10月の年金支給日に「年金生活者支援給付金」がもらえるのはどんな人?《対象者・金額・申請方法》まで丁寧に解説
- 年金生活者支援給付金は〈老齢・障害・遺族〉の3種類
- 【2025年度は増額】支給金額と支給要件
- 「老齢年金生活者支援給付金」の支給金額・支給要件
- 「障害年金生活者支援給付金」の支給金額・支給要件
- 「遺族年金生活者支援給付金」の支給金額・支給要件
- いまどきシニアの「厚生年金・国民年金」の平均受給額はいくらか
- 《厚生年金の平均年金月額》
- 《国民年金の平均年金月額》
- 対象となる人にはお知らせが届く!年金生活者支援給付金の「請求方法」
- すでに年金を受給中の人の場合
- 請求後いつから給付金の支給対象になる?
- 年金制度改正、具体的にどこが変わるの?見直しポイントを解説
- 年金制度改正の全体像《主な見直しポイント》
- ご自身の老後生活をイメージしてみよう
【9月に「請求書」送付】新たに年金生活者支援給付金の対象となる人にはお知らせが届きます
10月の年金支給日に「年金生活者支援給付金」がもらえるのはどんな人?《対象者・金額・申請方法》まで丁寧に解説
物価上昇や生活費の負担増が続くなか、年金だけで暮らす方にとって家計のやりくりはますます重要な課題となっています。
そうした状況を支える制度のひとつが「年金生活者支援給付金」です。基礎年金を受給している人のうち、一定の所得要件を満たす方が対象となり、通常の年金に上乗せして支給されます。
給付額は基準額に応じて決まり、請求が必要である点も大切なポイントです。さらに「いつから支給が始まるのか」という点は実際の生活設計に直結するでしょう。
本記事では、年金生活者支援給付金の概要や金額、対象となる要件をわかりやすく整理し、請求手続きを行った後の支給開始時期についても詳しく解説します。生活の支えとなる制度を正しく理解し、安心につなげていきましょう。
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年金生活者支援給付金は〈老齢・障害・遺族〉の3種類
出所:厚生労働省「「年金生活者支援給付金制度」について」
「年金生活者支援給付金」は、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準に満たない人を対象に、公的年金に上乗せして支給される給付金です。
2019年に始まった比較的新しい制度なので、聞きなれないという人もいるでしょう。
「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の3種類があり、それぞれ支給要件が設けられています。
また、給付金額は物価の動きを踏まえ、年度ごとに改定がおこなわれます。
【2025年度は増額】支給金額と支給要件
出所:日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれに支給要件と支給金額が定められています。
一つ一つ確認していきましょう。
「老齢年金生活者支援給付金」の支給金額・支給要件
2025年度支給金額
・老齢年金生活者支援給付金(基準額):5450円(月額)
※実際の給付金額は、この基準額をもとに保険料納付済期間などに基づいて計算されます。
支給要件
※下記すべてを満たす必要があります。
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者
・同一世帯の全員が市町村民税非課税
・前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
「障害年金生活者支援給付金」の支給金額・支給要件
2025年度支給金額
・障害年金生活者支援給付金:1級6813円・2級5450円(月額)
支給要件
※下記すべてを満たす必要があります。
・障害基礎年金の受給者である
・前年の所得(※1)が472万1000円以下である(※2)
※1 障害年金等の非課税収入は除く
※2 扶養親族等の数に応じて増減される
「遺族年金生活者支援給付金」の支給金額・支給要件
2025年度支給金額
・遺族年金生活者支援給付金:5450円(月額)
※2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合、この基準額を子の数で割った金額がそれぞれに支払われます。
支給要件
※下記すべてを満たす必要があります。
・遺族基礎年金の受給者である
・前年の所得(※1)が472万1000円以下である(※2)
※1 遺族年金等の非課税収入は除く
※2 扶養親族等の数に応じて増減される
3種類の年金生活者支援給付金は、いずれも、前年度の本人の所得が判定基準に含まれています。老齢年金生活者支援給付金は、受給者本人の年齢と、世帯全体の経済状況が加わります。
いまどきシニアの「厚生年金・国民年金」の平均受給額はいくらか
老齢年金の受給額は、現役時代の年金加入状況により大きな個人差が出ます。
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、今のシニア世代がどの程度老齢年金を受け取れているかを確認しましょう。個人差・男女差に着目してみてください。
出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
《厚生年金の平均年金月額》
〈全体〉平均年金月額:14万6429円
・〈男性〉平均年金月額:16万6606円
・〈女性〉平均年金月額:10万7200円
《国民年金の平均年金月額》
〈全体〉平均年金月額:5万7584円
・〈男性〉平均年金月額:5万9965円
・〈女性〉平均年金月額:5万5777円
国民年金のみを受け取る場合は男女ともに平均年金月額は5万円台です。
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は、全体で14万円。しかし、男女別で見ると男性が16万円台なのに対し女性は10万円台と、大きな開きがあることがわかります。
女性の年金が男性より低い理由としては、出産や育児などでキャリアが中断され、厚生年金の加入期間が短くなりやすいことなどが挙げられます。
