三原じゅん子大臣が国会抜け出し行った美容医療

「三原じゅん子大臣が国会を抜け出し…」と週刊誌報道, 美容注射「失敗した」という事例も, 美しさを保つには継続的にクリニックに通う必要がある, なぜ私たちは美容施術を受けるのか, 美容施術は“非日常な行為”ではなくなりつつある

三原じゅん子氏(画像:自民党ホームページより)

芸能界から転身した政治家は、何かとメディアに取り上げられやすい。内閣府特命担当大臣を務める三原じゅん子氏も、まさにその一人だ。

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「三原じゅん子大臣が国会を抜け出し…」と週刊誌報道

通常国会最終盤を迎えた6月、ガソリン税の暫定税率に関する法案を巡って、参議院では土曜審議が開かれていた。

そんな重要な場面で、三原じゅん子氏が「国会を抜け出して美容クリニックに行っていた」と週刊誌報道され、世間から猛烈な批判を受けた。

記事によると、自民党は不測の事態に備え『禁足』を指示していたというが、三原じゅん子氏はこれを無視し、行きつけの美容クリニックに足を運んだというのだ。

(※)全議員を本会議に確実に出席させるため、各党が所属議員を国会周辺で待機させる措置のこと

国民の生活に直結する重要な議論が交わされている中、それをなおざりにして自身のアンチエイジングに精を出してしまった? なんとも信じがたいが、彼女がそこまでして受けたかった美容医療とはどんなものなのだろうか。

今回の件で実際に受けた美容施術の内容は定かではないが、過去には行きつけの美容クリニックで以下のような美容施術を受けていたようだ。

・ハイフ

・ヒアルロン酸注入

・ボツリヌストキシン注射(ボトックス)

これらはどれも手軽な部類の美容医療で、いわゆる“プチ整形”と呼ばれる施術だ。

ハイフは超音波を照射して筋膜など皮膚の深層を熱で引き締める施術で、リフトアップ効果がある。特に、たるみに悩む40代以上に人気だ。料金は1回3万〜10万円ほど。ちなみに、施術中は皮膚の奥の奥にアイロンを当てられるような独特の痛みがある。

ヒアルロン酸注入とボツリヌストキシン注射は、アンチエイジング世代だけでなく20〜30代の若い世代にも人気の施術だ。

ヒアルロン酸注入は特にほうれい線や目じりのしわなどに効果を発揮する。術後に通常通りの生活に戻れるようになるまでの回復期間を指す「ダウンタイム」においても、腫れやあざの出現がほとんどなく、注入成分は数カ月で分解・吸収され、最終的に体外に排出される。1回2万〜8万円と美容施術の中では手頃な価格も人気を集める要因だ。

ボツリヌストキシン注射とは、ボツリヌス菌由来のタンパク質を表情筋に注入して筋肉を麻痺させることで、エラや、眉間などのしわを軽減する施術である。菌を注射、筋肉を麻痺……と恐ろしい語句が並ぶ通り、結構怖い&痛い施術ではあるのだが、元の筋肉のつき方によっては、高い小顔効果やしわ改善効果が見込める。

他にも、咬筋を抑制することで歯ぎしりや食いしばりを軽減することができるとして、歯を守るために注射をする人もいる。芸能人、一般人、男女問わず非常に人気があり、おおよその料金は1回2万〜4万円だ。

美容注射「失敗した」という事例も

いずれもダウンタイムがほとんどなく、リスクが少ない施術だといわれているが、「失敗した」という事例もある。最近話題になった例を挙げると、モデルの梨花さん(52歳)が体験談を明かしている。

自身のYouTubeチャンネルで『【美容医療】失敗しました』というタイトルの動画を投稿し、赤裸々に語った内容によると、梨花さんが肌のハリを出す美容医療を受けようとしたところ、施術時に医師が厚意でボトックス注射を追加したという。その結果、思うように顔を動かせなくなったそうだ。

「顔が動かない。やっちまった……」と語る通り、表情筋の動きを制限するボトックスによって表情が不自然になるという現象はまれに起きる。

とはいえ、ボトックスやヒアルロン酸注入は失敗しても放っておけば数カ月でその効果が失われ、元の顔に戻る。「失敗した」と思うことはあっても、取り返しがつかない事態にまではならないというのも売りのひとつだ。

注意しなければいけないのは、本人がその不自然さに気づかなくなってしまうケース。梨花さんは自身で異変に気付いたようだが、美容医療を繰り返す人の中には、本人がそうした異変に目を向けなくなってしまうことも珍しくない。あなたの身の回りにも、表情が固まって能面みたいに見える……という人がいるかもしれない。

美しさを保つには継続的にクリニックに通う必要がある

これらはいずれも“一度やったら終わり”というものではなく、基本的には数カ月おきの定期ケアが必要とされる美容施術である。

美容施術に留まらず、脱毛や歯のホワイトニングなど、定期通いが必要な美容ケアは増えている。

一度始めたら、その美しさを保つために継続的にクリニックに通う必要があるのだ。これらの美容ケア経験者の中には、そうした“美への執着心”を理解できる人も多いのではないだろうか。

私の体感として、アンチエイジング世代の女性は特にその想いや熱意が強いように思える。

実際に私の周りでも、『北海道に転勤した後も、都内で契約済みの美肌ケア治療の残回数消化のために2カ月に1度帰京する30代後半の友人』や『格安美容施術を受けるために、3カ月に1度渡韓する40代の知人』などがいる。

