次回の年金支給日は10月15日「厚生年金と国民年金」年金から天引きされるお金4つ&天引き額がわかる年金振込通知書とは
- 公的年金制度の仕組み
- 1階部分:国民年金(基礎年金)
- 2階部分:厚生年金(被用者年金)
- 年金から天引きされる4つのお金。税金や社会保険料とは?
- 国民健康保険料(税)
- 後期高齢者医療保険料
- 住民税および森林環境税
- 令和7年度税制改正で所得税の基礎控除額が改定へ
- 【年齢別】令和7(2025)年の公的年金における源泉徴収額の計算に用いる基礎的控除額」
- 2025年分の所得税「源泉徴収と還付イメージ」
- 「年金振込通知書」とは。記載内容を確認
- 「年金振込通知書」の主な記載内容
- 【年金一覧表】60歳~90歳以上の国民年金と厚生年金はいくら?
- 【一覧表】国民年金・厚生年金【60歳~90歳以上】5歳刻みの平均はいくら?
- 【年金一覧表】国民年金と厚生年金「全体の平均月額」はいくら?
年金から税金や社会保険料が天引きの対象となる人って?
次回の年金支給日は10月15日「厚生年金と国民年金」年金から天引きされるお金4つ&天引き額がわかる年金振込通知書とは
2カ月に一度の支給となる公的年金。次回は10月15日が支給日です。
老後の年金生活を考える際、知っておきたいのがまず「自身の年金見込み額」ですが、あわせて「天引き額」についても確認しておきたいところ。年金から税金や社会保険料は基本的に天引きされるので、残った金額で生活することになります。
また、年金額は毎年度改定されますし、天引きされる金額も自治体によって異なりますが主に8月や10月に変わる場合があります。
自身の年金振込額がわかるのが「年金振込通知書」です。
今回は公的年金の仕組みや平均受給額から、天引きされるものの種類や年金振込通知書について詳しくみていきましょう。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
公的年金制度の仕組み
現役時代の働き方や年金への加入状況は、将来受け取る年金額に直結します。
日本の公的年金制度は「2階建て」とよく表現されるように、その構造を理解することが重要です。
これは、全ての国民が加入する基礎部分の「国民年金」を1階部分とし、会社員や公務員などがさらに加入する「厚生年金」が2階部分として上乗せされる構造になっているためです。
それぞれの年金制度の基本を整理しましょう。
1階部分:国民年金(基礎年金)
・加入対象:原則として日本国内に住む20歳以上から60歳未満の人全員
・年金保険料:全員一律(※1)
・老後の受給額:40年間納付すると65歳以降に満額(※2)を受給できる
※1 国民年金保険料の月額:2025年度 1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2025年度 6万9308円
2階部分:厚生年金(被用者年金)
・加入対象:会社員や公務員、一定要件を満たすパート・アルバイトの人が国民年金に上乗せして加入
・年金保険料:報酬(賞与・給与)に応じて計算される(上限額あり※3)
・老後の受給額:国民年金に上乗せして受給。厚生年金部分は年金加入期間や納付済保険料により個人差が出る
※3 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算されます。
現役時代の働き方や立場によって、「国民年金のみに加入する人」と「国民年金と厚生年金の両方に加入する人」に分かれるため、老後に受け取る年金タイプもこの2種類となります。
年金から天引きされる4つのお金。税金や社会保険料とは?
