無人戦闘機の実用化も近い? 欧州では数年内に実用化との予測も
開発が進む無人戦闘機

無人戦闘機の開発が進み、実用化も近づいてきているようだ。欧州を筆頭に各地でテストが行われて、期待できる成果を挙げている。
2度の試験飛行に成功

5月28日と6月3日、2度の試験飛行がバルト海上空で実施された。仏誌『Géo』によると飛行したのは「グリペンE」にAI「Centaur」を搭載したバージョンとされ、完全自律飛行で複雑な操作も実行できたという。
非常事態に備えて人間も搭乗していたが

『フィナンシャル・タイムズ』紙によると、同機には人間のパイロットも搭乗していたが、あくまでも非常事態に対処するためだったという。
人間の出番はなし?

だが、試験飛行中はほとんどAI「Centaur」が自律的に飛行を制御し、人間のパイロットによる操作は行われなかったという。仏誌『Capital』が報じている。
72時間で100万時間相当の飛行経験を獲得

「Centaur」を開発したのはドイツの軍事AI専門企業「Helsing」だ。同社の航空部門長ステファニー・リンゲマン氏によると、この無人戦闘機は72時間の飛行で100万時間相当の飛行経験を獲得したという。
人間のパイロットを大幅に超える経験

同氏いわく、非常に高レベルな戦闘機パイロットでも「キャリア全体で望みうるのは、最大でも5,000時間の飛行経験」だという。仏テックメディア「01.Net」が伝えている。まさにAIによって不可能が可能になったというわけだ。
「人間を超えるパフォーマンスを実現」

リンゲマン氏はこう語っている:「われわれは人間を超えるパフォーマンスを実現しました。未知の状況に対して、どんなパイロットよりも迅速に反応することが可能です」『Géo』誌が報じている。
パイロットをサポート

いまのところ、このAIは人間を完全に置き換えるのではなく、サポートすることが目指されている。サポートが想定されている領域は方位・距離測定や偵察、高高度での回避機動などだ。
複数の軍事企業と提携

「Helsing」社はすでに、フランスのルノー社やドイツのラインメタル社、スウェーデンのサーブ社(グリペンのメーカー)など複数の大企業と提携、欧州の軍事産業に欠かせない存在となりつつある。
NATOの守りを強化

Helsing社の目標は、昨今ロシアによる脅威が高まり続けているNATO側面の守りを、高度な技術を用いて強化することだ。同社はすでにスウェーデンのグリペンやドイツのユーロファイターなどにレーダーを納めている。
数年以内に配備可能か

無人戦闘機はいまはまだ試験段階だが、Helsing社は数年後には無人戦闘機システムを配備可能になるとみている。ロイター通信が伝えた。
長年の開発が結実

とはいえ、試験飛行までの道のりも平坦だったわけではない。無人戦闘機システムは同社が手がけたプロジェクトのなかでももっとも長い年月をかけたものなのだ。
徐々に対応力を増していく

「最初の一歩として、自動操縦システムは索敵や複雑な機動など特定の作戦行動だけを担う」と『Capital』誌は指摘している。そうすることで、パイロットの対応力も向上するというわけだ。
世界中が開発に進む

戦闘機の自動操縦システムという点で欧州はトップランナーだが、もちろん他の地域でも研究は進められている。ロシアによるウクライナ侵攻や米中間の緊張の高まりを受けて、軍備増強の機運が世界中で高まっているからだ。
人間のパイロットとの戦闘テストも

米国では国防高等研究計画局DARPAが、AI操縦のF-16と人間が操縦したF-16の戦闘テストを行っている。その結果、AIは互角以上の性能を発揮したという。『Géo』誌が報じている。
パラダイムシフトとなるか

同誌いわく、無人戦闘機システムは防空におけるパラダイムシフトとなり得るという。「アルゴリズム化された次世代の戦場において、センサーや武装を自律的に用いて連携行動が取れる」ことになるからだ。
次世代の戦場に不可欠

いまや、訓練のあり方や人とAIの役割分担、装備の維持管理の仕方、さらには交戦規定に至るまで見直すべき時が来ているのかもしれない。Helsing社は、2030年には無人戦闘機システムの大規模な納入を開始する予定としている。
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