大阪・関西万博「未来的目玉展示」...大阪ヘルスケアパビリオンが描いた「2050年の世界」
大阪・関西万博「未来的目玉展示」...大阪ヘルスケアパビリオンが描いた「2050年の世界」
外観(夜景) 提供:(公社)大阪パビリオン
4月に始まった大阪・関西万博、10月の閉幕まで2カ月を切り、名残惜しむように来場者数は堅調に伸びている。明暗が分かれる、ということもなく、総じてどのパビリオンも好評で、幅広い学びの場、体験の機会として、老若男女で賑わう。中でも米国やイタリアといった各国が威信をかけるパビリオンは連日長蛇の列ができ、入場に数時間待ちというのが常態化している。
万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現する目玉展示の1つに、「大阪ヘルスケアパビリオン」がある。大阪府・市が主導し、在阪の企業などが協賛、「オール大阪」の総力戦で挑む展示の数々が来館者を喜ばせている。開幕から4カ月の8月には来館300万人を超え、千客万来、商売繫盛の活況を呈する。
テーマは「生まれ変わる『REBORN』」
大阪ヘルスケアパビリオンは、万博会場に通じる大阪メトロ夢洲駅からすぐの東ゲートからほど近い場所に立地する。全パビリオン中2番目に広い約1万500平方メートルの敷地面積で、複数の曲面により構成される幾何学的な透明な膜の屋根が特徴的だ。
実写外観夜 提供:(公社)大阪パビリオン
パビリオンのテーマはREBORN──「『人』は生まれ変われる」「新たな一歩を踏み出す」で、キャッチコピーは「カラダはひとつ。ミライはむげん。」だ。「ミライはむげん」という言葉は、多様な未来を探究する学際的な領野「未来学」の英語がFutures Studiesと複数形とされることにも通じる響きを持つ。
館内の展示に共通するのは、「REBORN」という共通テーマのもと、「いのち」や「健康」の観点から来場者が未来の大阪の可能性、「2050年の都市生活」を楽しみながら感じられる点にある。
ヘルスケアや都市の未来像を描く
このパビリオンは、REBORNや「いのち」、「健康」のテーマに沿って、「ミライのヘルスケア」や「ミライの都市」といったカテゴリごとに、協賛企業がこぞって特色ある未来的な展示に趣向を凝らして競演する。
「ミライのヘルスケア」ゾーンでは、「栄養・身体に関するミライのヘルスケアの体験」を主眼とし、江崎グリコやロート製薬、椿本チエインといった在阪メーカーをはじめとした企業の展示が光る。
提供:(公社)大阪パビリオン
提供:(公社)大阪パビリオン
一方、2050年頃を想定した「ミライの都市」のゾーンでは、パビリオンの建設を手掛けた竹中工務店や、4年後に創業100年を迎えるエア・ウォーターが趣向を凝らし、空を自由に活用する「空から広がる都市」とミライの食事などを展望する「ネオライフスタイルLDK」をそれぞれ展示する。
提供:(公社)大阪パビリオン
提供:(公社)大阪パビリオン
ミライの都市では他に、教科書などを手掛ける東京書籍も出展、「時空を越える学び場」として2050年における教育の姿を提言する。社名の通り本社は東京だが、万博を好機と捉えて「万博・ヴァーチャルアカデミー推進室」を設け、大阪に拠点を構えて訴求を図っている。
東京書籍の展示「時空をこえる学び場」。黒板はデジタルで表示が切り替わる ※注記のない写真は筆者撮影
専用のデバイスを使って来館者が月の満ち欠けを調べる様子
一方、1889年に大阪府知事に「有限責任日本生命保険相互会社」の創立願が受理された、大阪発祥の日本生命は「人生ゲーム REBORN in 2050」をプロデュース。人生ゲームと言えば、ルーレットを回して出目に応じてコマを進めるすごろくのようなボードゲームだ。止まったマスの指示に従い、進学や就職、結婚、離婚など、人生を疑似体験しながら、複数人のプレイヤーで富を競うゲームだ。ただ、2050年の大阪を舞台とするこの万博特別版の特徴として、プレイヤー同士が協力する。助け合うことで増えるハートを多く集めた人が称えられるといった、温かみのあるコンテンツとなっている。
20人ほどのプレイヤーが同時にプレイする
ゲームの進行に伴い、各プレイヤーのコインとハートが増減する
ハートが足りない仲間にはハートを分け合う助け合いの精神も重要
最終的にコインとハートのランキングが表示される
パビリオンの醍醐味「REBORN体験」
こうした個々の企業の展示の人気もさることながら、このヘルスケアパビリオンの目玉は予約制の「REBORN体験」だ。予め専用アプリのダウンロードと事前登録のうえ、「カラダ測定ポッド」、「ミライのライド」、「ミライのじぶん」と順々に巡り、上記の「ミライのヘルスケア」や「ミライの都市」のゾーンへと続く。25年後のミライの自分が生きる世界を疑似体験できる。
提供:(公社)大阪パビリオン
測定ポッドでは、設置されたセンサーやカメラで「髪」や「肌」、「心血管」、「筋骨格」など7項目を測り、測定値に基づいた年齢や、将来的な白髪のリスクなどが、A、B、Eといった評価や数値で示される仕組みとなっている。
7つの項目を6分ほどかけて測定する
ドキドキの結果。アプリにも表示、保存される
6分ほどの測定の後、2050年の大阪の街並みを映し出した「未来のライド」に乗り込む。揺れ動く空間が上昇し、空中散歩をしている気分を味わいつつ上階へと移動する。
「ミライのライド」はバスの設定で、壁面に未来の大阪が映し出される
「ミライのじぶん」のコーナーでは、先ほどの測定データに基づき、25年後の自分の姿が映し出される。年老いた自分と対面すると、何とも言えない気持ちになりつつも、不思議と親しみも湧く。
未来の自分は来場者ごとに千差万別
25年後の自分のアバターが生成される
YouTubeで動画を見る
大阪ヘルスケアパビリオン | プロモーション動画
続く活況、万博外にも広がる体験
口コミも広まって人気が人気を呼び、大阪ヘルスケアパビリオンは予約が難しいとの声もある。ただ、パビリオン1階の「自由閲覧ルート」は予約不要で入れる。中央のアトリウムでは、未来型の人間洗濯機が展示されて注目を浴びるほか、在阪の中小企業を中心に週替わりで展示内容が切り替わる「リボーンチャレンジ」のコーナーがリピーターらを楽しませている。
また、万博会場の外で試せる仕組みもいくつかある。JR西日本は、大阪駅や新大阪駅などに「カラダ測定ポッドStation版」を設置し、パビリオンと同等の測定を無料で体験できる。万博閉幕の10月13日まで実施予定だ。このほか、日本生命の「人生ゲーム REBORN in 2050」は現在、LINEを通じてスマホなどでもプレイできるようになっている。
大阪駅などで体験できる「カラダ測定ポッドStation版」の流れ 提供:(公社)大阪パビリオン
スマホなどでプレイできる「人生ゲーム REBORN in 2050 提供:日本生命保険
来館者が300万人を超え、賑々しい大阪ヘルスケアパビリオン。活況は10月のフィナーレまで続きそうだ。