社会保険料や税が、年金からの天引き(特別徴収)となる人には、市区町村から通知がおこなわれます。これらのお金が天引きとなる条件を、日本年金機構の「年金Q&A」を参考に見ていきます。
介護保険料
65歳以上の、老齢もしくは退職(※)、障害または死亡を支給事由とする年金を受給中で、年間の受給額が18万円以上の人
※老齢もしくは退職を事由とする年金:老齢基礎年金もしくは旧法制度による老齢年金・退職年金のこと
国民健康保険料(税)
65歳以上75歳未満(後期高齢者医療制度の該当者を除く)の、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給中で、年間の受給額が18万円以上の人
※国民健康保険料(税)と介護保険料の合計額が、各支払期に支払われる特別徴収対象年金額の2分の1を超える場合、国民健康保険料(税)は特別徴収の対象とはならない
後期高齢者医療保険料
75歳以上の人もしくは65歳以上75歳未満で後期高齢者医療制度に該当する人のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給中で、年間の受給額が18万円以上の人
※後期高齢者医療保険料と介護保険料の合計額が、各支払期に支払われる特別徴収対象年金額の2分の1を超える場合、後期高齢者医療保険料は特別徴収の対象とはならない
住民税および森林環境税
・65歳以上の、老齢もしくは退職を支給事由とする年金を受給中で、年間受給額が18万円以上となる人
なお、国民健康保険料(税)(または後期高齢者医療保険料)、住民税および森林環境税が特別徴収される前提条件として、「介護保険料が特別徴収されていること」が必要です。
また、老齢厚生年金は特別徴収の対象外です。また、年金を受ける権利に担保設定がされている場合には特別徴収はおこなれません。
さらに、「老齢年金と遺族年金」のように複数の年金を受給している場合、特別徴収が行われる年金の優先順位が定められており、どれか1つの年金からの特別徴収となります。
令和7年度税制改正で所得税の基礎控除額が改定へ
「令和7年度税制改正」により、所得税の基礎控除額が改定されました。
これにともない、公的年金の源泉徴収の対象とならない年金額が、現行の「158万円未満→205万円未満」に引き上げられました。(65歳未満は「現行の108万円未満→155万円未満」に引き上げ)
令和7年分の公的年金における源泉徴収額の計算に用いる基礎控除額は以下の通りです。
出所:日本年金機構「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
【年齢別】令和7(2025)年の公的年金における源泉徴収額の計算に用いる基礎的控除額」
65歳以上
・2025年12月の精算時
・2025年の各月の年金支払い時
65歳未満
・2025年12月の精算時
・2025年の各月の年金支払い時
2025年分の所得税「源泉徴収と還付イメージ」
出所:日本年金機構「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
この改正により、2025年12月の年金支払い時に「1年間の最終的な税額」と「それまでに源泉徴収された税額」との間で精算がおこなわれ、過払い分が生じていた場合は、その差額が還付されます。
「年金振込通知書」とは。記載内容を確認
自身の年金天引き額や実際に振り込まれる額が知りたい場合には、年金振込額や受取金融機関に変更があった場合に送られる「年金振込通知書」を確認しましょう。主に以下が年金振込通知書には記載されています。
年金から天引きされる税や社会保険料が記載される「年金振込通知書」
「年金振込通知書」の主な記載内容
・年金支払額:1回に支払われる年金額(控除前)のことです。
・介護保険料額:年金から特別徴収(天引き)される介護保険料額
・後期高齢者医療保険料、国民健康保険料(税):年金から特別徴収(天引き)される後期高齢者医療保険料または国民健康保険料
・所得税額および復興特別所得税額:年金支払額から社会保険料と各種控除額(扶養控除や障害者控除など)を差し引いた後の額に5.105%の税率を掛けた額(社会保険料とは、特別徴収された介護保険料、後期高齢者医療保険料または国民健康保険料(税)の合計額)
・個人住民税額および森林環境税額:年金から特別徴収(天引き)される個人住民税額および森林環境税額
・控除後振込額:年金支払額から社会保険料、所得税額および復興特別所得税額、個人住民税額および森林環境税額を差し引いた後の振込金額
年金見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できますが、年金は「額面通りにはもらえない」点は意外な盲点かもしれません。
【年金一覧表】60歳~90歳以上の国民年金と厚生年金はいくら?
