“110キロの女性”に「人生を大きく変えた出来事」を聞いた。以前は「ネガティブで内向的な性格だった」
突如現れた「#デカ女」ブーム。SNS上で高い注目度を誇る高身長女性たちが、さまざまなメディアで取り上げられたのは記憶に新しい。だが、“デカさ”の点では「#みけぽ」に代表されるぽっちゃり女性たちの存在も忘れてはいけないだろう。
ぽっちゃり体型を自身の個性・武器として活躍する女性インフルエンサーは少なくないが、3桁体重の女性たちは日常生活でどんな「あるある」や「悩み」があるのか。
今回は、肥満落下系堕天使アイドル「びっくえんじぇる」のマヨネーズ担当・「えりぴよ」こと多田えりさん(169センチ、110キロ ※取材時)をインタビュー。アイドルデビューと100キロ超えの経緯などを語ってもらった。
えりぴよさん
◆かつては“チャーシュー系アイドル”でソロ活動も
――さっそくなんですけど「びっくえんじぇる」って、いったい何者なんですか?
えりぴよ:8人組、「総体重752キロ」のおデブアイドルです。もともとは天使でしたが、美味しいものを食べ過ぎて空からおっこちた堕天使――という世界観でやらせていただいています。
――またいつか天界に戻りたいですか?
えりぴよ:人間界もなかなかの楽園で難しそうです(笑)。
――そんな話もありつつ、「びっくえんじぇる」の初期メンバーとして2018年にデビューする前、えりぴよさんはどんな活動やお仕事をしていたんでしょうか。
えりぴよ:実は“チャーシュー系アイドル”として、えりぴよ名義でソロアイドル活動していました。「びっくえんじぇる」プロデューサーのみっちゃん(大橋ミチ子さん)が、もともと所属していたぽっちゃり系アイドルグループのオーディションも受けたこともあるんですけど、そこは最終審査で落ちてしまって。
◆以前は「ネガティブで内向的な性格」
――では、アイドル活動を始める前は何を?
えりぴよ:フリーターです。高校卒業後、動物関係の専門学校に進学したんですが、死ぬまでに一度くらいメイド服を着たいと思い、ぽっちゃりメイド喫茶で働いていました。ずっと憧れだったアイドル活動を始めるようになったのは、ぽっちゃりメイド喫茶との出会いが直接のきっかけでした。
小・中学校の頃は体型のせいでからかわれることもあり、アイドル活動を始める前はネガティブで内向的な性格で、自己肯定感も低かったです。
――今の明るいえりぴよさんからは想像できないですけどね。ご家族も体は大きいほうですか?
えりぴよ:兄が2人いて、少しぽっちゃりしていますが、私ほどではないです。未熟児で生まれたんですが、そこから猛烈な勢いで栄養を蓄え幼稚園の頃にはすでにぽっちゃりしていました。確か小6で163センチ85キロとかはありましたね。びっくりするくらい動けるデブで、運動神経は良かったです。
◆ぶつかり合いで負け知らずだったバスケ部時代
標準体型に近かったころ
――ずっとバスケ部だったそうですね。
えりぴよ:私の人生で普通体型に最も近かったのが中3の頃で、身長165センチ63キロでした。高校で少し太って70キロ前後、バスケ部を引退して高校卒業したきは80キロぐらいです。ポジションはセンターで、ぶつかり合いで負けたことはないです。
――運動部だと、お腹も減ったことでしょう。
えりぴよ:朝から白米にマヨネーズかけて食べていました。あと、兄が某ファストフード店で働いていて、よく余り物を持ち帰ってきてくれていたこともあり、朝から揚げ物とかもよく食べていましたね。それが普通の朝食だと思っていて、中学の頃、朝食をヨーグルトで済ませる女子がいることを知ったときは腰抜かしました。
――普通の家では朝から揚げ物は出ないんだと(笑)。
えりぴよ:しかも大皿に盛られるので、いつも男兄弟と競争になるんです。チーズやらマヨネーズやらたっぷりかけて出されるんですが、兄に負けじと私も食べていましたね。思春期の頃は揶揄われないように、学校で皆と食べるペースを合わせて、おかわりとかもしていなかったですが、その分、家ではつまみ食いもおかわりもよくしていました。
◆痩せたい気持ちもあったが、食欲には勝てず
――胃腸が丈夫で何よりです。
えりぴよ:本当にここまで太れるのは絶対に内臓が強いからです。食の執着は強いほうで、バイトも飲食店ばかりやっていました。
――ヤケ食いのような食べ方はあまりしてこなかったですか?
えりぴよ:食べると幸せだから、という純粋な欲求に突き動かされてきた気がしますね。ずっとアイドルや芸能活動に興味があり、痩せたい気持ちもあったんですが、食欲には勝てなかったです。
ちなみにバスケで膝を壊したこととかもないんですよ。持論ですけど、小さい頃から太っていたから骨も強いのかなと。
――この手の取材をすると、体育の時間が一番ツラかったという話も多いので、えりぴよさんは珍しいタイプかもしれないです。
えりぴよ:体が硬くてお肉が邪魔だったので機械体操は苦手でしたが、ドッジボールは最強でした。体育館の端から端までバスケットボール投げられるくらい、肩の力だけはバカすごく強かったです。
◆ぽっちゃりメイド喫茶と出会い、人生が変わった
メイド服を着てみたく、ぽっちゃりメイド喫茶に入店
――ぽっちゃりメイド喫茶と出会い、体型のコンプレックスや痩せたいという気持ちは完全に吹っ切れたんですか?
えりぴよ:もともと、太ってること=ダメだとネガティブに生きてきた私にとって、ぽっちゃりメイド喫茶との出会いは衝撃的で、人生が変わる瞬間でした。
――なるほど。
えりぴよ:デブだし可愛くないから無理だと諦めていたアイドルになる夢が、ぽっちゃりメイド喫茶との出会いで、「自分にしかなれないオンリーワンのアイドルになりたい! この体型で大人気アイドルになりたい!」という気持ちが芽生えたんです。
◆3桁に到達したのは「いつの間に…」
えりぴよ:アイドル活動を通して、私みたいに体型や自分に対してネガティブになり傷つく方を減らしたいし、「おデブだってアイドルになれるんだ」と誰かの人生に勇気を与えられる存在になりたいというのが1番の想いです
――公称プロフィールでは現在110キロとのことなんですが、3桁に到達したのはいつ頃ですか?
えりぴよ:ちょっと覚えてないんですが、コロナ禍が落ち着いた頃、2021年くらいだったと思います。日によって108キロ台のときもあるんですけど、まあ誤差の範囲ですね。
――いつの間にか超えていたんですか?
えりぴよ:気づいたら「あっ、超えちゃった〜」みたいな(笑)。ずっと94キロくらいでウロウロしていて。そこからポンッ!と。
――案外、そんなものなんですね(笑)。
えりぴよ:基本的に何キロでもいいくらいの感覚です(笑)。私自身は90キロ台がベストのビジュだと思っているので、少し痩せたい気持ちも多少ありますが、世の女性が言う「痩せたい」とは、また少し次元が違う気がいたします。
――逆に言うと100キロ超えや、グループで最重量の座を目指していたわけでもないと。
えりぴよ:私は顔にお肉がたくさんつくタイプではないんですが、やっぱり100キロ超えると顔がめちゃくちゃ丸くなったので。個人的には90キロ台ぐらいが、ちょうど良い丸みと太さで、かつ動きやすいと思っています。
<取材・文/伊藤綾>
【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii