早くJリーグで見たい!JFA Proライセンス取得5年以内の監督候補5選

中村俊輔(47歳)2025年JFA Proライセンス取得, 阿部勇樹(43歳)2024年JFA Proライセンス取得, 中村憲剛(44歳)2023年JFA Proライセンス取得, 久保山由清(49歳)2022年JFA Proライセンス取得, 菅原大介(47歳)2022年JFA Proライセンス取得

阿部勇樹(左)中村俊輔(中)中村憲剛(右)写真:Getty Images

Jリーグでは毎年のように監督交代が起こる。特に、日本代表として活躍した元選手や欧州クラブで経験を積んだ指導者、あるいは育成年代で実績を築いた指導者には、常に大きな期待が寄せられてきた。

そうした舞台に立つために不可欠なのが、日本サッカー協会(JFA)が公認する指導者の最上位資格「JFA Proライセンス」だ(旧S級コーチライセンス)。

ここでは、JFA Proライセンスを取得してから5年以内で、まだJクラブの監督を務めていない指導者の中から、特に注目すべき5人を紹介する。元日本代表の名選手から育成に力を注ぐ指導者まで、多彩な経歴を持つ彼らが、将来どのような采配を振るうのか。その可能性に迫る。

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中村俊輔 写真:Getty Images

中村俊輔(47歳)2025年JFA Proライセンス取得

「魔法の左足」で世界を魅了し、日本サッカー史に輝かしい功績を刻んだ中村俊輔氏。スコットランドの名門セルティックのサポーターの間では未だにレジェンドとして称えられ、2度のJリーグ年間MVP受賞など、そのキャリアは輝かしいものだ。2022年を最後にスパイクを脱ぐと、古巣・横浜FCのトップチームコーチに就任。指導者としての道を歩み始める。

引退直後から指導の最前線に身を置き、選手たちの成長を肌で感じながら、自らも監督学を学んだ。そして2025年、Proライセンスを取得。これにより、中村氏がJリーグの監督として采配を振るう未来が、現実味を帯びてきた。コーチ業も3年目を迎え、一部では横浜FC監督就任の可能性も噂されたが、実現には至らなかった。

将来、“チーム俊輔”はどのようなサッカーを展開するのか。現役時代に見せた卓越した技術や戦術眼は、間違いなくその指導哲学の根幹をなすはずだろう。イタリア、スコットランド、スペインでの成功も失敗も含めた経験は、戦術の多様性と国際感覚を彼のサッカー観に加えるだろう。選手個々の技術と状況判断を重視し、見る者を魅了する攻撃的なサッカーが期待される。

ピッチ上の指揮者であった中村氏が今度はベンチからチームを率いる姿を、ファンは心待ちにしている。「監督・中村俊輔」の誕生は、Jリーグに新たな興奮と戦術的な深みをもたらすに違いない。

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阿部勇樹 写真:Getty Images

阿部勇樹(43歳)2024年JFA Proライセンス取得

ジェフユナイテッド市原・千葉時代(1998-2006)に日本代表デビューを果たしていた阿部勇樹氏だが、そのサッカー人生に大きく影響を与えたのは、2003年に新監督として来日したイビチャ・オシム氏(2022年に80歳で死去)との出会いだろう。

千葉ではもちろん、その後に日本代表監督となった同氏の下で“オシムチルドレン”として活躍。その後に移籍した浦和レッズ(2007-2010)では、2007シーズンに主将としてACL(AFCチャンピオンズリーグ)制覇に貢献し、2010年には当時イングランド2部のレスター・シティでもプレーした。ボランチやセンターバックとして高い戦術眼とリーダーシップを発揮し、2021年に惜しまれつつ現役を引退した。

引退直後から指導者としての道を歩み始め、古巣・浦和のユースコーチに就任。さらに、2022年からはJFAの「ロールモデルコーチ」として、U-17日本代表などのアンダー世代の指導に携わっている。ロールモデルコーチとは、自身の経験を若い選手たちに伝える役割であり、内田篤人氏や中村憲剛氏ら、日本代表で活躍したOBも同様の役割を担ってきた。この経験を通じて、次世代のトップ選手たちと向き合い、指導者としての視野を広げている。

阿部氏には、選手時代に培った戦術的インテリジェンスと、若手育成の現場で得た経験という大きな強みがある。彼のチームは、攻守にバランスの取れた、組織的でインテリジェントなサッカーを展開するのではないだろうか。浦和のレジェンドとして、監督就任待望論も大きいが、まずはカテゴリーを問わず、その手腕をJリーグの舞台で見てみたい指導者の1人だ。

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中村憲剛 写真:Getty Images

中村憲剛(44歳)2023年JFA Proライセンス取得

川崎フロンターレの「バンディエラ」として、J2時代から18年間(2003-2020)のプロキャリアを1つのクラブに捧げた中村憲剛氏。卓越した技術と戦術眼でクラブに悲願のJ1初制覇を含む数々のタイトルをもたらし、Jリーグの歴史にその名を刻んだ。彼のプレーは「止める・蹴る」という基礎技術の重要性を、日本サッカー界全体に再認識させたと言っても過言ではない。

