「9月末で後期高齢者医療の2割負担への配慮措置が終了!」今後の対策で使える「高額療養費制度の《限度額適用認定証》に代わる新しい制度とは?」

負担軽減の配慮措置が終わると「今後の医療費はいくら増えるのか」高額療養費制度の活用法とあわせて解説します。

【後期高齢者医療】「2割負担」ができた背景, 対象者は約370万人...!75歳以上「2割負担の人」ってどんな人?, 負担増に備える!高額療養費制度と「限度額適用認定証」の最新情報, 「限度額適用認定証」はもう発行されないの?, もしものときのために「今」知っておくべきこと

「9月末で後期高齢者医療の2割負担への配慮措置が終了!」今後の対策で使える「高額療養費制度の《限度額適用認定証》に代わる新しい制度とは?」

日本の医療制度は年代や所得によって自己負担の割合が異なり、75歳以上は一般所得者などの「1割」と現役並み所得者の「3割」の間に《一定以上所得者》を対象とした「2割」区分ができてから約3年が経ちました。

【後期高齢者医療】「2割負担」ができた背景, 対象者は約370万人...!75歳以上「2割負担の人」ってどんな人?, 負担増に備える!高額療養費制度と「限度額適用認定証」の最新情報, 「限度額適用認定証」はもう発行されないの?, もしものときのために「今」知っておくべきこと

それぞれの年代の自己負担割合について

この新設された「2割」の対象者へ自己負担軽減のための「配慮措置」が今まであったのですが、2025年9月末にこの措置が終了することになります。今回は後期高齢者医療制度のしくみや「高額療養費制度」などをふまえて、医療費の自己負担増に備えるためのポイントを解説します。

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【後期高齢者医療】「2割負担」ができた背景

2022年に一定以上の所得がある方を対象に窓口の負担割合の見直しは行われたが「そもそも、なぜ見直されたのか」背景をみていきましょう。

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現役世代の負担がさらに大きくなることが懸念

団塊の世代が75歳以上になり始めたことで、後期高齢者の人口は令和3年度から7年度にかけて約300万人増加しました。これに伴う医療費の増加に対応するため、現役世代の負担軽減が喫緊の課題となりました。

見直しがなければ、令和7年度には現役世代からの支援金が約8.1兆円に達する見込みでした。そこで、医療制度の持続性を高めるため、一定以上の所得がある75歳以上の窓口負担を1割から2割に引き上げ、所得に応じた公平な負担と現役世代の負担軽減を図ったのです。

対象者は約370万人...!75歳以上「2割負担の人」ってどんな人?

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後期高齢者の窓口負担割合及び高額療養費自己負担限度額

2022年10月から75歳以上の医療費の自己負担に「2割区分」が新設されましたが、その対象である「一定以上所得者」とは以下の通りです。

「一定以上の所得」→課税所得が28万円以上145万円未満の方

年金収入+その他の合計所得金額で、

・単身世帯なら年収約200万円以上

・夫婦ふたり暮らし世帯なら年収約320万円以上

この「一定以上所得者」は、後期高齢者の約2割にあたる約370万人にのぼります。もともと1割だった医療費の窓口負担が2割へと引き上げられたため、外来医療については月3000円までにおさえる「配慮措置」が導入されてきました。

ただし、この配慮措置は2025年9月30日で終了予定です。その後は負担軽減がなくなる分、自己負担が急に増える可能性もあります。「2割負担」の配慮措置が終了すると、通院の多い方ほど家計への影響が大きくなるかもしれません。そこで活用したいのが、高額になった医療費の自己負担額を軽減してくれる「高額療養費制度」です。医療費が高額になったとしても「高額療養費制度」によって自己負担の上限は設けられています。

次でくわしく「高額療養費制度」についてみていきましょう。

負担増に備える!高額療養費制度と「限度額適用認定証」の最新情報

高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、その超えた分が健康保険から払い戻される制度です。「2割負担」の配慮措置が終了すると、通院の多い方ほど家計への影響が大きくなるかもしれません。そこで活用したいのが、高額になった医療費の自己負担額を軽減してくれる高額療養費制度ということになります。

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《70歳以上》自己負担の上限額

70歳以上の方も、この高額療養費制度の対象です。所得や年齢、入院・外来の別によって自己負担の上限額が決められており、例えば「一般」所得の方は、外来の負担上限が月1万8000円、入院と合わせると5万7600円となります。

「限度額適用認定証」はもう発行されないの?

これまでは、高額な医療費を支払う際に、事前に「限度額適用認定証」を申請・取得して医療機関の窓口に提示するのが一般的でした。これによって、窓口での支払いが自己負担の上限額までとなり、一時的な立て替えが不要になります。

しかし、国の制度移行に伴い、2024年12月2日以降、原則としてこの「限度額適用認定証」の新規発行は終了しました。「え?では、今後はどうすればいいの?」と心配になる方もいるかもしれません。

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マイナ保険証で「限度額適用認定証」の準備が不要に!

実は、今後はマイナ保険証を健康保険証として利用することで、高額療養費制度における「限度額適用認定証」の準備が不要になります。医療機関の窓口でマイナ保険証を提示し、情報提供に同意すれば、自己負担額が上限までとなり、窓口での支払いが軽減されます。

マイナ保険証をお持ちでない方や、何らかの理由で利用できない方には、お住まいの市区町村の窓口で申請することで、「限度額区分を記載した資格確認書」が交付されます。これを医療機関の窓口に提示すれば、これまでと同様に自己負担の上限額が適用されます。

ご自身の所得区分を確認し、もしもの時に備えて高額療養費制度を正しく理解しておくことが大切です。マイナ保険証の利用も視野に入れながら、今後の医療費負担に備えていくことをおすすめします。

もしものときのために「今」知っておくべきこと

今回は、後期高齢者医療制度の仕組みを踏まえ、医療費の自己負担増に備えるためのポイントを解説しました。2025年9月末に配慮措置が終了することで、75歳以上で「2割負担」の約370万人の医療費が増える可能性があります。

通院が多い方は、家計に大きな影響が出るかもしれません。しかし、高額な医療費には「高額療養費制度」という心強い味方があります。これまでは、事前に「限度額適用認定証」を申請する必要がありましたが、マイナ保険証を利用すれば、事前の手続きなしで窓口での支払いが自己負担の上限額までで済みます。これにより、高額な医療費の一時的な立て替えが不要となり、安心して医療を受けられます。また、マイナ保険証がない方も「資格確認書」で対応できます。

今のうちに、ご自身の所得区分や高額療養費制度について確認しておけば、安心して医療を受けられます。前もって準備をして、今後の負担増に備えていきましょう。

参考資料

・厚生労働省「医療費の自己負担について」

・厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

・厚生労働省「限度額適用認定証とは? 医療機関・薬局に提供される情報は?」

・東京都後期高齢者医療広域連合「自己負担割合が「2割」となる方への負担軽減(配慮措置)」

・政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」