【国民年金と厚生年金】「ふつうの人はいくらもらえるのか?」5歳刻みの年金一覧表を公開!平均年金月額は男女で約6万円の差があるのはなぜ?

国民年金と厚生年金の平均年金月額と仕組みを解説

【国民年金と厚生年金】2階建て構造, 1階部分【国民年金】, 2階部分【厚生年金】, 【国民年金と厚生年金】5歳刻みでみる「ふつうの人の平均」, 【国民年金・厚生年金】5歳刻みの平均年金月額, 【国民年金と厚生年金】平均年金月額「男女の差は約6万円?」, 【仮徴収と本徴収】2つのタイミングで保険料は計算される, ステップ1:年度前半は「仮徴収」, ステップ2:年度後半は「本徴収」, 前年の所得が大きく変わった人は要注意!, 年金以外にも頼れる資金形成も

【国民年金と厚生年金】「ふつうの人はいくらもらえるのか?」5歳刻みの年金一覧表を公開!平均年金月額は男女で約6万円の差があるのはなぜ?

今月は今年4回目の年金支給日がありましたが、次回5回目の支給日は再来月の10月15日になります。そんな日本の公的年金は「2階建て」とよく言われますが、その仕組みを正しく理解できていますか?将来もらえる年金額は、私たちが現役時代にどう働くかで大きく変わってきます。

今回は、厚生労働省のデータをもとに、国民年金と厚生年金それぞれの仕組みや平均年金月額を比較し、さらに年金の手取り額が年度途中で変わる「年金天引きの落とし穴」まで、老後の生活設計に役立つ情報をわかりやすく解説します。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

【国民年金と厚生年金】2階建て構造

日本の公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」と呼ばれますが、これは基礎(1階)部分にあたる「国民年金」と上乗せ(2階)部分にあたる「厚生年金」から成り立つためです。

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国民年金と厚生年金の仕組みを確認し、それぞれの違いを整理しましょう。

1階部分【国民年金】

国民年金の加入対象者は、原則として日本国内に住む20歳以上から60歳未満のすべての人で、職業や国籍は問いません。

年金保険料(※1)は全員一律です(ただし年度ごとに改定あり)。保険料を40年間納めると、65歳以降に満額(※2)の老齢基礎年金を受給することができます。

※1 国民年金保険料の月額:2025年度 1万7510円

※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2025年度 6万9308円

2階部分【厚生年金】

厚生年金の加入対象者は、会社員や公務員、またパート・アルバイトの人で、国民年金に上乗せして加入します。

年金保険料(※3)は報酬(賞与・給与)に応じて変わります(上限あり)。国民年金に上乗せして受給しますが、厚生年金部分は加入期間や納めた保険料により、老後の受給額に個人差が出ます。

※3 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

2階部分にあたる厚生年金に加入している人は、1階部分にあたる国民年金にも同時に加入しています。

老後に受け取る年金額は加入している年金の種類に影響されるため、厚生年金にも加入している人の方が、国民年金だけに加入している人よりも受給額が多くなります。

なお、最近では3階部分として私的年金(「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「個人年金保険」など)で備える人も増えています。

【国民年金と厚生年金】5歳刻みでみる「ふつうの人の平均」

厚生労働省年金局発表の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金と厚生年金(※)の平均年金月額を、5歳刻みの年齢階級別に確認します。

※厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。

【国民年金・厚生年金】5歳刻みの平均年金月額

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出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

国民年金

・60~64歳:4万4836円

・65~69歳:5万9331円

・70~74歳:5万8421円

・75~79歳:5万7580円

・80~84歳:5万7045円

・85~89歳:5万7336円

・90歳以上:5万3621円

厚生年金 ※国民年金部分を含む

・60~64歳:7万5945円

・65~69歳:14万7428円

・70~74歳:14万4520円

・75~79歳:14万7936円

・80~84歳:15万5635円

・85~89歳:16万2348円

・90歳以上:16万721円

平均年金月額は、本来の老齢年金受給開始年齢である65歳を境に増加しています。

なお、64歳までの金額は、繰上げ受給(※1)を選択した方や、特別支給の老齢厚生年金(※2)の主に定額部分のない、報酬比例部分のみを受給している人の金額となるため、65歳以上と比べると低めとなっています。

65歳以上の平均年金月額を見ると、国民年金のみを受給する場合は、いずれの年齢階級でも5万円台となりました。また、厚生年金を受給する場合は14万円台から16万円台で、国民年金のみを受給する場合よりも受給額は手厚い傾向となっています。

※1 繰上げ受給:老齢年金を「60歳から64歳」の間に前倒しして受給を始めること。繰上げた月数に応じて減額率が適用されます。

※2 特別支給の老齢厚生年金:昭和60年の法改正により厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際、受給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度。年齢など一定条件を満たす場合に受け取ることができます。

