《ハッピーセット騒動》黒幕は中国系新社長か…行き過ぎた「客集め戦略」でマクドナルドのモラル崩壊
大手ハンバーガーチェーン・マクドナルドが販売するおもちゃ付きのセットメニュー「ハッピーセット」を巡る炎上騒動が、依然として過熱している。
今回の騒動は、人気カードゲーム「ポケモンカード」目当てに転売ヤーが殺到。さらに食品ロスも問題の焦点となった。
マクドナルドは、今回のハッピーセットの転売対策を不十分だと思わなかったのか。世間の批判を集めると考えなかったのか。その答えは、同社の経営方針の《大きな変化》にあった。
【前編記事】『「転売ヤーよりマクドナルドこそ悪」ハッピーセットめぐる炎上騒動《怒りの矛先》が大きく変わった理由』に引き続き、騒動の背景を探る。
好業績は「ハッピーセット」のおかげ

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マクドナルドはなぜ転売対策が不十分にもかかわらず、誰が見ても人気が集中するとわかるポケモンカードが付いてくるハッピーセットの販売を強行したのか。それは、ハッピーセットが同社にとって最も集客力の高い商品になっているからだ。
日本マクドナルドの足元の業績を見てみたい。8月8日に発表された2025年12月期通期の連結営業利益予想は、従来の495億円から510億円(前年比6.2%増)に上方修正されている。
あわせて発表された1~6月期(中間期)の連結営業利益は同10.4%増の262億円。全店売上高が前年同期比で増加し、既存店売上高は39四半期連続でプラスとなっている。
この好業績を支えているのが、ずばりハッピーセットの存在だ。フードビジネスコンサルタントの永田雅乙氏が語る。
「直近こそ好調のマクドナルドですが、実はコロナ禍以降しばらく低調な状態が続いていました。原因は前例のない原材料費・人件費の高騰によって引き起こされた、度重なる『値上げ』。そのせいで、一時は11ヵ月以上、客数が減り続ける苦境に陥っていたのです」
値上げによる客数減を抑えるために…
マクドナルドは2022年3月を皮切りに、'22年9月、'23年1月、そして'25年3月と合計4度の値上げを実施。例としてハンバーガーを挙げると、'22年3月以前では110円(税込、以下同)だった価格は、130円→150円→170円→190円と値上がりしていった。
永田氏が続ける。
「この間、営業利益率などの数字はそこまで悪くなかったのですが、客数だけは戻らなかった。飲食チェーンにとっては、客足が戻らないことはきわめて致命的。そのため、マクドナルド側も来店動機を生み出そうと、積極的に新メニューを次々打ち出したり、期間限定メニューを充実させたりしました」

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度重なる値上げの影響はすさまじく、何をしても客足はどんどん減るばかり。そんな日本マクドナルドの状況に業を煮やしてのが、米国のマクドナルド本社だ。責任の矛先は当然、当時、代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)を務めていた日色保(ひいろ・たもつ)氏に向かった。
「原田泳幸氏の時代に業績悪化に苦しんだ日本マクドナルドは、次のサラ・カサノバ氏による原点回帰、すなわち創業者である藤田田時代をリスペクトした“日本流のやり方”で業績を立て直しました。
そして後任の日色氏も引き続き、日本式の経営を重んじたと聞きます。けっして彼の経営手腕が劣っていたわけではないと思いますが、コロナ禍以降の状況は、米国本土からしたら物足りない。そこでついに今年2月、トップが交代となったのです」
香港出身「利益至上主義」の社長
日色氏に代わり、今年2月、日本マクドナルドの社長兼CEOに就任したのは香港出身のトーマス・コウ氏だった。
同氏は、'00年にドイツの光学医療機器・レンズメーカー「カールツァイスビジョン」へ入社したのち、コンサルティングファーム大手・ボストンコンサルティンググループを経て、'10年に米マクドナルドに入社。主にアジア圏を担当していた人物だ。

日本マクドナルド社長兼CEOのトーマス・コウ氏/同社公式HPより引用
日本マクドナルドの内部に詳しい関係者は、トーマス氏の人物像についてこのように明かす。
「コンサル上がりの方ですし、米本社では消費者調査などデータを取り扱う業務を中心にこなしていたせいか、とにかく数字に厳しい。利益至上主義で手段は選ばず、日本人特有の繊細さとは真逆です。
おそらく米本社は、契約期限つきの『プロ経営者』という認識で起用したのでしょう。トーマス氏もそれも分かってか、5年、10年といった中長期的ではなく、目先の2~3年しか考えていない様子です」
日本マクドナルドにおける喫緊の課題は、いかにローコストかつ短期間で、客数減を抑えるか。そこでトーマス氏が思いついた解決策が、ハッピーセットによる「客集め戦略」だった。
転売騒動も「客足が増えれば問題ない」
このトーマス氏の考えは的中する。就任直後の今年5月、国内外問わず人気を集めるキャラクター「ちいかわ」とコラボしたハッピーセットを期間限定で販売、結果として多くの集客を生み出したのだ。
前出の永田氏はこう指摘する。
「ハッピーセットを人気コンテンツと組み合わせれば、従来の客はもちろん、転売ヤーたちも殺到してくれる。転売騒動になれば、当然、メディア露出も増え、さらに客足は増える、と考えているのでしょう。そうなれば、コラボ先へ多額のライセンスフィーを支払っても、マクドナルド側としては十分プラスとなるわけです。
今回騒動になったポケモンカードしかり、立て続けに実施しようとしたワンピースしかり、『転売や食品ロスを助長している』というリスキーなマイナスプロモーションになる可能性があろうと、ハッピーセットをやめないのも仕方ないと言えます」

写真/時事通信社
マクドナルドはハッピーセットの理念について以下のように標榜している。
〈「ほん」や「おもちゃ」で子供たちが夢中になって遊びながら幅広い領域への興味を深め考える楽しさを広げてほしいと考えています。〉
一企業として利益を追求するのは当然のことかもしれない。だが、数字ばかり追い求めるばかりに本来の理念を失っては、元の木阿弥ではないだろうか。
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