いけず女将・大西里枝さん35歳「死去」何が寿命を…死因は不明

大西里枝さんがイメージキャラクターを務めた「いけずステッカー」の建前が描かれた表面

京都ならではのコミュニケーション文化を表現した「いけずステッカー」のイメージキャラクターを務めたことや、広く知られ、日本の伝統工芸品「京扇子」の老舗「大西常商店」の4代目社長の「いけず女将」こと、大西里枝さんが22日午前、京都市下京区の自宅で死去したことが23日に分かった。35歳だった。

大西里枝さんがイメージキャラクターを務めた「いけずステッカー」の本音が描かれた裏面

直前までいつも通り明るい様子で投稿

死因などの詳細は明らかにされていない。X(旧ツイッター)のフォロワー数が3万人を超えていた大西さんは、今月14日までいつも通りの明るい様子で投稿を行っていただけに、その早すぎる死に、ネット上でもショックが広がっている。大西さんに一体何があったのか。

X上に寄せられた主な反応は次の通り。

「なんでなんやろ?あんなにアクティブな陽キャだったのに、なんでなんだろう? 無理していたのか? 妬み嫉みがきつかったのか?」

「扇子店での菖蒲打ちの様子がガチ過ぎて、SNSでも話題を呼んでいたというのに… 大西さんがお亡くなりになり、上記のXアカウントが即刻削除されたのも気になる」

京都市の松井孝治市長

「京都は大切なひとを失った。 あのような才能と勇気を持ったひとはなかなか現れないだろう。 多方面に忙し過ぎたのだろうか。 御冥福をお祈りする。 合掌 悲しすぎる…」

死去が報じられた時点で削除されていたX投稿

大西さんのXアカウントは、死去が報じられた時点で削除されており、さまざまな憶測が広がっている。大西さんのアカウントを削除したのが誰なのか、削除した正確なタイミングは不明。Google検索にはキャッシュが残っているため、直近の投稿内容は閲覧できる。

大西さんの生前最後の14日の投稿では、「それにしてもこの女ノリノリである。盆ジョビ!!!!」というコメントと共に、10秒間の動画が公開。

13日には、「朝日新聞さんの四季つれづれ、連載2回目!お盆のあれこれ、ご覧くださいませ〜!」「たまには真面目な姿もご覧…ご覧いただけませんでしょうか…」「なぜ私はこんなに険しい顔で団子を捏ねてるのか。お迎え団子、ようこそお精霊様方!#お盆ガチ勢2025」「三条大橋付近、鴨川随一の鴨鴨ポイントです」などと投稿されていた。

残された大西さんの夫と、まだ小学生の9歳の息子の胸中を思うと、その悲しみは筆舌に尽くしがたいものがある。

京都文化の発信者「いけず女将」35歳の別れ

告別式は近親者で行い、喪主は夫、裕太氏が務める。後日、お別れの会が開かれる。大西常商店は24日、公式Facebook(フェイスブック)を更新し、社長の大西さんの訃報を次の通りに伝えた。

この度は既に一部の方にはお伝えしておりましたが、

京都新聞にも掲載がありました通り、大西常商店の4代目 代表取締役社長 大西里枝 が

逝去いたしました。

ここに生前賜りましたご厚情に、心より深く御礼申し上げます。

なお、葬儀につきましては家族の意向により近親者のみで執り行います。また、誠に勝手ながら供花・供物・香典等は固くご辞退申し上げます。

後日、皆様と「お別れの会」を催す予定でございます。詳細が決まり次第、改めてご案内申し上げます。

令和7年8月24日 大西家

突然の訃報を受けて、生前、大西さんと親交のあった関係者たちからは悲しみの声があふれている。

松井孝治・京都市長も哀しみのポスト

弔問に訪れた京都市の松井孝治市長(65)は23日、自身のXで、「全力投球がこの世の寿命を縮めたのかも知れません」と追悼した。

松井市長は大西さんに言及した過去のポストをいくつもリポストするなど、大西さんとの別れを惜しんでいる。松井市長コメントの内容は次の通り。

驚きの余り、言葉が見つかりません。

いま、お父上様にご挨拶して、お顔を拝ませていただきました。とても安らかな、うっすら笑みを浮かべられたような、寝顔のようなお顔でした。

また、後程、少しく思い出を呟きます。合掌。

大西里枝さんと初めてお会いしたのは去年の12月26日。短いお付き合いで、ご一緒したのは、片手の指から両手まではいきませんけれど、番組も一緒に作って、次の企画もあって…。

ほんまにいつも真面目で真剣で、全力投球のお方でした。お父様とも今日お話しましたけれど、その全力投球がこの世の寿命を縮めたのかも知れません。

まだあちらには行ったはらへんのかもしれないですけど、ご自身が↓に書かれていたように「ようきばったなぁ」とご先祖さんは迎えてくれはると思います。

しかし、いくらなんでも、早すぎます…。

大学の学長先生方とのサマーミーティングのあとは、あんまりにも残念だったので昨日Xでいくつか投稿しましたが、大西里枝さんの安らかなお顔を拝みに大西常商店を弔問させていただき、少し遅刻してしまいました

