【後期高齢者医療制度】2割負担の配慮措置終了で「2025年10月から」医療費が高くなる人も
原則75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」とは
【後期高齢者医療制度】2割負担の配慮措置終了で「2025年10月から」医療費が高くなる人も
原則として75歳以上になると加入する「後期高齢者医療制度」ですが、2022年10月に行われた窓口負担割合の見直しにより、一定以上の所得がある方について医療費の自己負担が1割から2割に引き上げられました。
急激な負担増を避けるため、2025年9月末までの限定で「配慮措置」が適用されています。
これにより、1ヶ月あたりの負担増は「最大でも3000円」に抑えられているのです。
この配慮措置が終了することで、これまで負担増が抑えられていた方も2025年10月以降は本来の2割負担額を支払うことになるでしょう。
窓口で支払う医療費が大きく増加する可能性もあります。
この記事では、配慮措置終了の影響を受ける対象者について詳しく解説します。2025年10月以降に備え、ご自身や家族の医療費負担がどう変わるのかを確認していきましょう。
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そもそも「後期高齢者医療制度」とは?わかりやすく解説
公的医療保険の一つである後期高齢者医療制度には、原則として75歳以上の方(もしくは65歳以上74歳以下で所定の障害認定を受けた方)が加入します。
後期高齢者医療制度とは
それまで加入していた国民健康保険や健康保険、共済組合などの医療保険から、自動的に後期高齢者医療制度へ移行することになるため、お住まいの自治体から保険証や案内が送られてきます。
保険料は、加入者全員が一律で負担する「均等割額」と、所得に応じた「所得割額」にて決まり、それぞれ居住する都道府県ごとに定められています。
「後期高齢者医療制度」の医療費の自己負担割合
現役世代の方は、病院にかかったときに「医療費の3割」を自己負担することが多いと思います。
一方で後期高齢者医療制度における医療費の自己負担割合は、「1割」「2割」「3割」のいずれかに区分されます。これは所得に応じて決まります。
制度設立当初から「一般的な所得の方は1割」「現役並み所得の方が3割」とされてきたのですが、2022年10月1日に「2割負担」が導入。これにより、一定以上の所得がある方については負担割合が2割へと引き上げられました。
後期高齢者医療制度の窓口負担割合
厚生労働省の推計によると、2割負担の対象となるのは約370万人。後期高齢者医療制度の加入者全体の約2割を占める形です。
自己負担割合が2割になる人の要件
後期高齢者医療制度の被保険者で、窓口負担割合が「2割」となるのは、次の(1)(2)の両方の条件を満たす場合です。
・1:同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上のかたがいるとき
・2:同じ世帯の被保険者の「年金収入(※1)」+「その他の合計所得金額(※2)」の合計額が、被保険者が世帯に1人の場合は200万円以上、世帯に2人以上の場合は合計320万円以上であるとき
※1「年金収入」とは、公的年金控除等を差し引く前の金額です。なお、遺族年金や障害年金は含みません。
※2「その他の合計所得金額」とは、事業収入や給与収入等から必要経費や給与所得控除等を差し引いた後の金額です。
自己負担割合が2割になる人の「年金収入」目安
75歳以上の方の課税所得や年金収入などをもとに、世帯単位で自己負担割合が判定されます。
「課税所得が28万円以上」であり、かつ「年金収入とその他の合計所得」の合計額が以下の基準を満たす場合、窓口負担割合は2割となります。
・単身世帯:年金収入とその他の合計所得が200万円以上
・複数人世帯:年金収入とその他の合計所得が合計320万円以上
2025年9月30日に終わる配慮措置
「2割負担」者への配慮措置は、2022年10月1日から2025年9月30日までの期間限定で行われています。
「2割負担」2025年9月30日まで配慮措置
2025年10月からは緩和措置が終了して自己負担額が増加するため、特に病院の受診が多い方は注意が必要です。
【後期高齢者医療制度】受けられる給付12選
支払う自己負担割合について見ていきましたが、ここからは後期高齢者制度の加入者が受けられる給付について見ていきます。
基本的には公的な健康保険であるため、一般的な保険と変わりはありません。
