厚生年金と国民年金「年間240万円超」受給している人はどのくらいいるの? 年金一覧表でシニアの平均月額も確認
厚生年金と国民年金「年間240万円超」受給している人はどのくらいいるの? 年金一覧表でシニアの平均月額も確認
例年以上に暑い日が続いた2025年の夏も終わりに近づき、日ごとに秋の気配が感じられるようになりました。この時期、今後のライフプランについて、改めて考え始める方もいらっしゃるかもしれません。
特にシニア世代の方々にとって、公的年金は生活の柱です。しかし、将来自分が受け取る年金額を正確に把握しているでしょうか。また、年金はどのように計算されているのか、疑問に思う方もいるかもしれません。
今回の記事では、日本の公的年金制度の仕組みや平均受給額、そして「加給年金」の制度について詳しく解説します。
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日本の公的年金制度の仕組み
公的年金の支給日は「偶数月の15日」です。
もし、15日が土日祝日となる場合は、その直前の平日が支給日となります。
日本の公的年金制度は2階建て構造になっており、1階部分には「国民年金(基礎年金)」、2階部分には「厚生年金」があります。
それぞれの、加入対象・保険料・老後の受給額について見ていきましょう。
「1階部分」国民年金:加入対象・保険料・老後の受給額
・加入対象:日本に住む20歳以上から60歳未満の全ての人が原則加入
・年金保険料:全員一律(※1)
・老後の受給額:40年間欠かさず納めれば満額(※2)
※1 国民年金保険料の月額:2025年度 1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2025年度 6万9308円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者
「2階部分」厚生年金:加入対象・保険料・老後の受給額
・加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)に働き一定要件を満たした方が、国民年金に上乗せで加入
・年金保険料:収入に応じて決まり(※5)、給与からの天引きで納付
・老後の受給額:加入期間や納めた保険料により個人差あり
・被保険者:第1号~第4号に分かれる(※6)
※4 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※6 第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者
次は厚生労働省の資料をもとに、シニア世代の「平均年金月額」をご紹介します。
シニア世代の平均月額はどのくらいか
厚生労働省年金局が公表した「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金と国民年金の平均年金月額を確認していきましょう。
厚生年金・国民年金の平均年金月額(2023年度末現在)
「厚生年金+国民年金」平均月額はいくら?
・男女全体:14万6429円
・男性:16万6606円
・女性:10万7200円
(国民年金部分を含む)
※ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。
「国民年金」平均月額はいくら?
・男女全体:5万7584円
・男性:5万9965円
・女性:5万5777円
国民年金の、男女全体の平均月額は5万円台です。
国民年金の保険料は一律となっているため、受け取る年金額に大きな個人差が生まれにくくなっています。
2025年度の国民年金の満額は6万9308円(月額)です。
そのため、国民年金だけで年間240万円(月額20万円)以上を受け取ることは現実的に難しいでしょう。
一方で、厚生年金は国民年金の上乗せとして支給されるため、国民年金のみを受け取るよりも受給額が多くなる傾向にあります。
厚生年金の保険料は、個人の収入などに応じて変動するしくみとなっており、受け取る金額にも個人差が生じやすいです。
厚生年金と国民年金で年間240万円超を受給している人はどのくらいいる?
