【70歳代の現実】二人以上世帯の貯蓄額、みんなの平均はどれくらい? 厚生年金・国民年金の月額も一覧表で解説

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【70歳代の現実】二人以上世帯の貯蓄額、みんなの平均はどれくらい? 厚生年金・国民年金の月額も一覧表で解説

2025年6月、年金制度改正法が成立しました。

65歳以降も年金を受け取りながら働く世帯や、共働きの世帯が増えている中、年金を受け取りながら働くと年金額が削減されてしまったり、扶養内で働くには収入が一定金額以下でなければいけなかったり従来の年金制度ではこれらの多様性に対応できないのが課題でした。

今回の改正は、働き方や男女の差等に中立的な年金制度を構築することとともに、セカンドライフにおける生活の安定を図ることも目的となっております。

この記事では、今回の年金制度改正のポイントを紹介するとともに、現代のシニア世代が実際にどれくらい年金を受け取ってしているのか、またどれほど貯蓄をしているのかについても解説していきます。ご自身の将来資金準備を見直すきっかけになれば幸いです。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

年金制度改正の全体像を振り返る

今回の改正の全体像を見ておきましょう。

主な改正内容

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出所:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」

社会保険の加入対象の拡大

・中小企業において短時間で働く人などが、厚生年金や健康保険に加入し、年金増額などのメリットを受けられるようにする

在職老齢年金の見直し

・年金を受け取りながら働くシニアが、年金を減額されにくくなり、より多く働けるようにする

遺族年金の見直し

・遺族厚生年金の男女差を解消。子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする

保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

・月収が一定以上となる人が、賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の賃金に見合った年金を受給しやすくする

その他の見直し

・子どもの加算などの見直し、脱退一時金の見直し

・私的年金の見直し:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)加入年齢の上限引き上げなど

上記の改正内容からも、公的年金は「老後の受給額」だけの話ではなく、現役世代の働き方やキャリアプラン、人生設計とも深い関わりを持つことが分かります。

【70歳代・二人の老後】現代の高齢者の「平均貯蓄額」はいくらなのか

J-FLEC 金融経済教育推進機構が「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」を公表しています。

この調査結果をもとに、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)を確認していきましょう。

※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

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70歳代の貯蓄額

70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は1923万円ですが、これは一部の高額な貯蓄を持つ層が平均値を大きく引き上げているため、実態としてはもう少し低いでしょう。

中央値で見てみると、貯蓄額は800万円まで下がり、より多くの世帯がこのあたりの貯蓄額に集中していることが伺えます。

世帯ごとの貯蓄額分布は、以下のとおりです。

・金融資産非保有:20.8%

・100万円未満:5.4%

・100~200万円未満:4.9%

・200~300万円未満:3.4%

・300~400万円未満:3.7%

・400~500万円未満:2.3%

・500~700万円未満:4.9%

・700~1000万円未満:6.4%

・1000~1500万円未満:10.2%

・1500~2000万円未満:6.6%

・2000~3000万円未満:8.9%

・3000万円以上:19.0%

・無回答:3.5%

最も多いのは、金融資産を全く持たない「貯蓄ゼロ」の世帯で、全体の2割以上(20.8%)を占めています。一方で、3000万円以上の貯蓄を持つ世帯も約2割(19.0%)存在し、大きな開きがあることが分かります。

その他の貯蓄額の割合を見ていくと、100万円未満の世帯が5.4%、100~200万円未満が4.9%、200~300万円未満が3.4%と、比較的少ない貯蓄額の世帯も一定数存在します。

一方で、1000~1500万円未満の世帯が10.2%、2000~3000万円未満の世帯が8.9%など、まとまった貯蓄を持つ世帯も存在します。

続いて、2024年12月に公表された厚生労働省の一次資料をもとに、今のシニア世代がどの程度年金(厚生年金・国民年金)を受け取れているかを見ていきます。

厚生年金、シニア世代の平均月額を確認

ここからは、厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、厚生年金・国民年金の平均年金月額を確認しましょう。

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《2024年12月公表:最新版》厚生年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」

厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており(※)、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。

※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれています。

厚生年金「平均年金月額」

・〈全体〉平均年金月額:14万6429円

・〈男性〉平均年金月額:16万6606円

・〈女性〉平均年金月額:10万7200円

厚生年金「月額階級別受給権者」

・1万円未満:4万4420人

・1万円以上~2万円未満:1万4367人

・2万円以上~3万円未満:5万231人

・3万円以上~4万円未満:9万2746人

・4万円以上~5万円未満:9万8464人

・5万円以上~6万円未満:13万6190人

・6万円以上~7万円未満:37万5940人

・7万円以上~8万円未満:63万7624人

・8万円以上~9万円未満:87万3828人

・9万円以上~10万円未満:107万9767人

・10万円以上~11万円未満:112万6181人

・11万円以上~12万円未満:105万4333人

・12万円以上~13万円未満:95万7855人

・13万円以上~14万円未満:92万3629人

・14万円以上~15万円未満:94万5907人

・15万円以上~16万円未満:98万6257人

・16万円以上~17万円未満:102万6399人

・17万円以上~18万円未満:105万3851人

・18万円以上~19万円未満:102万2699人

・19万円以上~20万円未満:93万6884人

・20万円以上~21万円未満:80万1770人

・21万円以上~22万円未満:62万6732人

・22万円以上~23万円未満:43万6137人

・23万円以上~24万円未満:28万6572人

・24万円以上~25万円未満:18万9132人

・25万円以上~26万円未満:11万9942人

・26万円以上~27万円未満:7万1648人

・27万円以上~28万円未満:4万268人

・28万円以上~29万円未満:2万1012人

・29万円以上~30万円未満:9652人

・30万円以上~:1万4292人

国民年金、シニア世代の平均月額を確認

次は、厚生年金の加入期間がなかった人が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の月額についても見ていきます。

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《2024年12月公表:最新版》国民年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」

国民年金「平均年金月額」

・〈全体〉平均年金月額:5万7584円

・〈男性〉平均年金月額:5万9965円

・〈女性〉平均年金月額:5万5777円

国民年金「月額階級別受給権者」

・1万円未満:5万8811人

・1万円以上~2万円未満:24万5852人

・2万円以上~3万円未満:78万8047人

・3万円以上~4万円未満:236万5373人

・4万円以上~5万円未満:431万5062人

・5万円以上~6万円未満:743万2768人

・6万円以上~7万円未満:1597万6775人

・7万円以上~:227万3098人

「厚生年金の男性平均月額を受け取る夫」と「国民年金の女性平均月額を受け取る妻」の夫婦世帯の場合ですと、二人分の年金収入は月額22万2383円となります。

月額約22万円の年金収入で、シニア夫婦の生活費が賄えるのか、気になるところでしょう。

次章では、総務省の家計調査報告から、標準的なシニア夫婦世帯の家計収支に関するデータを見ていきます。

【65歳以上・無職世帯】夫婦の生活費は1ヵ月でどのくらい?

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65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)

収入:25万2818円

■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円

支出:28万6877円

■うち消費支出:25万6521円

・食料:7万6352円

・住居:1万6432円

・光熱・水道:2万1919円

・家具・家事用品:1万2265円

・被服及び履物:5590円

・保健医療:1万8383円

・交通・通信:2万7768円

・教育:0円

・教養娯楽:2万5377円

・その他の消費支出:5万2433円

■うち非消費支出:3万356円

・直接税:1万1162円

・社会保険料:1万9171円

家計収支

・ひと月の赤字:3万4058円

・エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%

・平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%

65歳以上の夫婦の家計状況を詳しく見ていくと、毎月の収入は25万2818円で、その大部分が公的年金などの社会保障給付金であることがわかります。多くの方にとって高齢期の主要な収入源であるのでしょう。

一方、支出の合計は28万6877円です。その内訳は、食費や住居費、光熱費など日々の生活に必要な消費支出が25万6521円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万356円となっています。

ここで注目すべきは、エンゲル係数が29.8%とやや高めである点です。

エンゲル係数は、家計の消費支出に占める食費の割合を示すもので、一般的にこの数値が高いほど生活水準が低い傾向にあるとされています。65歳以上の夫婦の場合、食費が生活費の中で比較的大きな割合を占めていますね。

さらに、平均消費性向が115.3%と100%を超えており、収入に対して支出が多い状態、つまり赤字になっているのです。具体的には、毎月3万4058円の赤字が発生し、この不足分は主にこれまで蓄えてきた貯蓄を取り崩すことで賄っていくことになるでしょう。

シニアになると、現役時代のような安定した収入が見込めなくなることが多いため、このような毎月の赤字は、長期的に見ると貯蓄残高を減少させてしまいます。

今からできる対策を

今回は、最近改正された年金制度についてと、現代のシニア世帯の支出について解説しました。年金だけでの生活は厳しく、貯蓄を切り崩していく必要がありそうです。

今回の年金制度改正で、65歳以降も年金を受け取りながら働きやすい環境となりました。老後まであまり時間のない方は、働く期間を延ばすことも視野にいれてみましょう。

しかし、長く働くことができるのも健康であってこそです。医療保険や介護保険についても、この機会に見直しをしてみると良いかもしれませんね。

参考資料

・J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」

・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

・総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」

・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」