映画『国宝』 振り付け担当が語る秘話…ロケ地では「大パニック」興収110億円突破で実写邦画“歴代2位”!大ヒットの裏側

 興行収入110億円を突破した映画『国宝』。歴代の興行収入ランキングでは、邦画実写において、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開173.5億円 興行通信社調べ)に次ぐ第2位を記録しました。なぜ映画は歴史的なヒットを記録しているのか?その魅力に迫りました。

(「サタデーLIVE ニュースジグザグ」)

■歌舞伎役者から見た映画『国宝』

歌舞伎役者・四代目片岡亀蔵さん ©ytv

 取材班が映画館を取材したのは8月22日。6月6日に公開されてから約2か月半たっても、多くの人が訪れていました。

 観客は映画の魅力について、「とても繊細だなと思いました。日本人だから分かる共通の美があって、それが当てはまっている」、「次は日本の本当の芸事としての歌舞伎を実際に目にしてみたいと思いました」と語ります。

 映画は、吉沢亮さん演じる主人公・喜久雄が任侠の一門に生まれながらも、15歳で歌舞伎の名門一家に引き取られ、女形として芸の道に人生をささげた50年を描いた物語です。横浜流星さんが名門歌舞伎役者の御曹司で、喜久雄のライバル・俊介を演じました。

 映画『国宝』のヒットを、歌舞伎役者はどう見ているのでしょうか?

 八月納涼歌舞伎に出演中の四代目片岡亀蔵さんは4歳の時に稽古をはじめ、この道60年です。映画『国宝』の魅力について、「すごく努力なさっているなというのはわかりますね。歌舞伎を見せるというよりも(役者の)人となりや、生まれた時からのことを見せる。そういうものは舞台を見ていても知り得ないので、映画はそこをうまくついているかなと思います」と話します。

 亀蔵さんから見ても、歌舞伎そのものの魅力が映画に力を与えているといいます。

 四代目片岡亀蔵さん

「日本人は好きなんですよ。三味線とか、最近耳にしないでしょうけれども長唄とか、古典の音のゆっくりとした間などは、日本人のDNAにあるはずですから。歌舞伎が(いまも)続いているということは、魅力があるから」

 松竹によると、映画公開以降、「歌舞伎を見たい」という問い合わせが急増し、前売り販売が大きく伸びたといいます。

■記録的ヒットに!ロケ地は「大パニック」

『国宝』のロケ地となった「出石永楽館」 ©ytv

 映画は地域振興にも一役買っています。映画で喜久雄と俊介が披露する『二人藤娘』のシーンなどが撮影された『永楽館』は、兵庫県豊岡市に実在する芝居小屋『出石永楽館』です。近畿地方最古の芝居小屋で、歌舞伎や落語、演劇など様々な公演が行われています。

 建物の周りには、映画の撮影で使われた役者ののぼりが立ち並び、映画と同じ景色を見ることができます。さらに館内では、喜久雄と俊介の楽屋シーンの撮影セットが再現されていています。また『二人藤娘』をイメージして作られた藤の持ち枝の貸し出しも行われていて、藤の持ち枝を持って実際に舞台で踊る観光客の姿も見られました。

『二人藤娘』を踊る観光客 ©ytv

 舞台上で『二人藤娘』の踊りを披露したのは、日本舞踊を習っているという観光客です。「聖地巡礼で、(『二人藤娘』の)最初の一場面を踊れたらうれしいなと思って来た。踊っていて鳥肌が立ちました。感動しちゃって」と話していました。

 「大パニックです。何をしていいかわからない。うれしい悲鳴です」と語るのは、『出石永楽館』の赤浦毅館長。来館者はこれまで一日約100人ほどだったのに対し、映画『国宝』が公開されてからは約500人に。多い日は一日900人近い人が来館したといいます。

 出石永楽館・赤浦毅館長

「歌舞伎を見ていないような若い子たちがたくさん来るので非常にありがたい。『面白かったです』『歌舞伎また見たいです』と言ってくれたら泣けますよね。最高です」

 『出石永楽館』での撮影は、去年3月に行われました。赤浦さんに撮影地に選ばれた理由を聞くと、「監督に聞いたら、『永楽館は下が道具部屋で、舞台の2階に楽屋がある。撮るときに一つのカットですべてが入る。この関係性がよかったんだ』と言っていた」と明かしました。