現役時代の年金加入状況により、老後の年金水準は大きく変わります。 では、現在の老齢年金世代はどの程度の年金を受け取れているのでしょうか。
厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金と厚生年金(民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」)の「年齢階級別(5歳刻み)の平均額」と「全受給権者(60歳~90歳以上)の平均年金月額」を見ていきましょう。
※ 厚生年金の被保険者は厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。
【一覧表】国民年金・厚生年金【60歳~90歳以上】5歳刻みの平均はいくら?
出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
国民年金
・60~64歳:4万4836円
・65~69歳:5万9331円
・70~74歳:5万8421円
・75~79歳:5万7580円
・80~84歳:5万7045円
・85~89歳:5万7336円
・90歳以上:5万3621円
厚生年金
※国民年金部分を含む
・60~64歳:7万5945円
・65~69歳:14万7428円
・70~74歳:14万4520円
・75~79歳:14万7936円
・80~84歳:15万5635円
・85~89歳:16万2348円
・90歳以上:16万721円
老齢年金の受給開始年齢は、原則として65歳です。
64歳までは、繰上げ受給(※1)を選択した人や、特別支給の老齢厚生年金(※2)を受給中の人の平均年金月額です。そのため、国民年金・厚生年金ともに65歳以降の各年齢よりも低めとなっています。
65歳以上の平均年金月額は、国民年金(老齢基礎年金)のみの場合で5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)であれば14万円台~16万円台です。
現役時代の「加入」が2階建てであれば、老後の「受給」も2階建てです。
平均年金月額を単純に比較してみても、「国民年金のみ」と「厚生年金(国民年金を含む)」とでは3倍程度の差があります。
なお、公的年金の支給日は「偶数月の15日」です。15日が土日・祝日の場合、支給日は直前の平日に前倒しされます。
※1 繰上げ受給:老齢年金を「60歳から64歳」の間に前倒しして受給を始めること。繰上げた月数に応じて減額率が適用されます。
※2 特別支給の老齢厚生年金:昭和60年の法改正により厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際、受給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度。年齢など一定条件を満たす場合に受け取ることができます。
【年金一覧表】国民年金と厚生年金「全体の平均月額」はいくら?
「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、60歳~90歳以上のすべての受給権者について、年金額の平均や、個人差・男女差を見ていきます。
【一覧表】60歳~90歳代以上《国民年金・厚生年金》全体・男女別の平均年金月額
国民年金
・全体 5万7584円
・男性 5万9965円
・女性 5万5777円
厚生年金
※国民年金部分を含む
・全体 14万6429円
・男性 16万6606円
・女性 10万7200円
国民年金のみを受給する場合、全体、男女別ともに平均月額は5万円台です。ボリュームゾーンも男女ともに6万~7万円台です。
一方、厚生年金の場合、国民年金部分を含めた平均月額は全体で14万円台ですが、男性16万円台、女性は10万円台と男女差が顕著です。ボリュームゾーンも男性は16万~19万円前後、女性は9万~11万円前後と差があります。
また、グラフにあるように男女ともに1万円未満の低年金となる人から、20万円を超える高額受給となる人まで、幅広い分布となっています。
こうした男女差・個人差ともに、現役時代の年収や厚生年金加入期間などが反映された結果と言えます。
まとめにかえて
本記事では年金制度について詳しく見てきました。
年金生活となってからも、毎年度の年金額改定や天引き額について情報を確認するようにしましょう。
また制度の一部が改正される場合もありますので、年金などお金にまつわる情報のアンテナは高くしておくとよいでしょう。
現役世代の方も、早くから年金見込み額や天引きについて確認し、老後の生活費について考えることをおすすめします。具体的な金額や制度を知ることで、老後資金対策も具体的に考えやすくなるでしょう。
将来を見据えて、計画的に貯蓄を増やしていけるように早いタイミングから準備していきましょう。
参考資料
・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
・日本年金機構「国民年金保険料」
・厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
・日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
・日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「年金の繰上げ受給」
・日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
・日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
・日本年金機構「年金振込通知書」
・日本年金機構「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」