三菱自動車、新型「デリカミニ」(2025年フルモデルチェンジ)公開 大きく変わった動力系と足まわりなど進化点を解説
2025年8月22日 受注開始
注目度の高い新型「デリカミニ」について紹介する
三菱自動車工業は8月22日、スーパーハイトワゴンタイプの新型軽乗用車「デリカミニ」および「eKスペース」を発表、受注を開始した。発売時期は2025年秋を予定しており、価格も現時点では未定となっている。
新型デリカミニの受注開始に先んじて行なわれた撮影会では新型デリカミニの概要説明や開発担当者へのインタビューの時間があったので、本稿ではそれらの内容を紹介していく。
登場から2年でフルモデルチェンジ?
まずはモデルチェンジの時期について。これまでのデリカミニ(以下、初代デリカミニ)は、「eKクロススペース」をベースとした大幅改良モデルとして2023年5月に発売された(eKクロススペースは2023年4月に発売終了)。そのためデリカミニとしてみると発売から約2年でフルモデルチェンジを迎えたことになるが、ベースのeKクロススペースは2020年3月に発売されたモデルなので2025年でのフルモデルチェンジは一般的なことといえるだろう。
新型デリカミニの兄弟車となる新型「eKスペース」。発売時期は2025年秋を予定。グレードなどの詳細、価格は未発表
スーパーハイトワゴンの中でアウトドア系のカテゴリーに入るデリカミニは、男女問わず若い世代からデザインを中心に評価され、ベースとなったeKクロススペースより約4倍の販売台数を記録
大きく変わった動力系と足まわり
新型デリカミニに搭載されるエンジンは自然吸気、ターボともに初代デリカミニから引き継ぐ直列3気筒DOHC 0.66リッターだが、大きな変更点としてはマイルドハイブリッドシステムを外してエンジンのみの動力系に戻したことだ。
撮影会のタイミングではエンジンの詳細なスペックは伏せられていたが、エンジン側では初代と同型式ながら、ピストンのフリクション低減やエンジン制御プログラムの見直しなどを行なうことで、マイルドハイブリッドシステムを搭載していたときと同等の燃費を実現したという。また、CVTの変速プログラムも新仕様エンジンの特性に対して最適化することで、アクセル開度に応じたスムーズな回転の上がり方を実現しているそうだ。
燃費がいいことももちろん大事だが、初代デリカミニはモーターアシストによる発進加速のよさも魅力の1つだっただけに、ハイブリッドなしで走りの特性がどうなったかも気になるところ。今後、Car Watchに新型デリカミニの試乗記が掲載されていくので、走りの質についてはそちらの評価を読んでいただきたい。
エンジンとトランスミッションは初代と同じだが、ハード面、ソフト面にそれぞれ改良を加えて熟成を高めたものになっている
悪路走破性についても評価が高かった初代デリカミニのフルタイム4WD車だが、新型デリカミニでは特徴をさらに伸ばす機能としてドライブモードが選択できる機能が追加された。
モードは「パワー」「エコ」「ノーマル」「グラベル」「スノー」の5モードがあり、モードの選択は登録車の「アウトランダー」でも採用されているダイヤル式セレクターを操作して行なう。なお、eKスペースは「パワー」「エコ」「ノーマル」の3モードとなり、セレクタースイッチの形状もダイヤル式ではなくトグルタイプとなる。
フルタイム4WD車のみに設定されるグラベルモードとスノーモードは、例えばぬかるんだ未舗装路面や深い雪道など、トラクションが必要なシーンで威力を発揮するよう、エンジン、CVT、駆動系の電子制御が最適化される。
ドライブモードの選択ができるようになったことで、新型デリカミニは初代デリカミニ以上にアクティブに走れるクルマになっていると想像できる。
フルタイム4WD車の特徴である5つのドライブモード。モードセレクトのスイッチはアウトランダーでも採用するダイヤル式
ダイヤルスイッチは新型デリカミニ専用の装備なので、インパネまわりのデザインはeKスペースとは異なる
新型デリカミニではフルタイム4WD車に未舗装路での走行安定性を高めた専用ショックアブソーバーを採用している。使用しているのはカヤバ製のショックアブソーバーで、本体内部のロッドガイドの材質改良、リストバンドの材質や形状変更、ダンパー、オイル添加剤変更など摩擦力を低減するための改良を加えた「プロスムース」技術を使ったもの。そのショックアブソーバーをベースに三菱自動車のテストコースで新型デリカミニ専用にセッティングしたものとなる。
