“猫のしもべ”必見! 自由奔放な猫×ちょっぴり不憫な飼い主の日常あるある【漫画家インタビュー】

 猫の感情や気まぐれを、豊かな表情と細やかな仕草で描いた『ねことしもべ』。甘えん坊な猫と、振り回される”しもべ(飼い主)”とのやりとりは、ユーモラスでほっこりする。膝から降ろされたあとの切ない背中、外出前に限って構ってくる行動など、猫を飼う人ならば、一度は経験する日常の断片が丁寧に切り取られている。

 猫飼いには共感の連続、猫を飼っていない人にも「猫ってこんなに可愛くて面白いんだ」と感じさせる力を持った、笑顔になれる共感型日常エッセイだ。

 X(旧Twitter)では自身のエピソードと読者から寄せられたエピソードの両方を投稿。猫飼いからの共感の声はもちろん、ねことしもべが織りなす可愛らしい日常が読者を悶えさせ、10万を超える「いいね」を獲得することも。

 そんな『ねことしもべ』(@nekotoshimobe)の作者・hanaさんに、創作のきっかけやこだわりについて聞いた。

「悪びれなさ」や「どや顔」まで! 猫の豊かな感情を読み解く

ーー『ねことしもべ』を創作したきっかけや理由を教えてください。

 会社を辞めて実家に戻り、在宅ワークを始めたことで、猫と過ごす時間が一気に増えました。仕事中もごはん中も「遊んでー!」と催促され、ちょっかいを出したら軽く噛まれたり。気づけば生活の主導権は完全に猫に。

 ちょうどその頃、SNSで「猫のしもべ」という言葉を見かけるようになって、「私も猫のしもべかもしれない」と妙に納得しました。ある日、お腹の上に猫が乗って動けずにいたとき、「この暮らし、描いてみたら面白いかも」と思い立ちました。

 最初は、猫との日々のやりとりを家族に報告するくらいだったのですが、「せっかくなら世界中にも自慢したい!」という気持ちが芽生えて、SNSに投稿しはじめました。

ーー本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはありますか?

『ねことしもべ』では、猫の気分や感情が伝わるように見えることを大切にしています。実際の猫は、人間みたいに表情で語る生き物ではないのですが、鳴き方やしっぽの動き、まなざしや空気感で、「今こう思ってるんだろうな」と伝わってくることが多くて。

 そのニュアンスを漫画でわかりやすく伝えるために、あえてアニメっぽく表情を誇張して描いています。ぜひ、猫ってこんなに感情豊かなんだなと感じながら読んでもらえたら嬉しいです。

ーー特に気に入っているお話を教えてください。

 最近のお気に入りは、猫を膝から降ろしたら、トボトボ歩きながら切なそうな背中を見せてきたエピソードです。飼い主としては仕方のない行動なんですが、「ごめんね……」という罪悪感が毎回ついてきます。

 この話をSNSに投稿したとき、「あるある!」「うちの子も!」という共感の声をたくさんいただいて、私だけじゃないんだと、ちょっとホッとしました!(笑)

ーー作品には、作者ご自身の猫との体験と、読者から寄せられた日常の両方が描かれています。猫飼いとして「あるある!」と共感が多いのは、どんな場面ですか?

 共感が特に多いのは、「どの家庭にもある猫の習慣」にまつわる話です。寝る時間のエピソード、外出前に限って構ってくる猫、嘔吐にまつわる話など、猫飼いなら誰もが通る一コマは、読者の記憶も自然に引き出してくれます。

 その中でも、「猫が気を利かせて洗濯物やスリッパに吐くようになった」エピソードなど、ちょっと意外性のある話は特に盛り上がります。自分の体験談でも、読者からいただいた話でも、「これ、わかる人いる?」と軽く投げかける感覚で描いています。

ーー自由奔放で堂々とした猫と、その猫に振り回されるしもべ。ひとりと一匹の個性が表情やビジュアルからあふれ出ています。キャラクターの動きや仕草や表情を描くとき、どのような点にこだわっていますか?

 猫って、遠慮も悪気もなく、全力でネコハラしてきますよね。餌袋を食い破ったり、テーブルや画面を占領したり、寝てる人間にダイブしたり……。

 描くときは、その遠慮のなさや図々しさ、天然の容赦なさが伝わるように意識しています。表情も、ただ可愛いだけじゃなくて、「悪びれなさ」や「どや感」がにじむようにしています。

 逆に、そっと寄り添ってくれるときや、出勤前に猫を膝から降ろすときの後ろめたさなど、しもべの気持ちがふと表情に出るような場面も大切にしています。「あ〜わかる」「それな」と共感してもらえる空気が出るように、表情はいつも細かく描いています。

ーー今後も本作を通じて描きたいこと、伝えたいことはありますか。

 特別な事件がなくても、猫との日常には、思わず笑ってしまう瞬間や「あるある!」があふれています。『ねことしもべ』では、そうした猫との暮らしの面白さや、“たまにしんどいけど、それでも好き”という気持ちも、そっと描いていけたらと思っています。

ーー今後描いてみたいエピソードはありますか。

 現在の漫画では、甘えん坊な猫とのエピソードが中心ですが、実はもう1匹、ビビりでツンデレな猫もいます。表には出にくい感情や、甘え下手な子との距離感は、共感してくださる方も多いのではと思っており、今後はそういったエピソードも少しずつ描いていけたらと考えています。

 また、読者の方からいただく体験談の中には、「親子+猫」や「夫婦+猫」といった多様な関係があり、そうした構成を描く際には、“しもべ”以外の登場人物も登場させていきたいと考えています。関係の幅が広がることで、作品の自由度も増し、読んでくださる方にとっても、より自分ごととして楽しんでいただけるのではと思っています。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 SNSやイベントを通じて、猫との日常に共感していただける作品を、これからも地道に描き続けていきたいです。将来的には、より多くの方に楽しんでいただける形で作品を届けられるよう、日々取り組んでいきたいと考えています。

 日常の中に自然に溶け込むように、“猫との暮らしあるある”をお届けできたらうれしいです。

ーー作品を楽しみにしている読者の方々へメッセージをお願いします。

 いつも応援ありがとうございます。猫との暮らしには、「あるある」や「くすっと笑える瞬間」だけでなく、時にはモヤモヤしたり、誰にも言えない気持ちがこぼれることもあると思います。

『ねことしもべ』では、そうした感情をまるごと描くことで、「うちの子も一緒!」「なんか分かる……」と思ってもらえるような、共感や安堵のきっかけになれたらと思っています。疲れている日も、うまくいかない日も、クスッと笑って気が楽になるようなひとときをお届けできたら嬉しいです。

 これからも、猫としもべの“リアルでちょっと不条理な日常”を描いていきます。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

取材・文=ネゴト / fumi