【60歳代・70歳代】約3割は「日常生活費程度もまかなうのが難しい」《2カ月に一度》年金生活者支援給付金が支給される人とは?
年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」《支給要件・給付基準額・請求手続き》を確認
【60歳代・70歳代】約3割は「日常生活費程度もまかなうのが難しい」《2カ月に一度》年金生活者支援給付金が支給される人とは?
筆者はIFAとして、現在個人のお客様の将来資金のご相談を担当しているのですが、多くの皆様は老後に対して漠然とした不安を抱えている傾向にあります。
なぜ老後の不安を感じる方が増えているのでしょうか。
物価の上昇が続いており、生活費の負担が生じていることが一つ理由となっているように感じます。
定期的に給与やボーナスが支給される現役世代とは異なり、老後は収入が減少する傾向にあります。
恒久的な支援として、公的年金だけでは生活が困窮してしまう世帯へ向けた給付金の制度で「年金生活者支援給付金」があります。
この記事では「年金生活者支援給付金」の支給要件や、請求手続についてわかりやすく解説します。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【シニアの年金事情】厚生年金・国民年金の「平均月額」はいくら?
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均月額は国民年金(老齢基礎年金)で5万円台、厚生年金(国民年金部分も含む)で14万円台となっています。
国民年金・厚生年金《平均月額と個人差》
ただし、グラフが示すように、厚生年金で月25万円以上を受給している人がいる一方、国民年金・厚生年金ともに月2万円未満という低年金の人も存在し、その金額には大きな幅があります。
また、年金に加えて他の所得を合わせても一定水準に満たない場合には、「年金生活者支援給付金」を受け取れる可能性があることをご存じでしょうか。
次章では、この「年金生活者支援給付金」の受給条件や支給額について整理していきます。
2カ月に一度公的年金に上乗せ!「年金生活者支援給付金」とは?
「年金生活者支援給付金」は、年金収入やそのほかの所得が一定基準を下回る年金受給者を対象に、生活を補う目的で支給される制度で、年金の支給と同じく2カ月ごとに、受給額に上乗せする形で振り込まれます。
また、受け取っている年金の種類に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の3種類に区分され、それぞれで条件や支給額が定められています。
【年金生活者支援給付金】2025年度は2.7%の増額改定に
2025年度の年金生活者支援給付金は、前年度から2.7%の引き上げが行われました。
【2024年→2025年】年金生活者支援給付金の支給金額
【2025年度の年金生活者支援給付金の給付基準額】
・老齢年金生活者支援給付基準額(月額):5450円
・障害年金生活者支援給付金(月額):1級6813円・2級5450円
・遺族年金生活者支援給付金(月額):5450円
老齢年金生活者支援給付金については、基準額をもとに保険料納付済期間などに応じて実際の受給額が算定されます。
これらはいずれも「月額」の金額であり、支給時には2カ月分がまとめて年金に上乗せされ、満額受給できる場合、1回の支給でおよそ1万円、年間では約6万円となります。
また、「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2024年3月時点の平均受給月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4014円、障害年金生活者支援給付金が5555円、遺族年金生活者支援給付金が5057円となっています。
※2024年3月において認定されている平均給付金額です。
「年金生活者支援給付金」の対象となるのはどんな人?支給要件をチェック!
「年金生活者支援給付金」の支給要件
年金生活者支援給付金の支給条件について確認してみましょう。
まず「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」については、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受給している人で、前年の所得が472万1000円以下であることが要件となります。
この際、障害年金や遺族年金といった非課税の収入は所得判定に含まれず、また扶養親族の人数に応じて基準額は加算されます。
一方、「老齢年金生活者支援給付金」の条件はやや複雑であるため、次で詳しく整理していきます。
「老齢年金生活者支援給付金」の支給対象となるための要件を確認
「老齢年金生活者支援給付金」対象となるのはどんな人?
老齢年金生活者支援給付金を受け取るには、以下の支給要件をすべて満たしている必要があります。
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者
・同一世帯の全員が市町村民税非課税
・前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下
判定の際には、障害年金や遺族年金といった非課税収入は所得に含まれません。
さらに、基準額ギリギリで給付を受けられる人と、わずかに基準を超えて対象外となる人との間に不公平が生じないよう、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という仕組みも設けられています。
補足的老齢年金生活者支援給付金とは?
前年の年金収入とその他の所得を合算した額が、1956(昭和31)年4月2日以降生まれの人では78万9300円を超えて88万9300円以下、1956年4月1日以前生まれの人では78万7700円を超えて88万7700円以下の場合、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
この補足的給付については、所得が多くなるほど支給額が段階的に減額される仕組みとなっています。
申請しないともらえない!年金生活者支援給付金の「請求手続き」とは?
年金生活者支援給付金を受け取るには、公的年金と同様に請求手続きが必要です。
はがき(年金生活者支援給付金請求書)の記入例
65歳を迎える人には、誕生日の3か月前に送付される老齢基礎年金の請求書に給付金の請求書も同封されているため、必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書と一緒に提出しましょう。
すでに年金を受給している人で、所得が下がって新たに対象となった場合には、毎年9月1日以降に年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が順次送られ、記入後にポストに投函すれば申請が完了します。
また、繰上げ受給をしている人は、提出書類の様式が通常と異なります。
一度請求を行えば、支給要件を満たす限り2年目以降は追加手続きなしで継続受給が可能です。
判定は前年の所得をもとに行われ、毎年10月分(12月支給分)から1年間適用されます。
なお、給付額が改定される場合には「年金生活者支援給付金支給金額改定通知書」が、対象外となった場合には「年金生活者支援給付金不該当通知書」が送付されます。
【60歳代・70歳代】約3割は「日常生活費程度もまかなうのが難しい」
最後に、年金に対するシニア世代の意識について確認してみましょう。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が実施した「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」では、二人以上世帯のうち、60歳代で32.6%、70歳代で30.6%が「日常の生活費さえ賄うのが難しい」と回答しています。
「年金にゆとりがない」と感じる理由とは?
さらに、年金だけでは余裕がないと考える世帯が「不安を抱く理由」として挙げているのは、以下のような点です。
・物価上昇で支出が増えると見込んでいるから:60歳代63.3%、70歳代62.8%
・医療費の個人負担が増えるとみているから:60歳代28.3%、70歳代34.8%
・介護費の個人負担が増えるとみているから:60歳代18.1%、70歳代26.4
まとめ
ここまで、公的年金だけでは生活が困窮してしまう世帯が受け取れる「年金生活者支援給付金」の支給要件や、請求手続について解説しました。
老後の資金が足りない場合は、無理にお金を増やそうとするのではなく、このような国の制度をしっかり活用しましょう。
公的年金は、現役世代に支払っていた保険料が原資となっている大切な資産です。
増やすことももちろん大切ですが、減らさないことが何よりも重要です。
2025年度の公的年金や年金生活者支援給付金は、前年度よりも増額されています。
しかし実際のところ、物価の上昇には追い付いていません。
まだ老後まで時間のある方は、物価上昇に合わせてお金を増やすことが期待できる資産運用を取り入れるなど、各ご家庭に合った方法で資産形成を検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
・日本年金機構「年金生活者支援給付金制度について」
・日本年金機構「年金生活者支援給付金の概要」
・日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」
・厚生労働省「年金生活者支援給付金請求手続きのご案内(令和6年度)」
・金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」