丈右衛門だった男、新之助の連続退場にSNS激震【べらぼう】

横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。8月31日の第33回「打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)」では、「天明の打ちこわし」で江戸が揺れるなか、あまりにも思いがけない事件が連続で起こり、視聴者たちは一喜一憂。なかでもずっと重三郎を助けてきた「新さん」こと小田新之助の退場に、SNSは悲しみに包まれた。

■ 浄瑠璃仕立てで「御救い銀」を告知…第33回あらすじ, ■ 「悪意の権化」丈右衛門だった男が今週も煽動, ■ 蔦重に凶刃!激的な出来事が連チャンで…, ■ 新之助の死にSNS号泣、憔悴する蔦重, ■ 慰める歌麿、本作りのモチベーションへ

丈右衛門だった男、新之助の連続退場にSNS激震【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。重三郎(写真左、横浜流星)を庇う小田新之助(写真右、井之脇海)(C)NHK

■ 浄瑠璃仕立てで「御救い銀」を告知…第33回あらすじ

ついに江戸の各地で、打ちこわしが始まった。その先頭に立つ小田新之助(井之脇海)は町民たちが悪事を働かないよう統制するが、丈右衛門だった男(矢野聖人)は金をばらまいて、さらなる混乱を煽ろうとする。そこに重三郎が、田沼意次(渡辺謙)に依頼されたお救い銀配布の告知を、富本斎宮太夫(新浜レオン)の浄瑠璃仕立てで、にぎやかに実行。町人たちの関心はそちらに移り、あてが外れた丈右衛門は、重三郎に刃を向ける。

■ 浄瑠璃仕立てで「御救い銀」を告知…第33回あらすじ, ■ 「悪意の権化」丈右衛門だった男が今週も煽動, ■ 蔦重に凶刃!激的な出来事が連チャンで…, ■ 新之助の死にSNS号泣、憔悴する蔦重, ■ 慰める歌麿、本作りのモチベーションへ

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。浄瑠璃役者・富本斎宮太夫(写真中央、新浜レオン)の唄とともに、「読売」を配り歩く耕書堂の人びと(C)NHK

しかしそこに新之助が割って入り、さらに打ちこわしの鎮圧に来た長谷川平蔵宣以(中村隼人)が、丈右衛門を弓矢で倒した。新之助の傷は思ったよりも深かったが、重三郎を守れたことを喜び、「自分は世を明るくする男を守るために生まれてきた」と言って事切れた。墓前で憔悴する重三郎に、喜多川歌麿(染谷将太)は「消えていく命を紙の上に残すのが、俺のできるつぐない」と告げ、重三郎は新之助を思って号泣するのだった。

■ 「悪意の権化」丈右衛門だった男が今週も煽動

ついにはじまってしまった、田沼政権時代の米騒動の総仕上げとなる「天明の打ちこわし」。前回重三郎が新之助にアドバイスした通り、盗みや傷害などの罪に問われないよう、新之助たちは気を配りながら打ちこわしを敢行した。米を持ち帰ってしまうと強盗扱いとなってしまうため、米はすべて地面や川に捨てて、あくまでも「米屋とケンカして家屋を壊した」という建前をキープ。「捨てられた米がもったいない」という声もSNSでは多数上がっていたけど、重三郎が願っていた通りに打ちこわしは進められた。

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『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。打ちこわしで米を捨てる小田新之助(井之脇海)(C)NHK

しかしそんななか、わざとお金をバラまいて人々の心をまどわし、さらには取締に来た役人にケンカを売って、秩序を乱そうとする輩が。実際の打ちこわしでも、やはり窃盗・暴行は起こっていたそうだが、それを扇動したのはまたしても一橋治済(生田斗真)の手下、丈右衛門だった男! 治済サイドからしたら、打ちこわしの収集がつかなくなればなるほど意次へのダメージがでかいので、騒ぎはどんどん起こしておきたい・・・ということだろう。

■ 浄瑠璃仕立てで「御救い銀」を告知…第33回あらすじ, ■ 「悪意の権化」丈右衛門だった男が今週も煽動, ■ 蔦重に凶刃!激的な出来事が連チャンで…, ■ 新之助の死にSNS号泣、憔悴する蔦重, ■ 慰める歌麿、本作りのモチベーションへ