三菱自動車によると、新型デリカミニの4WDモデルは荒れた路面で安定性と快適性があるだけでなく、その質感はカーペットの上を走っていると表現される乗り味を実現したという。また、ハンドル操作にも忠実で安定した車両の動きも併せ持つので、カーブでの唐突な揺れを抑え、安心感を高めるものとなっているとのことだ。
ショックアブソーバーのほかにも、サスペンションには走りの性能を向上させる対策が施されていた。
サスペンションには左右輪に連結して左右輪が逆位相で動くときのロール剛性を高めるスタビライザーが付いているが、新型デリカミニではスタビライザーの素材をねじり剛性が高い中実タイプとしている。これによりロールを抑える効果が向上した。ちなみに初代デリカミニの4WDモデルには、スタビライザーのパイプ内部が空洞がある中空タイプが使われていた。
サスペンションに関してはほかにも新世代のベアリングの採用とベアリングを支えるナックルの材質をアルミとしたことや、ふらつきを抑えることを目的にリアサスブッシュの位置を設定。また、タイヤに関しては初代デリカミニと同様、4WDモデルで大径化している。
新型デリカミニはサスペンションまわりの作りにも大いに力が入っている
アップライトの材質をアルミに変更。これは荒れた路面を走ったときのハンドル振動を抑える効果もある
リアサスブッシュの取り付け位置を従来モデルから変更。これにより走行安定性が向上
デザインの方向性について
三菱自動車工業株式会社 デザイン本部 デザイン・戦略部 デザインマネージャー(エクステリアデザイン担当)の後藤淳氏。初代デリカミニも担当し、デザイン面でデリカミニの世界観を作り上げた人物でもある
新型デリカミニのエクステリアデザインについては三菱自動車工業 デザイン本部 デザイン・戦略部 デザインマネージャー(エクステリアデザイン担当)の後藤淳氏から話を聞くことができた。
初代と比べると力強いイメージが増した新型デリカミニだが、デリカ D:5が親だとするとデリカミニは子どものポジションなので、デリカらしい力強さの中にキュートさも表現したかったという。
そこでデザインのポイントを聞いてみたところ、初代デリカミニはeKクロススペースの改良モデルのため、部分的にデリカらしさを入れることはできても根本的に作り替えることができないものだった。それに対して新型デリカミニは「もう一度デリカらしさを考えることができたモデル」だったそうだ。その結果、全体のイメージを四角いものとすることで、デリカらしい機能性のよさを表現したとのことだった。
デリカミニはデリカの子どもというポジションなので、デリカらしい強さを感じさせるデザインを目指したという
デザインコンセプトの「デイリーアドベンチャー#2」では、走破性とアウトドアイメージがある「ギヤ感」。厚みや塊感からくる「安全感」、そして親しみやすいやんちゃなキャラクターである「親近感」の3点を軸にしている
初代デリカミニで評価された特徴的で親近感のあるスタイリング、広くて便利で快適な室内、運転しやすさと走行性の良さといった特徴を継承しつつ、新型としての進化や強化を行なっている
エクステリアデザインの細部を見ていく
新型デリカミニは「四角いイメージ」となった。四角のようなジオメトリックな形状には機能的なイメージがあり、それがデリカの機能性のよさを感じてもらうことにつながるという
初代デリカミニと新型デリカミニを見比べると、新型デリカミニは「ガッシリ感」「タフさ」を感じるデザインになっている。この理由はピラーの位置と角度の見直しで、新型デリカミニは初代よりフロントピラー(Aピラー)のルーフ側を100mm起こした位置とした。同時にやや絞り込んでいたルーフの横幅を広げている。
また、車体後ろのDピラーがしっかりした骨格を持つデザイン処理になっているのも全体のイメージ作りに貢献している。さらにボディサイドに入る特徴的なプレスラインはベースのeKスペースと同じものだが、このプレスラインも力強さを感じさせ、ボディ色で骨太のイメージを持たせるDピラーとのマッチングはいい。
「タフ」なイメージが増した新型デリカミニだが、一般的にはこうした変化を付けるにはキャラクターラインを用いることが多いのだが、今回は造形自体を絞ることでしっかりと踏ん張りの効いたデリカらしいイメージを作り出したという。具体的にはフェンダーフレアの上を絞り込んだあとに膨らみを持たせることで、安定感やスタンスのよさを表現しているとのことだ。