ここからは「厚生年金+国民年金」の受給額分布を見てみましょう。
「厚生年金+国民年金」受給額ごとの受給権者数
「厚生年金」受給額ごとの人数
・1万円未満:4万4420人
・1万円以上~2万円未満:1万4367人
・2万円以上~3万円未満:5万231人
・3万円以上~4万円未満:9万2746人
・4万円以上~5万円未満:9万8464人
・5万円以上~6万円未満:13万6190人
・6万円以上~7万円未満:37万5940人
・7万円以上~8万円未満:63万7624人
・8万円以上~9万円未満:87万3828人
・9万円以上~10万円未満:107万9767人
・10万円以上~11万円未満:112万6181人
・11万円以上~12万円未満:105万4333人
・12万円以上~13万円未満:95万7855人
・13万円以上~14万円未満:92万3629人
・14万円以上~15万円未満:94万5907人
・15万円以上~16万円未満:98万6257人
・16万円以上~17万円未満:102万6399人
・17万円以上~18万円未満:105万3851人
・18万円以上~19万円未満:102万2699人
・19万円以上~20万円未満:93万6884人
・20万円以上~21万円未満:80万1770人
・21万円以上~22万円未満:62万6732人
・22万円以上~23万円未満:43万6137人
・23万円以上~24万円未満:28万6572人
・24万円以上~25万円未満:18万9132人
・25万円以上~26万円未満:11万9942人
・26万円以上~27万円未満:7万1648人
・27万円以上~28万円未満:4万268人
・28万円以上~29万円未満:2万1012人
・29万円以上~30万円未満:9652人
・30万円以上~:1万4292人
「年間240万円超」の厚生年金+国民年金を受給している人の割合は、全受給者のうち16.3%となっています。
つまり、約8割以上の受給者は、月額20万円未満の年金を受け取っていることになります。
また、この割合は「厚生年金+国民年金」を受給している人を対象としているため、国民年金のみを受給している人を加えると、「月額20万円以上」の年金を受け取る人の割合はさらに少なくなると考えられます。
年金額は「年金振込通知書」で確認を
2025年度の年金額は「年金振込通知書」で確認できます。
「年金振込通知書」は毎年6月に、金融機関などの口座振込で年金を受け取られている方に対して、6月から翌年4月(2カ月に1回)まで毎回支払われる金額をお知らせするものとなっています。
公的年金の支給額は、物価や現役世代の賃金などを考慮したうえで、毎年度見直されています。
2025年度の年金額は、4月分から改定され、2024年度と比べ1.9%増えています。
なお、公的年金は、前月までの2カ月分が後払いで支給されるしくみです。
増額後の年金額が適用されるのは「4月分」で、支給日は6月13日金曜日でした。
年金を金融機関で受け取る場合、この支給日に合わせて「年金振込通知書」が郵送されます。
年金振込通知書には、以下の内容が記載されています。
年金から天引きされる税や社保が記載される「年金振込通知書」
(1)年金支払額
1回に支払われる年金額(控除前)
(2)介護保険料額
年金から天引きされる介護保険料額
(3)後期高齢者医療保険料、国民健康保険料(税)
※特別徴収される場合に記載される
年金から天引きされる「後期高齢者医療保険料」または「国民健康保険料(税)」
(4)所得税額および復興特別所得税額
年金支払額から社会保険料(※1)と各種控除額(※2)を差し引いた後の額に5.105%の税率をかけた額
※1 社会保険料:社会保険料とは、特別徴収された介護保険料、後期高齢者医療保険料または国民健康保険料(税)の合計額
※2 各種控除額:扶養控除や障害者控除など
(5)個人住民税額および森林環境税額
年金から特別徴収(天引き)される個人住民税額および森林環境税額
(6)控除後振込額
年金支払額から社会保険料、所得税額および復興特別所得税額、個人住民税額および森林環境税額を差し引いた後の振込金額
(7)振込先
年金が振り込まれる金融機関の支店名(※営業所、出張所などを含む)
(8)前回支払額
令和3年10月から、年金振込通知書に前回の定期支払月に支払った金額
各支払期における天引き額(特別徴収額)は、変更される可能性があるため、注意が必要です。
年金振込通知書は、基本的に年に1回送付され、振込額や振込口座に変更がない場合、その後の支給月には通知書は送付されません。
加給年金とは
「加給年金」とは、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が「65歳になった時点で、一定条件を満たす扶養家族がいる場合」に加算される年金です。
「年金の家族手当」などとも呼ばれる制度で、本人の厚生年金に「加給年金」が加算されます。
加給年金の対象となる世帯は、以下のとおりです。
・厚生年金加入期間20年以上の人が、年下の配偶者や18歳未満の子を扶養している世帯
加給年金額
2025年4月からの加給年金額(および年齢制限)
配偶者:23万9300円
※65歳未満であること(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はありません)
1人目・2人目の子:各23万9300円
※18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
3人目以降の子:各7万9800円
※18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
加給年金は、配偶者が65歳に達するまで支給され、歳の差が大きいほど、加算される期間が長くなるしくみです。
配偶者が65歳を迎えると、加給年金は終了します。しかし、その代わりに「振替加算」という制度に移行します。
まとめ
公的年金についてさまざまな角度から解説してきました。
やはり多くの世帯で将来資金が不足していることが分かります。
理想の老後生活を実現するには現役世代のうちにできる限りの準備をし、「公的年金」に頼らない資金作りが大切ですね。
しかし今の時代、銀行預金だけではなかなか思うように増えてはいきません。
そこで多くの世帯で「資産運用」が取り入れられています。
特に最近ではNISAやiDeCoといった国の制度も整ってきています。
比較的投資初心者の方であっても始めやすい制度ですね。様々なリスクもありますが、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考資料
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「年金の繰下げ受給」
・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
・日本年金機構「年金振込通知書」
・日本年金機構「加給年金額と振替加算」