フェラーリ 288GTOは、グループB規定に則って作られた異色の高性能フェラーリ【スーパーカークロニクル・完全版/021】
伝説として始まり、革新へと至ったスーパーカーたち。1970年代の懐かしいモデルから現代のハイパースポーツまで紹介していこう。今回は、フェラーリ 288GTOだ。

フェラーリ 288GTO(FERRARI 288GTO:1984〜1986)

グループB規定で行われる予定だったレースのために作られた288GTO。その佇まいは独特の迫力を醸し出している。
フェラーリは1984年のジュネーブ モーターショーで「288GTO」を発表した。もっとも、発表時の車名は単に「GTO」なのだが、1960年代の名車「250GTO」と区別するために便宜上288GTOと呼ばれており、ここでも288GTOとして紹介する。
その名が示すとおり、288とは2.8LのV型8気筒エンジンを搭載していることを意味し、GTOとは「Gran Turismo Omologato(グラン ツーリスモ オモロガート)」の頭文字をつなげたもので、イタリア語でGTレース用の公認を取得したクルマを意味する。
つまり288GTOは、1982年にFIAが改正した車両規制に則り、グループBで行われる予定のレースに参戦することを目的として、12カ月間連続で最低200台生産する規定を満たすために製造されたモデルだった。

2855ccのV8 DOHCツインターボエンジンは、ミッドシップ方式の中でも中心に置かれ重量配分を最適化している。
288GTOはV8エンジンを縦置きにミッドシップ搭載しただけでなく、ツインターボを採用した最初の生産型フェラーリでもある。重量配分を最適化するため、バルクヘッドに触れるほど前寄りに搭載された2855ccのV8 DOHCツインターボエンジンは406psを発生した。
開発のベースとなった308GTBよりホイールベースは110mm長いが、リアオーバーハングを切りつめて全長を5mm短く収めるなど、ボディスペックも含め、レーシングカーそのものだったといっていい。また、リアのダックテール形状やリアフェンダー後ろの縦型3本ルーバーなどは、前述した往年の名車250GTOをオマージュして用いられたデザイン上の特徴でもある。
だが288GTOが出場する予定だったレースは、WRCにおけるグループB車両の事故などからグループBが廃止されたため、幻に終わってしまった。それでも288GTOのハイパフォーマンスに対するオファーは殺到し、予定台数を超える272台を販売した。そして、そのテクノロジーは後継モデルたるF40に引き継がれることになる。

ダックテールのリアエンドやフェンダーの3本ルーバーなどは、かつての250GTOをオマージュしている。
●全長×全幅×全高:4290×1910×1120mm
●ホイールベース:2450mm
●車両重量:1160kg
●エンジン種類:90度V8 DOHCツインターボ
●総排気量:2855cc
●最高出力:406ps/7000rpm
●最大トルク:50.6kgm/4800rpm
●燃料・タンク容量:有鉛ハイオク・120L
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:縦置きミドシップRWD
●タイヤサイズ:前225/55VR16、後265/50VR16