フロントピラーを初代デリカミニより100mm起こした形状とした
初代デリカミニ(左)とのフロントピラーの比較。新型はピラーが立った形状になっているのが分かる
車体後ろのDピラーのデザインも大きく変わり、しっかりとした印象を受けるものとなった。ドア下部のグラフィックは初代はステッカーだったが、新型は黒い部分が塗装になっている
ルーフ上部をワイドにしたことで室内空間を広くするとともにタフさを感じさせている
ドアからルーフに繋がる部分を張り出すことで、四角さやプロテクト感、守られ感を出しているという。向きによっては初代デリカミニと比べると大きいクルマにさえ見える
この角度もDピラーの存在感がよく分かる。リアコンビランプもボディの四角さとイメージがつながるブロックモチーフとなっている。夜間の視認性もいいという
フェンダーフレアの上を絞り込んだあとに膨らませている。幅の制限がある軽自動車規格であっても十分な安定性のよさを感じさせるデザイン
フェンダーの膨らみはドアまでつながっているので、そこがデザインに無理を感じさせないポイント。ドア部に映り込む芝の模様を見ると膨らみが分かるだろう
ドアハンドルの部分の凹みも四角いデリカミニのデザインに合わせ四角い形状としている。ドアハンドルの握りやすさも考えたものだ。なお、スライドドアの開口幅は650mmとクラスナンバー1
つぎにフロントまわりのデザインについて。初代デリカミニで好評だった半円形のヘッドライトシグネチャーは継続した。これでイメージを残しつつさらにライト部を大型化することで視認性を向上させている。
フロントグリルも初代より幅広の造形とした。ここに四角の造形を入れることで全体の四角いイメージを補完している。
また、フロントグリルにはスリーダイヤのマークが付くセンターの位置に先進機能用のレーダーが収めてあるのだが、これはセンサーとして最適な位置にしたという理由のほかに、犬のような動物の顔にも見えるフロントのデザインの中で、犬にとって大切な嗅覚がある「鼻」にあたる部分に検知機能を持つレーダーを置くという遊び心も入ったデザインでもあるそうだ。
フロントの比較(左が新型デリカミニ)。ボンネットの厚みが増し、ヘッドライトが大きくなり、バンパーのダイナミックシールドのデザイン処理もバンパーと一体感があるものになった。スキッドガードのサイズも大型化する
グリルのセンター部にレーダーを配するのは機能面での判断だが、デリカミニには「デリ丸」という犬のキャラクターがいる。そして犬にとって大事な部位である「鼻」をイメージする部分に、クルマの重要な検知機能であるレーダーを置くという遊び心も入っている
初代のイメージを引き継ぎつつ大きくなったヘッドライト。キュートな感じが増している
ウインカーを点けると表情が変わるという遊び心も取り入れている
バンパーのデザインは三菱車の特徴であるダイナミックシールドが引き続き採用されているが、初代と比べるとバンパーとの一体感があるスッキリしたデザインとして次世代感を出している。また、ダイナミックシールドの横に配置されるフォグランプは初代より大型化しつつ、タフさを感じる四角いデザインとした。
もう1つ、細かい部分だがヘッドライトレンズの横に作られている盛り上がりからフェンダーへと続く造形に注目してもらいたい。
軽自動車は全幅に規制があるため、その枠いっぱいにボディ幅を広げても、視覚的なワイド感を得にくい。そこで新型デリカミニではフェンダー部分のデザイン処理で横幅の抑揚をつけることに加えて、クルマを前から見たときに人が「幅を感じるポイント」にアクセント的に膨らみを付けるというデザイン処理をした。そのポイントがヘッドライト横の造形。ここに横に広がる突起部分を付けることでフェンダーフレアのデザインと合わせて幅広く感じるものとなっている。
寸法の余裕がない軽自動車枠の中で3次元表現をするためダイナミックシールドの造形を利用し、角度がある部分に生まれる明暗を利用。立体感が出るよう形を決めていった
ヘッドライト横の形状は正面から見たときに幅広さを出し、強さや無骨さを演出することに貢献している
4WDには専用ホイールが用意される。デザインはトレッキングシューズをイメージしたもの
4WDモデルのタイヤサイズは165/60R15
ボディカラーの設定も豊富。サンドベージュとデニムブルーが新色として追加された
新型デリカミニのインテリアデザイン