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。打ちこわしの最中、小判をばら撒く丈右衛門だった男(矢野聖人)(C)NHK

相変わらずの丈右衛門(仮)の煽り上級者ぶりに「出た、丈右衞門だった男のせいで、治安悪い暴動になってるじゃないかぁ」「他の誰かが一番手をやれば続く自分らの罪を感じなくて済むという集団心理の動かし方がうますぎる」「デモ活動における『ああ〜〜〜こういう奴が1人いるとみんなが連鎖反応的に・・・!!』を的確に起こしてくるのイヤすぎる!!」「相変わらず煽動者としての能力が大河史上一!!」「悪意の権化と化してきてるぞ丈右衛門、すげえ」などの、歯ぎしりするような言葉が出ていた。

■ 蔦重に凶刃!激的な出来事が連チャンで…

しかし彼の思惑は、重三郎が仕掛けた「銀が降る」パレードのために空振りしてしまう。邪魔された腹いせか、あるいは前回のドラマで重三郎にロックオンしたような視線を送っていた治済の指示なのか、重三郎にその凶刃が! しかし新之助がそれを止めた上に、丈右衛門の胸には矢が突き刺さる! この矢を放ったのは、御先手組として派遣された、我らが長谷川平蔵だった! この劇的な出来事の連チャンには、SNSでは大きな喝采の声が。

■ 浄瑠璃仕立てで「御救い銀」を告知…第33回あらすじ, ■ 「悪意の権化」丈右衛門だった男が今週も煽動, ■ 蔦重に凶刃!激的な出来事が連チャンで…, ■ 新之助の死にSNS号泣、憔悴する蔦重, ■ 慰める歌麿、本作りのモチベーションへ

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。重三郎(写真右、横浜流星)に刀を向ける丈右衛門だった男(写真左、矢野聖人)(C)NHK

「カモ平! いや、平蔵! かっこいい!!」「普通にキャーーっ!! って声が出た。爆イケすぎる」「江戸市中を描く時代劇で、弓で悪役を仕留めるのを初めて見たかも」「あの激ヤバサイコパスを退治してくれてありがとう」などの声が上がっていた一方で「こいつが死んでしまったら黒幕を炙り出せなくなってしまいました」「鬼平かっこいいけどそいつ即死させたのミスや」「鬼平の善意が結果的に口封じに?!」と、実は判断ミスだったのでは・・・という心配も。

■ 浄瑠璃仕立てで「御救い銀」を告知…第33回あらすじ, ■ 「悪意の権化」丈右衛門だった男が今週も煽動, ■ 蔦重に凶刃!激的な出来事が連チャンで…, ■ 新之助の死にSNS号泣、憔悴する蔦重, ■ 慰める歌麿、本作りのモチベーションへ

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。打ちこわしに駆けつけた御先手組の長谷川平蔵(写真中央、中村隼人)たち(C)NHK

丈右衛門(仮)はこれで退場の気配が濃厚だが、SNSでは「大河史上おそらく最恐のデマゴーグ&テロリスト&アジテーター」「徹底的に一橋治済の傀儡でしかない男だった」「最後まで本当の名前がわからなかった、なんなら本当に存在していたのだろうかなどと考えてしまいそうな気配のキャラ」「なんの言い訳も悲しい過去も見せずすんと消える、悪役として良き最期だった」と、ある意味潔い最後に感心するような言葉もあった。

■ 新之助の死にSNS号泣、憔悴する蔦重

手強い悪役の退場の見返りのように、重三郎はあまりにも大きなものを失ってしまった。そう、最初の細見作りから付き合ってもらい、いろんなサジェスチョンを与えてくれた新之助の死だ。不慮の死ではあるけれど、なんのために生きているかわからなかった男が、この世を明るくする人物を助けて死ぬという天命を果たしたことに満足して、微笑むような顔で死んでいったその描写に、SNSでは号泣の声が。

■ 浄瑠璃仕立てで「御救い銀」を告知…第33回あらすじ, ■ 「悪意の権化」丈右衛門だった男が今週も煽動, ■ 蔦重に凶刃!激的な出来事が連チャンで…, ■ 新之助の死にSNS号泣、憔悴する蔦重, ■ 慰める歌麿、本作りのモチベーションへ

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。刀で刺された小田新之助(写真左、井之脇海)を担ぐ重三郎(写真右、横浜流星)(C)NHK