 さらに撮影の様子については、「クランクインがここだったということで、だいぶ集中していたと思います。魂を削ってやっているなと。その瞬間を見て、一生の宝だなと思った」と喜びを語りました。

■振り付け担当が明かす秘話「2人とも性格が逆で…」

日本舞踊家・谷口裕和さん ©ytv

 観客に映画の魅力を聞くと、俳優陣の歌舞伎の演技を絶賛する声が多く聞かれました。俳優陣は、撮影を含め約1年半、歌舞伎の稽古を重ねました。歌舞伎の振り付けを行ったのは舞踊家の谷口裕和さんです。

 吉沢さんと横浜さんが演じた女形について谷口さんはー。

 日本舞踊家・谷口裕和さん

「女形ってくねくねしているように見えますけれど、実はくねくねしてしまったら気持ち悪いんです。一つ体の中にまっすぐ芯が通って、まっすぐ歩けて、そこに柔らかいものができないと女形にならない」

 たたずまいやお辞儀の仕方、歩き方など基本的な動作を2~3か月かけて叩き込んだといいます。

 その後、映画の印象的なシーンの一つである『二人藤娘』の稽古に入りました。

 谷口裕和さん

「『藤娘』は歌舞伎の代表的な踊り。そのあと稽古に入った『二人道成寺』は歌舞伎を代表する大作。(通常だと)だいたい踊りを始めて10年くらいたってからやりましょうというお話になるものなので、本当に(吉沢さんと横浜さんは)よく覚えられたし、本人たちの努力の結晶だと思います」

読売テレビニュース ©ytv

 また、2人には“芸への向き合い方の違い”があったといいます。

「吉沢くんは気持ちから踊りに変わっていく。流星くんは型から入っていく。形をきっちりしてからという入り方だったので、2人とも性格が逆で教える側も違ったので、すごく楽しくお稽古できましたし、それが喜久雄と俊介というお役にとても合っていたんじゃないかなというふうに思います」

 さらに2人は、「とてもストイックな精神を持っていた」といい、「動画を必ず撮って持ち帰って、家できっと何十回、何百回と見て体に入れて、次のお稽古の時には、言ったことはちゃんと覚えてくる。本当にきっちりして、踊りと向き合ってくださいました」と振り返りました。

■コンテンツビジネスの専門家が分析 日本映画の可能性

野村総合研究所・滑健作さん ©ytv

 『国宝』のヒットの背景について、コンテンツビジネスに詳しい専門家はー。

 野村総合研究所・滑健作チーフコンサルタント

「スマートフォンの画面で話を追うだけであれば、それで十分な今の世の中において、映像・音響・カメラワーク全てにおいて映画館で見るべき作品である。(SNSなどの)口コミ型ヒットという表現ができるかもしれない」

 メガホンをとったのは、映画『フラガール』などで知られる李相日監督。そして撮影を手がけたのは、手持ちのカメラ撮影を多用することで知られる、ソフィアン・エル・ファニさん。撮影を担当した映画『アデル、ブルーは熱い色』はカンヌ国際映画祭の最高賞・パルムドールを受賞しています。

 こうした俳優の舞踊シーンや映像美がSNSで広まり、観客動員数が伸び続けているのです。さらに『国宝』は、今後の日本のコンテンツビジネスを変える可能性があると滑さんは指摘します。

 滑健作チーフコンサルタント

「これだけの十分な映像を作れる。そういったスタッフをまずは揃えられたこと。もちろんそれに伴って制作費としてかなりの金額を要します。ビジネス面での勝算もあるといった決断ができたことが、今回の成功につながっていると考えられます」

 映画『国宝』は今後、海外へ。フランスや韓国など、9つの国と地域で公開される予定です。

※読売テレビ「サタデーLIVE ニュース ジグザグ」

(2025年8月23日放送分を一部加筆・編集)