亡き母が飼っていた犬から手紙が…主人公と“賢い雑種犬”の不思議な物語に「温かい気持ちになれた」の声【漫画】
主人公の母が生前に飼っていた雑種犬のマリ
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回はSF生活漫画『三角兄弟』(ヒーローズ)の作者・トキワセイイチさんに注目し、以前X(旧Twitter)に投稿された『ふみちゃんのマリ』をご紹介しよう。
同作は、今は亡き主人公の母・ふみちゃんの飼い犬である犬・マリが、突如として主人公の家に尋ねてくる様子を描いたショート漫画。Xにポストされると、3000以上の「いいね」が寄せられている。そこで作者のトキワさんに、同作を描いたきっかけについて話を伺った。
亡き母が飼っていた賢い犬・マリから一通の手紙が届き…

『ふみちゃんのマリ』(1/10)
ある日、母親であるふみちゃんが飼っていた犬のマリから主人公宛に一通の手紙が届く。「拝啓 時下ますますのご清栄のことお慶び申し上げます」という丁寧な定型文から始まり、「近々が家に伺う」「その際にふみちゃんの話を聞かせてほしい」「喋る犬だけど驚かないで」という旨が綴られていた。
そして、その後の夜のこと、訪問者が現れた際に主人公が扉を開けると、そこにはマリの姿が。主人公は幼い頃に母からマリの話を聞かされ、また写真でも見た記憶があり、そのまま家の中にマリを招き入れ…。
読者からは「読後が不思議な感覚。でも温かい気持ちになれた」「短い作品なのに心に強く残った」などの声が寄せられていた。
「伝えようのない記憶」をテーマに描かれた『ふみちゃんのマリ』

『ふみちゃんのマリ』(4/10)
――『ふみちゃんのマリ』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
「私が車で帰宅したことに気づいたマリは、家から駐車場まで一目散に走って迎えに来てくれるんや」
マンガにも描いていますが、母は子供の頃マリという犬を飼っていてことあるごとに、このエピソードを話してくれました。毎回このエピソードばかりなので「他にはないの?」とたずねると、「ほんまに賢い子でねえ」などと言って他の話は語らず、妙に笑顔になっていました。
母は飼い犬のマリについて、人に話すほどの特別なエピソードはそれほどなかったのかもしれません。けれど、特別なことはなくても、子供の頃の母はマリとともにありふれた日常を楽しく過ごしていたはずです。
誰かに話すほどではない日常。共に過ごしたありふれた記憶の断片。例えばそれは、走ってくる足音。毛並みや肉球の感触。粗相したときの目。振り返ったときの表情。記憶に残る大事なことも、誰かに話のしようがないことはある。そんな伝えようのない記憶をテーマにマンガを作れたらという気持ちからスタートしました。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
お話自体がファンタジー的なので、リアルな雰囲気は避けたいと思いました。絵本のような感覚で読んでもらうためのキャラクター作りと絵の書き込み具合に注意して作っていきました。入口は入りやすく、ストンと終わりが来て。でも、読後には妙な味わいが残っているような...。マンガを描く時に意識していることです。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。
母が自分のことを覚えてくれていたことを飼い犬のマリが理解する一連のシーンでしょうか。それをどんなセリフで表現するかが話の肝になると思いましたので、コマの構成には苦労しました。作中に出てくるマリのセリフはうまくいったと思っています。
――他に手がけている作品『三角兄弟』の連載を終えられていますが、完結後の心境もぜひお聞かせください。
『三角兄弟』は『ふみちゃんのマリ』を読んでくれた編集者が「この雰囲気を持った SFマンガが読みたい」とおっしゃってくれたのが、きっかけとなり始まりました。同じ世界線にある物語なので、『ふみちゃんのマリ』を楽しんでもらえた方にもぜひ読んでもらいたいです。
――読者へメッセージをお願いします。
短いページ数のマンガですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。また、7月29日に『三角兄弟』という単行本の紙の書籍が上下巻同時発売されたので、ぜひチェックしてみてください。電子書籍の発売日は8月1日になります。