「とうとう新さんまでふくと坊のところに逝ってしまった」「やだーーー!! どうしてよ新さん!!!」という声があふれた一方で「貧乏はしたけど好いた女と幸せな家庭を築いて、最後まで自分の正義を貫いた新さんは『幸せ』な人なんだろうな」「森下脚本大河でごく稀に描かれる、何のために生きてきたのかを自分の死によって確認できた幸運な登場人物だった」「短い一生だったけれど、悔いはないね。最高にいい男だったよ・・・」と、満足な最後だったはずと言い聞かせるようなコメントも見受けられた。

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『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。小田新之助の墓前で重三郎(写真左、横浜流星)を慰める絵師・喜多川歌麿(写真右、染谷将太)(C)NHK

重三郎にとっては、眼の前で友人が自分をかばって死んでしまうとか、いわゆる「サバイバーギルド」感がハンパないだろう。見たこともないほど憔悴しきって「ここに穴を掘って新さんを埋めた」という告白は落涙必至な一方、昨年の大河ドラマ『光る君へ』でも、主人公が友人の死体をみずから埋める描写があったため「大河のオリキャラ2年連続で主人公が掘った穴に埋められる」「囲碁や首桶に続いて親友の墓穴を掘るのが今後の大河のトレンドになるのかい?」という声も。

■ 慰める歌麿、本作りのモチベーションへ

そんな重三郎をすくい上げることができたのは、母とその情夫を死に追いやった罪に苛まれながら生きたけど、花や昆虫の精密画をひたすら描くことで、自分の画風とともに「命を描くこと」の意義を見つけた歌麿だった。平賀源内(安田顕)が去ったときの「本を出しつづけるのは、その人が生きた証を残すこと」という須原屋市兵衛(里見浩太朗)の言葉と同じぐらい、重三郎が本を作るモチベーションを、また一つ高めるきっかけとなったに違いない。

■ 浄瑠璃仕立てで「御救い銀」を告知…第33回あらすじ, ■ 「悪意の権化」丈右衛門だった男が今週も煽動, ■ 蔦重に凶刃!激的な出来事が連チャンで…, ■ 新之助の死にSNS号泣、憔悴する蔦重, ■ 慰める歌麿、本作りのモチベーションへ

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。絵師・喜多川歌麿(写真右、染谷将太)の胸で泣く重三郎(写真左、横浜流星)(C)NHK

この救済にはSNSも「打ち沈む蔦重に歌が見せた絵の、何と美しいこと・・・あの絵を見ただけで、もう涙がとめどなく流れた」「命を写す。すごいよ、歌ちゃん。一皮も二皮も剥けた。向こう側に行けたんだ」「人の命に関わる業を背負った歌じゃないとこの蔦重の語りの相手はできない。お前のターンだ歌!」「歌の慰めが、まるで重三がやりそうな言葉のかけ方なんだよなあ。もしかして蔦重の折り返しなのかなあ、という気がしている」などの感動と気付きの声があった。

歌麿が、そして視聴者が願ったように「いい人生だったと、心から思えて旅立ったと思う」と、新之助の最後の心境を語っていた井之脇。今や森下佳子脚本作品に欠かせない俳優となったが、今回もまた重三郎には見えない当時の社会現状を視聴者に伝えつつ、重三郎を影からサポートし、そして未来への課題を与えて去っていくという役割を見事に全うした。また次の森下作品でも出会えることを期待している。

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『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第33回より。打ちこわしに駆けつけた同心たちと対峙する丈右衛門だった男(写真中央、矢野聖人)(C)NHK

ただ一つ気になるのは、丈右衛門だった男。これで間違いなく退場だと思ったけど、演じる矢野聖人の「クランクアップの報告がない」という気になる指摘が・・・まさかの生存ルートがあるのか。それとも「治済の第二の傀儡」として、同じ顔の人間が暗躍をつづけるなんて展開もあるのか?! 矢野さんには大変の大変に申し訳ないが、できれば再登場はごめんこうむりたい・・・(笑)。

大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。9月7日の第34回「ありがた山とかたじけ茄子(なすび)」では、ついに松平定信(井上祐貴)による「寛政の改革」がスタート。狂歌師・大田南畝(桐谷健太)が絶筆を宣言する一方で、重三郎がある決意を固める姿が描かれる。

文/吉永美和子