東京都後期高齢者医療広域連合の例を参考にしましょう。
給付①療養の給付
まずは病院やけがで病院を受診したとき、保険証等を提示することで受けられる「療養の給付」があります。
これにより、窓口で負担する自己負担額は1割~3割におさめられます。
給付②療養費
例えば保険証等を持たずに診療を受けた場合、病院では一旦全額を自己負担する必要があります。
このとき、お住まいの市区町村窓口にて申請し、広域連合で認められた部分について、自己負担分を除いた額が療養費として支給されます。
これを療養費といいます。
給付③入院時食事療養費
被保険者が入院したとき、食事代の負担が発生します。この費用のうち、標準負担額を除いた額を広域連合が負担します。
これを入院時食事療養費といいます。
給付④入院時生活療養費
被保険者が療養病床に入院したとき、食費と居住費にかかる費用のうち標準負担額を除いた額を広域連合が負担します。
これを入院時生活療養費といいます。
療養病床とは、主として長期にわたり療養を必要とする方のための病床のことを指します。
給付⑤移送費
負傷、疾病等によって移動が困難となったとき、医師の指示により一時的、緊急的な必要性があって移送された場合に、移送費が支給されることがあります。
ただし、緊急その他やむを得なかったと広域連合が認めた場合に限られます。また、救急車は無料なので対象になりません。
給付⑥高額療養費
月の1日から末日までの1か月ごとの自己負担額が限度額を超えた場合、超えた額について高額療養費が支給されます。
給付⑦高額介護合算療養費
世帯で1年間(8月1日~翌年7月31日)に支払った後期高齢者医療制度の一部負担金等の額と、介護保険の利用者負担額の合算額が世帯の算定基準額を超えるとき、超えた額が高額介護合算療養費として支給されます。
※後期高齢者医療制度と介護保険それぞれの制度から払い戻されます。
給付⑧保険外併用療養費
保険が適用されない療養を受けると、保険が適用される部分があっても全額が自己負担となります。
しかし、医療技術の進歩や患者のニーズの多様化に対応するため、一定の条件を満たした場合は、通常の治療と共通する部分(診療・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に保険が適用されます。
これを保険外併用療養費といいます。
給付⑨訪問看護療養費
主治医の指示に基づいて訪問看護ステーションを利用した場合、自己負担分の利用料を支払った残りの分について、訪問看護療養費として支給されます。
給付⑩特別療養費
被保険者資格証明書の交付を受けている方が保健医療機関にて医療費の全額を支払った場合、申請に基づき、自己負担額を除いた額が特別療養費として支給されます。
ただし、保険料未納分を相殺する場合があります。
給付⑪葬祭費
被保険者が亡くなったとき、その葬儀を行った喪主を対象として、葬祭費が支給されます。
筆者は公務員として後期高齢担当をしていましたが、比較的小さな自治体であるにも関わらず、高額療養費や療養費、葬祭費等の申請は毎月多く受け付けていました。
なお、自治体によっては独自の助成をするところもあります。
給付⑫自治体独自の事例
給付とは異なりますが、保健事業の一環として保養施設の利用助成や人間ドック等の補助を行うところもあります。
たとえば埼玉県ふじみ野市の場合、後期高齢者医療制度の被保険者のうち保険料の納期到来分が完納されている人を対象として、保養施設の宿泊利用補助を行っています。
助成額は1泊3000円で、1年度内1人1回限りの利用となっています。
まとめにかえて
2025年9月30日に、後期高齢者医療制度の自己負担2割の方が対象になっていた「配慮措置」が終了します。
これにより、10月以降は本来の自己負担額を支払うことになり、窓口で支払う医療費が大きく増加する可能性があります。
ご自身が対象となるかどうか、そしてどのくらい負担が増えるのか、事前に把握しておくことが大切です。
医療費の負担増に備えるためには、まずご自身の医療費負担がどう変わるのかを正しく理解し、今後の家計を見直すことが重要となります。
参考資料
・政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
・厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
・東京都後期高齢者医療広域連合「一部負担金の減額・免除等」
・埼玉県ふじみ野市「保養施設の宿泊利用補助(後期高齢者医療制度)」