【国民年金と厚生年金】平均年金月額「男女の差は約6万円?」

60歳以上のすべての受給権者を対象とした国民年金と厚生年金の平均年金月額を見てみましょう。

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【一覧表】60歳~90歳代以上《国民年金・厚生年金》平均年金月額

国民年金

・〈全体〉5万7584円

・〈男性〉5万9965円

・〈女性〉5万5777円

厚生年金 ※国民年金部分を含む

・〈全体〉14万6429円

・〈男性〉16万6606円

・〈女性〉10万7200円

国民年金(老齢基礎年金)の平均年金月額を見てみると、全体・男女ともに5万円台でその差はわずかです。また、6万円台から7万円台がボリュームゾーンとなっています。

一方、会社員や公務員が加入する厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額には、明らかな男女差があります。

男性が16万円台なのに対し、女性の平均は10万円台で、約6万円もの差が生じています。また、ボリュームゾーンも男性が16万円~19万円前後なのに対し、女性は9万円~11万円前後です。

こうした厚生年金の男女差は、現役時代の年金加入期間や賃金水準の違いが反映された結果と言えるでしょう。

ただし、上記はあくまでも「全体の平均額」です。年金加入状況により、実際に受け取る年金額は一人ひとり異なります。

ご自身の年金見込み額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で把握しておきましょう。また、老齢年金から天引きされる税や社会保険料の存在も心得ておく必要があります。

【仮徴収と本徴収】2つのタイミングで保険料は計算される

公的年金からは、税金や社会保険料(健康保険料・介護保険料など)が天引き(特別徴収)されます。

「天引き額は一年間ずっと同じ」と思いがちですが、実は年度の途中で金額が変わるのが一般的です。

その理由は、年金から天引きされる住民税と社会保険料の計算が、二段階(仮徴収・本徴収)のしくみになっているためです。

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出所:厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」

ステップ1:年度前半は「仮徴収」

年金から天引きされる住民税や国民健康保険料などの社会保険料は、前年(2024年)の所得をもとに計算されます。しかし、その正式な年額が確定するのは毎年6月~7月頃です。

そのため、金額が確定していない年度前半(4月・6月・8月支給分の年金)では、まず前年度2月と同額が暫定的に天引きされます。これを「仮徴収」と呼びます。

ステップ2:年度後半は「本徴収」

前年の所得が確定し、その年度に支払うべき社会保険料の正式な年額が決まると、徴収方法が切り替わります。

まず、確定した年額から、仮徴収として支払った合計額を差し引きます。そして、残った金額を年度後半の支給回数で割って天引きします。これが「本徴収」です。

多くの場合、本徴収は10月支給分からですが、自治体によっては8月から始まることもあります。

前年の所得が大きく変わった人は要注意!

前年の所得が増加すると、秋以降の年金の手取り額が想定外に減ってしまうことがあるため注意が必要です。

例えば、以下のように前年の課税所得が増えるケースがこれにあたります。

・不動産の売却や退職金の受け取りで、一時的に大きな所得があった

・年金以外にパート収入や不動産収入などがあった

・配偶者控除などの各種控除の適用がなくなり、課税対象額が増えた

このような理由で前年の所得が増えた場合、年度後半の「本徴収額」が、前半の「仮徴収額」に比べて大幅に高くなることがあります。

その結果、秋以降に天引きされる金額が増え、年金の手取りが大幅に減ってしまう可能性もあるのです。ご自身の状況をあらかじめ確認しておくと安心です。

年金以外にも頼れる資金形成も

今回は年金制度の仕組みのおさらいから、現在年金を受給している60歳から90歳以上までの高齢者が毎月いくらぐらい年金を受け取っているかについて詳しく見てきました。

最近は、年金だけでは老後が不安だからNISAやiDeCoで資産運用して老後に備えるという話をテレビやネットでよく見かける方も多いと思います。実際、今回の記事で見てきたとおり今の高齢者が受け取っている年金の平均受給額はひと月20万円にも満たない金額です。

老後はそこまで生活費はかからないと言っても、社会保険料の負担が増えていたり物価高で生活コストが上がっている今の状況では月20万円にも満たない年金収入だけで老後の生活を支えるのは少々心もとないと感じる方も現役世代の方の中にはいらっしゃるでしょう。

そのため、老後への不安が大きいという方は今のうちから年金以外に頼れる老後資金の準備を始めましょう。NISAやiDeCoは毎月少額から積立投資ができますし、貯蓄型の保険商品の中にはあらかじめ将来受け取れる金額が確定しているものもあります。ご自身に合った金融商品で老後への備えを始めましょう。

参考資料

・厚生労働省「いっしょに検証!公的年金 公的年金の仕組み」

・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

・日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」

・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

・日本年金機構「国民年金保険料」

・日本年金機構「厚生年金保険の保険料」

・日本年金機構「年金振込通知書」

・日本年金機構「ねんきんネット」による年金支払いに関する通知書の確認

・厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」