2020年の引退後、解説者としてサッカーを俯瞰する視点を養う一方、2021年末にJFAロールモデルコーチ就任が発表され、2022年から育成年代の指導に情熱を注いできた。2023年にProライセンスを取得し、指導者としてのキャリアを本格化させている。

中村氏の指導の根幹にあるのは、選手時代から一貫している「技術へのこだわり」と「考える力」。2024年に公開されているインタビューでは、「素直さ」「傾聴力」「継続力」の3つを選手が成長するためのキーワードとして挙げており、人間教育にも重きを置く指導者像がうかがえる。

同氏が監督に就任すれば、ボールを大事にし、選手一人ひとりが思考しながらプレーする、技術と戦術が融合した魅力的なポゼッションサッカーを展開することが大いに期待される。いずれは川崎の監督へという声は当然、根強いが、まずは彼がどのようなチームを作り上げるのか、その第一歩を心待ちにしているファンは多いはずだ。

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久保山由清 写真:Getty Images

久保山由清(49歳)2022年JFA Proライセンス取得

横浜フリューゲルス最後の試合(1999年1月1日天皇杯決勝/国立競技場2-1)で清水エスパルス相手に得点を挙げ、優勝に貢献した久保山由清氏。当然ながら合併相手の横浜F・マリノスからのオファーもあったが、奇しくも清水からもオファーを受け、出身の静岡に戻ることを決意。1999シーズンのセカンドステージでクラブ初のステージ優勝に導き、同年のJリーグアウォーズ優秀選手賞を受賞した。

現役引退後は、2008年から長きにわたり清水の育成組織で指導にあたり、U-13からジュニアユースの監督などを歴任。多くの才能を発掘し、トップレベルで活躍する選手を育て上げ、確固たる地位を築いてきた。

彼の指導者としてのキャリアは、まさに育成のスペシャリストそのものだ。2016年からはトップチームのコーチも務め、育成とトップの両方のカテゴリーを熟知している。2023年には清水から派遣される形で関東リーグ2部の厚木はやぶさFCの監督を務め、2024年からはJ3・FC今治のヘッドコーチに就任するなど、常に指導の最前線に身を置いている。

2022年にProライセンスを取得した久保山氏は、Jクラブの監督として、特に若手選手の育成とチームの底上げにおいて大きな力を発揮するだろう。派手さよりも育成重視の堅実な指導スタイルで、一人ひとりの選手と真摯に向き合い、ポテンシャルを最大限に引き出すチーム作りが期待される。若手主体のチームや、クラブの将来を見据えた基盤作りを目指すクラブにとって、非常に魅力的な監督候補と言える。

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JFA 写真:Getty Images

菅原大介(47歳)2022年JFA Proライセンス取得

菅原大介氏の名前を聞いて「誰?」と思う人もいるだろうが、それも致し方無い。プロ選手としてのキャリアはないためだ。

2001年に東海大学を卒業すると、同年4月から筑波大学大学院でコーチ学を学ぶと同時に同大サッカー部のコーチに就任。2003年、大学院を卒業したタイミングで女子日本代表とU-19女子日本代表のテクニカルスタッフに加わるという異色の経歴を辿っている。

その後、年代別日本代表のテクニカルスタッフを歴任。千葉や大分トリニータ、栃木SCでコーチやヘッドコーチを務めるなど、その指導者としてのキャリアは目を見張るものがある。

2022年にProライセンスを取得すると、JFAに請われセットプレーコーチに就任し、2023年からはU-18(現U-20)日本代表コーチも兼任している。菅原氏とJFAとの契約期間は公表されていないが、現時点ではJクラブでの指揮は行っていない。

プロ選手経験のない監督がJクラブを率いるケースは前例がないわけではないが、大学院時代からコーチ学を学んだ菅原氏が監督となれば、データ分析と戦術を融合させた、近代的なサッカーを披露するのではという期待もある。豊富な経験と指導哲学は、どのカテゴリーのクラブにとっても大きな武器となるはずだ。Jリーグに新たな潮流を生み出す可能性を秘めた注目の指導者である。

現在、J1クラブ監督の平均年齢は52.05歳と“高齢化”の状態にある。これはイングランドのプレミアリーグ(47.85歳)、ドイツのブンデスリーガ(46.67歳)と比較しても高い。Jリーグ全体を見渡しても、最年少はJ3相模原のシュタルフ悠紀リヒャルト監督の41歳だ。

28歳にして、ブンデスリーガのホッフェンハイムの指揮官に抜擢されたユリアン・ナーゲルスマン監督(現ドイツ代表監督)の例は特別だとしても、日本代表MF三笘薫が所属するブライトン・アンド・ホーブ・アルビオンのファビアン・ヒュルツェラー監督は就任時に31歳で、プレミアリーグ史上最年少記録だった。

日本では2021シーズン、当時JFLの奈良クラブの監督にフリアン・マリン・バサロ監督が31歳で就任し、2022シーズンにJFL優勝と2023シーズンからのJ3昇格を達成。2023シーズンのJ3開幕戦を33歳8か月20日で指揮を執り、シュタルフ監督(当時AC長野パルセイロ)の記録を塗り替え、Jリーグ史上最年少監督となった。日本人指導者もJリーグに新たな風を吹き込むことが期待される。