厚生年金の年金額は、加入期間と納付済保険料で決まるため、年金額には大きな個人差があります。厚生年金の受給権者の中には、月額2万円未満となる人から月額30万円を超える人もいます。
国民年金よりも厚生年金の方が年金額が手厚い傾向にありますが、一人ひとりの働き方や加入状況により、受給額は大きく変わります。
厚生年金を受け取る人の中でも、年金生活者支援給付金の支給対象となる可能性がある人もいるでしょう。
対象となる人にはお知らせが届く!年金生活者支援給付金の「請求方法」
「年金生活者支援給付金」は、支給要件を満たすと自動で年金に上乗せされるわけではありません。受け取るためには請求手続きが必要です。対象となる人には、お知らせを兼ねた請求書が届きます。
すでに年金を受給中の人の場合
すでに年金を受給している人が、所得の変動により「年金生活者支援給付金」の支給対象となった場合、毎年9月の第1営業日から順次、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。
出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
請求書が届いたら、必要事項を記載して、切手を貼付の上ポストに投函しましょう。
また、これから65歳を迎える人には、誕生日の3カ月前に、年金受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封されて年金生活者支援給付金請求書が届きます。
同封されている給付金請求書に必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降、年金事務所に年金の請求書といっしょに提出しましょう。なお、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。
請求後いつから給付金の支給対象になる?
「年金生活者支援給付金」の支給対象となるのは、原則として「手続きをおこなった翌月分」からです。
ただし、新規に基礎年金の受給権を得た人の場合は異なるため注意しましょう。
受給権を得た日(※)から3カ月以内に「年金生活者支援給付金」の認定請求の手続きをおこなうことで、年金の受給権を得た日に「年金生活者支援給付金」の認定請求の手続きもおこなったものとみなされるため、さかのぼって支払われます。
受給権を得た日から3カ月を過ぎた場合は、手続きをおこなった翌月分から支給対象となります。もらいそびれないためにも、申請書類は早めに提出しましょう。
※老齢基礎年金の繰上げ受給中の人は、65歳到達の日。老齢基礎年金の繰下げ受給を選択する人は、繰下げの申出を行った日。
年金制度改正、具体的にどこが変わるの?見直しポイントを解説
2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。働き方や家族構成などの多様化に合わせた年金制度の整備、私的年金制度の拡充などにより、老後の暮らしの安定や、所得保障機能の強化に繋げていくことが主な狙いです。
今回の改正の主な見直しポイントを整理していきましょう。
年金制度改正の全体像《主な見直しポイント》
出所:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
社会保険の加入対象の拡大
・短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し(年収「106万円の壁」撤廃へ)
在職老齢年金の見直し
・支給停止調整額「月62万円」へ大幅緩和(2025年度は月51万円)
遺族年金の見直し
・遺族厚生年金の男女差を解消
・子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
・標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ
私的年金制度
・iDeCo加入年齢の上限引き上げ(3年以内に実施)
・企業型DCの拠出限度額の拡充(3年以内に実施)
・企業年金の運用の見える化(5年以内に実施)
こうした内容からも、公的年金制度は現役世代の働き方やライフプランと深い関わりを持っていることがわかります。
ご自身の老後生活をイメージしてみよう
今回は「年金生活者支援給付金」について解説するとともに、令和のシニア世代がどのくらい年金を受け取っているのか、厚生労働省年金局のデータをもとに確認してきました。
年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得が一定の基準以下の方を対象に支給される制度です。条件を満たす場合は日本年金機構から請求書が届きますので、受け取りを逃さないよう、忘れずに手続きを済ませましょう。
また、国民年金の平均受給額は月額5万7584円、厚生年金(国民年金を含む)の平均は14万6429円となっています。ここから税金や社会保険料が差し引かれるため、実際に手元に残る金額はさらに少なくなります。
もし「自分は老後そこまでお金を使わない」と考える方であれば、特別な備えは必要ないかもしれません。ですが、月15万円前後の収入で暮らすのが難しいと感じるのであれば、やはり今のうちから老後に備えて少しずつ準備を進めておくことが大切です。
参考資料
・厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」について」
・厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
・公益財団法人生命保険文化センター「老齢年金生活者支援給付金について知りたい」
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
・日本年金機構「65歳の誕生日を迎え、老齢基礎年金を新規に請求する方」
・日本年金機構 年金Q&A「年金生活者支援給付金を請求した場合は、いつから支給の対象になりますか。」
・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」