三原じゅん子氏にもこの“美への執着心”があるのだろうか。国会中にもかかわらず己の定期美容ケアを優先してしまう心理の背景が見えてくる。

そうした美へのこだわりは表に立つ人たちだけのものではなくなってきている。前述した友人たちのように、一般人もそうした美への執着心を持っているのだ。

これらはデータでも示されている。

株式会社リクルートの『ホットペッパービューティーアカデミー』がおこなった『15~69歳男女の美容医療意識やクリニックの利用状況』によると、美容施術経験者は年々増加傾向にあり、2024年において過去最高値を記録した。

『3年以内に実施した施術』に関する調査では、男女ともに美肌治療や肌あれ治療など、基本的にメスを用いない美容施術が上位を占める結果に。

女性1位にランクインした『美肌・シミ・肝斑・くすみの治療』に関しては40〜50代の回答率が顕著に高く、アンチエイジング世代の多くの女性が美肌づくりに注力していることがうかがえる。

「三原じゅん子大臣が国会を抜け出し…」と週刊誌報道, 美容注射「失敗した」という事例も, 美しさを保つには継続的にクリニックに通う必要がある, なぜ私たちは美容施術を受けるのか, 美容施術は“非日常な行為”ではなくなりつつある

画像:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー:美容センサス2024年下期《美容医療編》資料編(詳細版)「15~69歳男女の美容医療意識やクリニックの利用状況」より筆者作成

※外部配信先では図表がうまく表示されない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください。

『美容医療の施術種類数』の調査では、20〜40代の女性の25%以上が「4種類以上の美容施術を経験したことがある」と回答した。

「三原じゅん子大臣が国会を抜け出し…」と週刊誌報道, 美容注射「失敗した」という事例も, 美しさを保つには継続的にクリニックに通う必要がある, なぜ私たちは美容施術を受けるのか, 美容施術は“非日常な行為”ではなくなりつつある

画像:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー:美容センサス2024年下期《美容医療編》資料編(詳細版)「15~69歳男女の美容医療意識やクリニックの利用状況」より筆者作成

男性においては15〜19歳で同様の回答率が最も高かったことからも、若年層で多様な美容施術を取り入れる人が多いことがうかがえる。

「三原じゅん子大臣が国会を抜け出し…」と週刊誌報道, 美容注射「失敗した」という事例も, 美しさを保つには継続的にクリニックに通う必要がある, なぜ私たちは美容施術を受けるのか, 美容施術は“非日常な行為”ではなくなりつつある

画像:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー:美容センサス2024年下期《美容医療編》資料編(詳細版)「15~69歳男女の美容医療意識やクリニックの利用状況」より筆者作成

もはや美容施術はあらゆる世代にとって、当たり前のスキンケアなのかもしれない。

なぜ私たちは美容施術を受けるのか

「三原じゅん子大臣が国会を抜け出し…」と週刊誌報道, 美容注射「失敗した」という事例も, 美しさを保つには継続的にクリニックに通う必要がある, なぜ私たちは美容施術を受けるのか, 美容施術は“非日常な行為”ではなくなりつつある

画像:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー:美容センサス2024年下期《美容医療編》資料編(詳細版)「15~69歳男女の美容医療意識やクリニックの利用状況」より筆者作成

『美容施術を受けた理由』として最も多く挙げられたのは「コンプレックスの解消」、次いで「自己満足」という結果だった。女性においては「手軽にできるようになったから」が前年からの増加幅が最も大きく、特に40代以上で高いスコアを示している。

目元の小ジワや肌のハリ不足が気になるようになってきたアラフォーの私にとって、この結果は非常に納得度の高いものである。

私と同年代の女性の多くは、きっと10代の頃よりスキンケアにかける費用が増大している。しかしそれに相反して、肌悩みは増え続けている。

私も目元のしわなんて10年前はほとんど気にしていなかったのに、最近では抜群の笑顔で写ったはずの自分の写真を見て、くしゃくしゃの目尻にギョッとすることがある。

投資と反比例するように増え続ける肌へのコンプレックスを手軽に解消できるのであれば、特段に秀でた美意識がなくとも、美容施術に踏み切ることは容易い。

本当に効いているのかよく分からない高額のアンチエイジング化粧水を使い続けるよりも、ヒアルロン酸注射やハイフを受けた方が、自身の納得のいく肌を手軽に手に入れられるのかもしれないのだから。

美容施術は“非日常な行為”ではなくなりつつある

かつて「プチ整形」という言葉は少しの悪意を内包し、批判的な文脈で用いられることが多かった。メス使用の有無を問わず、非難されることが多かった美容施術。しかし、今回参考にした調査結果からも分かるように、美容施術はもはや“非日常な行為”ではなくなりつつあるのだ。

実際に、近年では著名なモデルやインフルエンサーたちが、当たり前のように美容施術の体験談をSNSに投稿している。

冒頭で取り上げた三原じゅん子氏の一件をめぐって、SNSではさまざまな意見が飛び交っていた。なかには「美容整形なんて醜悪な奴だけがやる行為」「美容整形自体がクソ」など、美容施術そのものを批判する声も見られた。

しかし、今回の一件で問題視すべきはあくまで“議員としての三原じゅん子氏の振る舞い”であり、美容施術の存在意義を咎めるのは怒りの矛先がズレているように思う。

肌の年齢サインが気になる私も、今後は少しずつ美容施術にお世話になろうと考えている。自己満足の行為であることは重々承知していても、こうした一件をもって、美容施術を受けること自体を非難されてしまうと、少しばかり胸がつかえてしまう。

同じような感覚を覚えるのは、きっと私だけではないはずだ。

今後は美容施術という選択肢が、より多くの世代・より多様な人々に受け入れられる世の中になることを、切に願う。もちろん、美容を優先するあまり、自身の社会的責任を放棄することがあってはならないのだが。