50代団地ひとり暮らし、「老後も使いやすいキッチン」。つり戸棚はやめてよかった
年齢を重ねても、過ごしやすいキッチンのつくり方を紹介します。築50年越えの団地をリノベーションして、ひとりで暮らしているきんのさん(56歳)は、ひとりで暮らす高齢の母親の介護経験から、「老いても使いやすいキッチン」を目指すようになったそう。そんなきんのさんの、今とこれからの生活に寄り添う「暮らしやすいキッチン」にするために見直したことを4つレポートしていただきました。
「老いても使いやすいキッチン」を目指して
【写真】使いやすいオープンな食器棚
1.収納場所・方法を見直す
片付ける前。食器をパンパンにつめこんでいた引き出し
団地に引っ越したのは50歳の頃。そのときにいちばん多かった荷物は「キッチン用品」でした。キッチン家電、食器、調理道具や雑貨など、とにかくものが多く、引っ越しのために多少処分してきたにもかかわらず、段ボール15箱分ぐらいはありました。
大量のキッチン用品を収納するために、リノベーション時につり戸棚を設置するか検討しましたがやめました。なぜなら、80代の母の家にあるキッチンのつり戸棚には使ってないものであふれていたから。たまに使おうと思っても踏み台が必要になり、転落しそうでヒヤヒヤ。使いづらい手の届かない高い場所の収納はない方がいいと感じました。
また、立ったまま手軽に取り出せる場所のものしか使わない母の姿を目の当たりにして、高齢になると足腰も弱くなるので、しゃがまないと取れない場所も使いづらいということに気がつきました。
片づけ後。食器を手放してあいたスペースには本を収納
その結果、収納場所を増やしたり工夫して多くのものを所持するのではなく、少ないものを上手に利用して暮らしていこうと決めました。
収納場所や方法は70代になっても使いやすいかどうかを考え、取り出しやすい場所に収まる分量に絞り、ひと目でわかる収納方法に徐々に変更しています。
2.食器の数を見直す
ひとり暮らしのなのに、食器の数が多く食器棚がパンパンでした。はみ出た食器はシステムキッチンの引き出しに入れていましたが、たくさんあっても使っているのはごくわずか。
食器を見直すのは大変そうに思えたけれど、じつは取りかかりやすいもののひとつでした。本当に好きなものやよく使うものだけに絞れば数は減らせます。
・最近使ったことがある
・気に入っている
どちらにも当てはまらないものは手放しました。トキメキもなく、使ってもいない食器を処分できない理由は「もったいない」「処分が面倒」「いつか使うかも」。でも、今後も使う可能性は少ないし、放置し続ければさらに処分が面倒になることは明らか。実際、母の不要な食器を片付けた際、数が多くて大変だったので、50代のうちに見直せてよかったと感じています。
食器の数を減らしたら、使いたいものがすぐ見つかり管理もラクになりました。さらに、よく使う食器は見せる収納に変更したことで、出し入れもしやすくなりました。
3.道具や調味料を見直す
調理道具も大量に所持していたので、キッチンはものであふれていました。
そこで、かさばるザル、ボール、お鍋など同じ用途のものは1つに絞り、あまり使わない包丁やフライパン、なくても困らない道具を手放すことで、収納を工夫しなくてもラクに収まりました。
特別な料理のときにしか使わない調味料や1人では余らせがちな〇〇の素なども、キッチンにものがあふれる原因になっていたので、「本当に必要か?」を考えて調味料を厳選。数を減らしたらムダなく使いきれるようになり、節約にもなりました。
また、調理道具や調味料を減らしたことで収納スペースに余裕ができ、フライパンや鍋は取り出しやすいようにコンロ近く、調味料は手に取りやすい場所に収納することができました。
4.直観的に動きやすい環境を整えておく
コンロ脇の見える収納
高齢になると確実に今よりもできないことが増えてきます。直感的に動きやすい環境を整えておくことは自分が使う場合だけでなく、訪問介護のサービスなどを受ける場合でも有効なため、「わかりやすさ」「片付けやすさ」も重要なポイントだと考えています。
最近は、生活感を消すために隠す収納にしていたキッチン周りを、見せる収納に変更しました。缶詰や乾物などの保存食材、食器や道具がひと目でわかるような収納に変更したことで使いやすく、在庫管理もラクになりました。
見せる収納は調理中でも取り出しやすく、片付けもラクなので出しっぱなしにならずスッキリした状態が保ちやすいのもメリットです。
50代、キッチンの見直しから老後の暮らしを考える
歳を重ねるごとにキッチンに立つのがしんどくなりつつあります。50代で調理器具や食器の収納場所や方法を見直し、キッチン用品を減らしたことで調理や片付けの時短になり、掃除や在庫管理がラクになりました。
今の暮らしのなかで必要なものを選択し、年齢を重ねてもラクに使えるキッチンを考えることは、この先の暮らしの満足度に大きく影響する気がしてなりません。気力と体力のあるうちに、キッチンの見直しから老後の暮らし方を考えてみるのもいいかもしれませんね。