インテリアデザインのコンセプトは「デイリーアドベンチャー 開け、冒険のトビラ」で、三菱自動車ならではのギヤ感を表現した機能的で高品質を目指したものとなる。
まずインパネまわりだが、トレイや各操作スイッチ類はアウトドア感、ギヤ感を高めたデザインとしつつ使いやすさを重視。さらに軽自動車選びにおいて重視される小物入れ、収納については「ある」ということではなくて「実際に使える道具」として使い勝手を追求した機能的なものとしている。
使える収納スペースというテーマのインパネまわり
前席ドアの内張には編み込み風のパターンを入れてアウトドア感を出している
後席ドアの内張はこのようなデザインに。足下スペースの広さを表現するようなイメージ
Aピラーの内側からルーフにかけてプロテクト感のある環状骨格を想起させるデザインを採用。これがデリカミニのインテリアの特徴となっている
Aピラーを立たせたことで前方および斜め前の視界がよくなった。また、身長が高い人のシート位置でも運転しやすいようステアリングの位置を変更した
シートについてはプレミアムグレードとスタンダードグレードでデザインを変えた。プレミアムグレードではグランピングコテージの内装をイメージした表皮のデザインで、スタンダードグレードは形状こそ同じだが、シンプルなファブリックとなる。なお、シート自体はどちらのグレードもアウトドア指向のデリカミニらしく防水加工がされている。
そのほか、細かい工夫としてはフロントシートをいっぱいにリクライニングさせて、リアシートとつなげたフルフラットアレンジの際にできる段差を低減させている。また、リアシートも座面を延長することで座り心地を向上させるとともに、左右席ともにショルダーサポート形状の変更によってカーブでの体の振られを軽減している。
シートはグランピングコテージにある家具をイメージしたデザイン。この配色はプレミアムグレード用
後席も同じデザインに。前席、後席ともに表皮は防水加工されている
プレミアムグレード用のインテリアデザイン
スタンダードグレード用のインテリアデザイン
フラットシートアレンジしたときにできる段差を小さくするシートの作りとした
インテリアの装備
初代デリカミニと比べて静粛性も向上させている
ステアリングは新しいデザインの2本パッドデザインを採用。左右のスポーク部にマイパイロットなどの操作スイッチがつく。そしておもしろいところとして、初代デリカミニと比べてステアリングの位置自体を変更している。なぜかというと、身長の高い人が運転席に座り、足の長さに合わせてシートを後方にスライドさせると、従来のステアリング位置では遠いと感じることがあったからだ。そこで新型デリカミニではステアリングの位置を幅広い身長で運転しやすくなるように最適化しているのだ。
新しくもあり、懐かしさも感じるステアリングパッドのデザイン。ステアリングは革巻き
インテリアデザインで目を引くメーターまわりは12.3インチ×7インチの大型モノリスディスプレイの採用による先進感の表現と見やすさ、使い勝手のよさを持たせた。
また、メーカーオプションで設定されるナビゲーションにはGoogle機能が搭載されていて、スマートフォンなしでもGoogleマップが使用でき、スマートフォンで事前にルート設定をするとそれが同期されるという機能もある。さらにGoogleアシスタントも使えるので、運転中に音声操作による目的地設定やエアコンの温度設定もできるようになっているなど、先進の機能を持たせている。
そのほかディスプレイを使う機能として、車体各部のカメラで撮影した映像の表示があるが、こちらも三菱自動車初となる3Dアラウンドビューモニター機能を搭載。これは前後8つのカメラからの視点切り替えにより車体の周辺の様子を立体的な映像で確認できるのに加え、ノーズパノラマビューや車両の下側が透けて見えるような映像を映し出すフロントアンダービュー機能も備えている。
Google機能がスマートフォンなしで利用できる
カメラを使う周辺確認の機能も充実した
12.3インチ×7インチのモノリスディスプレイを採用
ディスプレイに情報が表示されたときのイメージ。左側の表示はナビゲーションのもの
ナビゲーションはメーカーオプションとディーラーオプションから選べる。Google機能付きはメーカーオプション品
デリカミニではカスタマイズも人気なので純正用品も充実。こちらはアウトドアシーンが似合う「ワイルドアドベンチャースタイル」
都会的な「アクティブトーンスタイル」
新型デリカミニの発売時期は2025年秋を予定