【元銀行員が解説】親の死亡で銀行口座はどうなる?葬式費用などすぐに必要なお金は凍結前に引き出せるのか?

「親が亡くなると銀行口座が凍結されるって本当?」葬儀費用など、急にお金が必要になったときの対処法とは?

銀行側に死亡の事実が伝わると口座が凍結される, 口座凍結前なら出金は可能?, 口座凍結前の出金はおすすめできない, 口座凍結後でも出金手続きはできる, 万が一のときの費用は日頃から話し合っておこう

【元銀行員が解説】親の死亡で銀行口座はどうなる?葬式費用などすぐに必要なお金は凍結前に引き出せるのか?

8月はお盆休みもあり、実家へ帰省して両親や家族とにぎやかなひと時を過ごした方も多いのではないでしょうか。久しぶりに顔を合わせた喜びの反面、両親の年齢を改めて意識した方もいるかもしれません。

そんなときに考えておきたいのが、両親が亡くなったときの銀行口座の取り扱いについてです。この記事では、死亡時の銀行口座の凍結について元銀行員の筆者が解説します。後半では葬式費用の出金手続きについても解説しますので、万が一の際に備える参考にしてください。

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銀行側に死亡の事実が伝わると口座が凍結される

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銀行口座が凍結?

「預金者が亡くなると口座が凍結される」という話を聞いたことがあるでしょうか。

これは正しい情報であるものの、死亡後ただちに凍結されるわけではありません。銀行は役所などから死亡の事実を共有されるわけではないためです。

では、銀行口座はどのようなタイミングで凍結されるのでしょうか。具体的に、次のようなタイミングが挙げられます。

・家族から死亡の届け出があったとき

・新聞のお悔やみ欄への掲載を確認したとき

・銀行の役職員が葬儀へ参列したとき

家族が死亡の届け出を行うとき以外にも、新聞のお悔やみ欄への掲載でも凍結が行われます。新聞社に依頼して訃報を掲載する際は、そのタイミングで銀行口座が凍結される可能性があることを留意しておきましょう。

また、銀行との取引内容によっては、役職員が葬儀に参列するケースもあります。この場合も銀行側が当然死亡の事実を把握していますので、銀行口座が凍結されることとなります。

口座凍結前なら出金は可能?

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口座凍結前なら出金は可能?

では、預金者が亡くなっていても銀行口座が凍結される前であれば出金はできるのでしょうか。

答えは「金額によっては可能」です。

銀行は「犯罪収益移転防止法」に基づいて本人確認を行っており、200万円を超える出金を行うときは本人確認が行われます。そのため、本人確認が行われるような金額でなければ出金ができる場合があります。

口座凍結前の出金はおすすめできない

ただし、銀行は法令に基づいた本人確認以外にも、疑わしい取引だと感じた場合は自主的に本人確認を実施することも少なくありません。

例えば、「出金伝票の氏名の漢字を書き間違った」といった場合は、本人確認を依頼されることがあります。通常、自分の名前の漢字を書き間違えることは考えにくいためです。したがって、「200万円を超えなければ家族が出金しても大丈夫」というわけではありません。

また、死亡後に引き出すと相続手続きにも影響を与える可能性があります。相続人で資産を分ける際に「死亡後に勝手に引き出している」と誤解を生むだけでなく、税務署から「相続資産隠しではないか?」と疑いを持たれるきっかけにもなりかねません。

余計なトラブルを防ぐためにも、凍結されていないからといって引き出すのではなく、きちんと相続手続きを経て出金を行うことがおすすめです。

口座凍結後でも出金手続きはできる

とはいえ、「親の口座から葬式費用を引き出したい」というケースも多いでしょう。その場合は、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を使って出金が行えます。

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遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは?

この制度は、葬式費用や当面の生活費用などでお金が必要になったときに相続手続きが完了する前でも引き出しができるものです。亡くなった方や相続人の戸籍謄本を提出する必要はあるものの、先に出金を行いたい場合はこの制度が活用できないか銀行へ相談してみることがおすすめです。

ただし、この制度で引き出しができるのは、1つの金融機関につき150万円までです。また、後々のトラブルを防ぐために、出金した資金の使い道は相続人できちんと共有しておきましょう。

万が一のときの費用は日頃から話し合っておこう

人が亡くなった後は葬式費用にお寺へのお布施、病院の入院費用などまとまった費用が多く発生します。銀行口座が凍結されると引き出すまでに時間がかかるため、費用の工面に苦労するケースも少なくありません。

いざというときに困らないためには、日頃から家族間で万が一のときの費用について話し合っておくことが大切です。たとえば、「葬儀費用を事前に生前贈与しておく」「生命保険ですぐに受け取れるようにしておく」といった対策が考えられます。

亡くなった後の話は、両親が元気なうちだからこそ話し合えることでもあります。ぜひ次回の帰省は、両親の終活について家族で話し合ってみましょう。

参考資料

・政府広報オンライン「金融機関などでの取引時に行う「本人確認」等にご協力ください」

・一般社団法人全国銀行協会「ご存じですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度」