開発が現在おこなわれているとのことです。
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減速機: 従来比で強度を50%向上させた独自の特殊鋼を採用。減速比を従来比2倍に高めることでモーターの高回転化・小径化を実施
モーター: 最適な電磁気設計と冷却技術、独自のプレス技術を駆使し、小型・高効率なモーターを開発
パッケージ: 最適な剛性設計や機能部品の統合化、薄肉ケース鋳造技術により、ユニット全体の徹底的な小型化と軽量化
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あらゆるエンドユーザーの「移動に感動を、未来に笑顔を。」を実現することを掲げるアイシン
●社会への提供価値:「移動に感動を、未来に笑顔を。」
アイシンはこれらのパワートレインの技術革新を通じて、社会に「走りの楽しさ」「利便性の向上」「快適な居住空間の創出」「環境負荷の低減」という4つの価値を提供することを目指しているとしています。これらの価値を追求することで、あらゆるエンドユーザーの「移動に感動を、未来に笑顔を。」を実現することが、アイシンのパワートレイン事業の最終的な目標であるとして、須山氏の説明は締めくくられました。
その後の製品説明においては、過去の歴史的な製品の振り返りや次世代技術提案の機能統合電動ユニットをはじめとして、現行販売されている車両に搭載されているトヨタの第5世代THS、FF用1モーターHEVトランスミッション(デュアルブーストハイブリッド)、縦置きFR用1モーターHEVミッション(レクサスLXのパラレルハイブリッドシステム)や、グローバル生産の一例としてスズキe-ビターラに搭載のeAxle、三菱エクスフォースに搭載される FF2モーターHEV用トランスミッションなどを展示。
アイシンが電動化をはじめとした多種多様な自動車メーカーからのニーズに対応し、かつグローバルな製品展開ラインアップをまさに現在進行形で実現していることが体感できる内容となっていました。