国会議員、仕事上のパートナーらに広がるショック

元経済産業省の官僚で、昨年10月の衆院選に自民党公認で出馬した、門ひろこ氏(45)は、大西さんの訃報を受けて、自身のXで、次の通りに悲痛な思いを記した。

沖縄尚学優勝、日大三準優勝、

のニュースに湧いた後に、京都の大西里枝さんの急逝に衝撃を受けました。

松井京都市長のXでしばし、拝見してましたが、菖蒲打ち動画、いけずシールなどの企画力、発信力など感嘆しており、老舗を継ぎ、京都の新しい可能性を広げておられ、活躍を応援しておりました。

安らかに眠られますよう、心よりお祈り申し上げます。

大西さんがイメージキャラクターを務めた「いけずステッカー」を制作する「ない株式会社」の代表、岡シャニカマ氏も自身のXで、大西さんの訃報を受けて、次の通りに悲痛な思いを伝えた。

裏垢とかで見てますか?

ホンマにありがとうございました。

おかげさまで人生変わりました。

大阪人らしくオーバーに言ってるんじゃなくて、本音です。

欲を言えばもっと色々やりたかったし、ご家族で十三来てくれるのも楽しみでした。

でも今はゆっくり休んでください。

お疲れ様でした。また。

大西さんは、「いけずステッカー」のほかにも、端午の節句の時期の京都の伝統行事「菖蒲打ち」を行う動画で今年5月、X上で話題になった。

菖蒲打ちとは、端午の節句に男の子たちが菖蒲の葉を編んで縄状にし、地面に勢いよくたたきつけて遊んだ日本の伝統的な風習のことで、この動画を投稿していた、お祭り評論家、山本哲也氏も、大西さんの訃報に、「今日、京都市下京区の老舗扇子店女将である大西里枝さんの訃報を見て驚きでしかない」と吐露した。

SNSやテレビ番組の出演などを通じて積極的に京都の文化を伝えてきた大西さんだが、実は元々、実は京都が好きではなかったという。

noteにつづっていた京都愛

大西さんは、京都市の公式noteの今年3月19日の記事の中では、子どもの頃は古い家を恥ずかしく思っていたが、「出産をきっかけにこの家に戻ってきた時に、ありがたいなって改めて感じたんです」と明かしている。

大西さんはこの記事の中で、「京都にはいろんな観光地もありますが、上辺だけではなくてもっと深い京都を知って欲しいんです」と発信活動へも思いも伝えていた。

「いけず女将」として知られた大西さんが伝えてきた、京都の「いけず文化」の「いけず」とは、婉曲的な言い方や遠回しな態度で本音を伝えるコミュニケーションのことを意味する。

大西さんは、ウェブマガジン「ほんのひととき」に寄せた2024年3月25日公開のnoteの記事の中では、「『ぶぶ漬けどうどすか」という小話に代表されるように、京都人=いけず=意地悪だというのは、広く知られているイメージだと思う」としつつ、「本来の『いけず」は相手を思い遣り、角が立たないように自分の意思を伝えるという京都ならではのコミュニケーション文化なのだ」と解説している。

こうした〝いけず文化〟を表現した「いけずステッカー」の公式サイトでは、「『ぶぶ漬けでもどうどすか?』と聞かれたら、それは『早く帰れ』という意味。そんな京都人のハイコンテクストすぎて府外の人では気づかないコミュニケーションを『いけず』と呼びます」と説明されている。

大西さんは立命館大学卒業後、NTT西日本に入社。同社を2016年に退職し、家業である大西常商店に入社し、2023年に代表取締役に就任した。

大西常商店では、業務のIT化を推進した。当時は、扇子職人とのやり取りがFAX行われていたり、使っていたパソコンが20年前のモデルだったといい、連絡はFAXからメールに変更。在庫管理はスマートフォンのアプリで効率化をした。

大西さんは、私生活では、NTT西日本時代の同僚の裕太氏と24歳の時に結婚。2024年8月2日配信の「AERA DIGITAL」の夫婦インタビューの記事の中では、9歳になる息子への思い、そして、「商売をしていると不安だし、心が不安定になることもあります。でも夫はいつも穏やかなので、帰宅して夫がいると嬉しいし落ち着きます」と夫への信頼を明かしていた。

(zakⅡ編集部・小野田聡)

■小野田聡(おのだ・さとし) ライター歴2年。産経デジタル新卒入社6年目。現在はzakⅡ編集部に在籍。エンタメ・スポーツ分野の執筆経験が豊富。1996年生まれ。X(旧ツイッター)のアカウントは@zakdesk。