ガソリン暫定税率廃止「11月1日開始」があやしい…与野党「財源の確保」で対立、4回目の協議はどうなる?

 ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止を巡り与野党の協議が続く中、野党側が目指す11月1日からの廃止に暗雲が垂れ込めている。野党側が提案する「廃止までに、現行のガソリン補助金を段階的に引き上げる」方法を従来通り実施する場合、今月20日頃には1回目の引き上げが必要だった。両者の協議は廃止に伴う代替財源の確保などを巡り溝が深く、28日の4回目協議で進展するかが焦点になる。

◆補助金の段階引き上げなら8月20日が「期限」

 暫定税率廃止による急激な価格変動を受けた買い控えなどを避けるため、野党側は1リットル当たり10円の定額補助を段階的に拡充する案を示してきた。3週間ごとに5円ずつ引き上げ、暫定税率と同じ25.1円に達してから廃止まで1カ月の猶予を設ける構想だ。

㊧立憲民主党の重徳和彦氏㊨自民党の宮沢洋一税調会長(いずれも資料写真)

 廃止までには単純計算で最低72日の猶予が必要で、8月20日が初回引き上げの目安だった。立憲民主党の重徳和彦政調会長は、実際の引き上げ間隔は「政府と一緒に考える」とするものの、従来の構想では11月からの廃止は厳しい状況にある。

 与野党協議では、暫定税率廃止で生じる年間1兆円規模の税収減をどう補うか、財源論が最大の争点となっている。自民党の宮沢洋一税調会長は21日の協議後も「しっかりした税財源を充てなければならない」と苦言。一方、税収の上振れ分などの活用を訴えてきた野党側は「政府与党は『恒久財源じゃない』と逃げている」と非難した。

◆立民・重徳氏「スピードアップしないと」

 また、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)が2026年度にも3兆6000億円の黒字に転じるとの政府試算を受け、野党側は「PBも含め活用すべき」と主張。対する与党は「2025年度補正予算を含まない上、国はかなりの赤字。地方のプラスも基本的には東京都のもの」と反論し、28日の協議で詳しく説明するとした。

(写真はイメージ)

 与野党協議がまとまったとしても、すぐに補助金の引き上げ開始とはいかない。経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「(与野党間で)決まった内容に沿って進めていくが、急激な変化は買い控えにつながる」と説明。業界団体と擦り合わせた上で、一定の周知期間が必要という。

 21日の協議後、記者団から暫定税率廃止が11月に間に合うかを問われた重徳氏は「(与党にも)スピードアップしないといけないと申し上げた」と答えた。与野党の攻防に折り合いがつくか、注目される。(高田みのり)

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