2026年シーズンのF1空きシートは残り6つ。角田裕毅の将来も未確定……誰がどこに座ることになる?

 先日、キャデラックがF1に新規参入する2026年シーズンにセルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスを起用すると発表した。これで来季F1の“空きシート”は残すところあと6つとなった。

 一部のチームは水面下での駆け引きを経て現行ラインアップを維持すると見られるが、他のチームは大きな注目を集めている。特にレッドブル系2チームで来季の契約が確定しているのはマックス・フェルスタッペンのみ。残る3席はチーム内の確執や経営陣の方針、そして若手育成プログラムの行く末によって流動的なままだ。

 今回は、去就が注目される4チームの計6つの空きシートの状況をまとめた。

メルセデス

George Russell, Mercedes, Andrea Kimi Antonelli, Mercedes

 メルセデスは、ドライバーを冷たく扱うことでやる気を出させているのか……? そこまでは言い過ぎかもしれないが、トト・ウルフ代表は常に選択肢を広く残しておくのを好み、長期契約を急ぐことはほとんどない。思い返せば2023年、ウルフ代表はルイス・ハミルトンとの契約交渉を長々と引き延ばし、最終的に『1年+オプション1年』の短期契約に落ち着いたが、結局ハミルトンはオプションを行使せず、今や跳ね馬の赤いスーツに袖を通している。

 来季に向けても、ジョージ・ラッセル、アンドレア・キミ・アントネッリ共に残留が確定していない。ウルフ代表はフェルスタッペンとも交渉を行なっていたが、フェルスタッペン陣営は来季もレッドブルに残って2026年新規則下での勢力図を見極めるという賢明な選択を下した。

 これにより、サマーブレイクにかけてラッセルの立場はより有利なものとなった。本人もスパで「心配することは何もない」と話していた。ラッセルの契約はメルセデスによって事実上コントロールされており、2026年以降の契約に関しては細部を詰めるだけだと考えられている。また、これまでのパフォーマンスを見れば、彼以上に良い仕事ができるドライバーが他にいると主張するのは無理がある。

 一方でアントネッリはパフォーマンス的にやや厳しい立場にある。しかしながら、メルセデスがリヤサスペンションのジオメトリーを以前の仕様に戻したことで、彼の自信は回復しつつある。またウルフ代表とメルセデスはアントネッリの育成に多大な時間と労力を注いできている。「もう後戻りできない」という思いもあるかもしれないし、そうでないにしても1年で見切りをつけるのは時期尚早だ。

 アントネッリを1年間“ベンチ入り”させ、代わりにラッセルのチームメイトとして経験豊富なドライバーを据えるという選択肢もあるにはある。ただ長期的にはアントネッリの自信をさらに損なう恐れがあり、代わりに彼以上の結果を出せそうな人材も限られる。

 元リザーブドライバーのミック・シューマッハーがカムバックする可能性は極めて低く、現リザーブドライバーのフレデリック・ベスティに関しても、フォーミュラEなど他カテゴリーに進む可能性が高い。

レッドブル

Yuki Tsunoda, RB F1 Team

 角田裕毅は、現在レッドブルのセカンドシートでまさに綱渡りを強いられている。元チーム代表のクリスチャン・ホーナーらを筆頭に、首脳陣からは角田に関して美辞麗句が並べ立てられたが、結局のところレッドブルは1台体制のなのだという印象がますます強まる1年となった。

 この1年を振り返っても、不振を理由にチームを追われたセルジオ・ペレスやリアム・ローソンはスケープゴートにされた感がある。ローソンの後任である角田がそこに追随せずに済んでいるのは、候補者の枯渇という一面も関係しているだろう。こうして角田は、ピーキーで扱いづらく、しかも古い仕様のマシンで苦闘を続けている。

 サマーブレイク終盤には、インディカー王者のアレックス・パロウ(未だマクラーレンから多額の訴訟を起こされている)がレッドブル入りするのでは、という噂でインターネットの片隅が盛り上がった。ただその発端となったのは、地元紙のインディアナポリス・スターが報じた「関係筋によると……」という憶測の域を出ない記事だった。

 パロウ本人はF1シート獲得を望んでいるとされるが、彼とマネジメント側はそうした話をすぐに否定した。そもそも、強豪チップ・ガナッシ・レーシングとの2026年のインディカー契約を破棄してまで、F1で最も不人気なシートに座ることに必死になるだろうか?

 もうひとりの角田後任候補はレーシングブルズのアイザック・ハジャーだが、彼はすでに昇格に難色を示している。レッドブル育成の次の切り札にはアービッド・リンドブラッドがおり、彼は今年のイギリスGPのFP1に出走するため既に特例でスーパーライセンスを取得したが、F1デビューはまずレーシングブルズからというのが現実的だろう。

レーシングブルズ

Liam Lawson, Racing Bulls Team, Isack Hadjar, Racing Bulls Team

 現在レーシングブルズで走るハジャーとローソンはいずれも1年契約だ。ローソンはレッドブルのトップチームでうまくいかなかったため、ハジャーはチーム内の一部からの評価が低かったためだ。

 しかし開幕戦メルボルンでつまずいた後、ハジャーは懐疑派に対して「見たことか」と言わんばかりの走りを見せている。比較的素直なマシンに助けられている面はあるが、信頼回復の途上にあるローソンを上回ってきた。

 前述の通り、ハジャーは「今すぐトップチーム昇格」という考えに抵抗感を示している。それはもっともなことだ。彼はサッカー選手のキリアン・エムバペらも所属するマネジメント会社と契約したが、依然としてレッドブル育成システム傘下であり、状況次第では強制的にトップチームに引き上げられる可能性もある。

アルピーヌ

Franco Colapinto, Alpine

 今のF1で最も気の毒なシートはレッドブルのセカンドシートと言えるが、その次はアルピーヌのシートではなかろうか。

 かつてそのレッドブルのセカンドシートで苦汁を舐めたガスリーが、2026年もアルピーヌに残留予定。一方でもう1席は未定……強靭な精神を持つ者であれば、誰にでもチャンスがある。

 序盤戦をもって更迭されたジャック・ドゥーハンは依然アルピーヌの一員であるが、すぐ復帰する可能性は低いと見られている。彼の後任として今も起用されているフランコ・コラピントは、当初は5戦限定の契約と理解されていたが、既にその期限は過ぎている。

 チームのエグゼクティブアドバイザーで、実質的なチーム代表であるフラビオ・ブリアトーレは、この件について尋ねられると毎回違う答えを返し、壊れた図りのように一貫性がない。コラピントはA525を走らせるたびに自信を失っているように見え、彼もまたドゥーハンのように突然降ろされてもおかしくない。

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