iPadOS 26でPCライクなマルチウィンドウが実現

ウィンドウの変更が自由自在に、メニューバーも採用, Dockにフォルダを配置、ファイル一覧はスタック表示に, フォルダのカスタマイズがより深く, ファイルを開く際は「ファイル」アプリから指定できる

iPadOS 26のパブリックベータ版をインストールしたiPad Pro。半透明のLiquid Glassを採用しているが、それ以上に大きいのがパソコンライクな進化を遂げていることだ(筆者撮影)

正式版の登場が間近に控えているとみられるアップル製品の新OSだが、中でももっとも変化が大きいのがiPadやiPad Proなどに搭載される「iPadOS 26」だ。ユーザーインターフェイス(UI)のデザインとしてLiquid Glassを採用しているのは他のOSと同じだが、iPadOSのみ、独自にマルチウィンドウが進化する。

【写真で見る】PadOS 26のマルチウィンドウ。やや見づらいが、「メモ」「X」「Safari」「ファイル」「LINE」の5アプリを同時に開いており、サイズも変更している

これまでのiPadは、画面上に複数のアプリを立ち上げ、並行して使うことに制約があった。初代iPad登場時は、iPhoneと同じ1画面に1アプリのみだったが、画面分割などを導入して徐々にマルチウィンドウ化を進めてきた。2022年に登場した「iPadOS 16」では、一部のモデルに「ステージマネージャ」を導入している。

この制限をさらに緩和し、iPadOS 26ではほぼパソコン並みのマルチウィンドウを実現する。この進化に伴い、ほかにもパソコン風の機能や仕様を取り入れていく。では、iPadOS 26を導入したiPadは、本当にパソコンのように使えるのか。正式版に先立って配信されているパブリックベータ版で、その実力を試してみた。

ウィンドウの変更が自由自在に、メニューバーも採用

ステージマネージャもパソコン風のマルチウィンドウを実現できたが、1つの画面に表示できるアプリは4つまでに制限されていた。アプリの縦横比にも、一定の決まりがあり、完全に自由なサイズを指定することはできない。さらに、ステージマネージャは利用できるiPadが、一部のiPad ProやiPad Airに限定されていた。

iPadOS 26では、この制約がほぼなくなる。まず、アプリの数には上限がなくなる。縦横比率の変更も、アプリの右下をドラッグすることで自由に変更可能。さらに、対応機種はハイスペックなiPad ProやiPad Airだけでなく、iPad miniや価格の安い無印のiPadにまで広がる(ただし、OSをインストールできるiPadならという条件はつく)。

この自由度の高さは、ほぼMacやWindowsなどのパソコンと同じと言っていい。画面上に同時並行で利用したいアプリをズラリと並べて、アプリ間を行き来しながら作業できる操作感は、パソコンそのもの。YouTubeアプリで動画を見ながら、メモアプリでメモを取り、さらにその一部をX(旧Twitter)で投稿して、かつバックグラウンドでメールが届いていないかを確認しながら、カレンダーアプリで次の予定を確認するといったことも簡単に行える。

ウィンドウの変更が自由自在に、メニューバーも採用, Dockにフォルダを配置、ファイル一覧はスタック表示に, フォルダのカスタマイズがより深く, ファイルを開く際は「ファイル」アプリから指定できる

iPadOS 26のマルチウィンドウ。やや見づらいが、「メモ」「X」「Safari」「ファイル」「LINE」の5アプリを同時に開いており、サイズも変更している(筆者撮影)

近いことはこれまでもステージマネージャでできたが、アプリが4つまでという制限があったこともあり、上記のようなことをするには、何か1つを諦める必要があった。アプリの縦横比が自由に決められないため、配置にも工夫が求められる。こうした手間をかけず、インストールしてすぐにパソコン風の使い勝手を実現できるのが、iPadOS 26の魅力と言える。

また、アプリのウィンドウ上部にカーソルを合わせると、「×」や「-」「↖↘」などのボタンが表示される。アプリの終了や、全画面化などを、ワンタッチでできるようになったのもパソコンに近い操作性だ。さらに、画面上部にカーソルを合わせると、アプリに合わせたメニューバーが表示される。このUIは、Macと同じだ。

ウィンドウの変更が自由自在に、メニューバーも採用, Dockにフォルダを配置、ファイル一覧はスタック表示に, フォルダのカスタマイズがより深く, ファイルを開く際は「ファイル」アプリから指定できる

アプリの終了もボタン一発になったほか、メニューバーも採用されていた(筆者撮影)

これまでのiPadのUIは、タッチ操作前提になっていたが、新しいウィンドウシステムを導入したことで、キーボードやトラックパッドでの使い勝手が大きく向上した。ただし、このUIは切り替えが可能。よりタブレットのようなUIのままにしておきたいときには、「設定」の「マルチタスクとジェスチャ」で、1つのアプリだけを表示するフルスクリーンアプリや、これまでのステージマネージャも指定できる。用途に応じて選択するといいだろう。

Dockにフォルダを配置、ファイル一覧はスタック表示に

画面下部に配置される「Dock」にも、パソコン風の仕様が加わっている。フォルダの配置が、それだ。Macでは同様のことができたが、iPadはアプリのアイコンに限定されていた。その制限がなくなり、iPadOS 26では、複数のフォルダをDockに置き、ダイレクトにファイルへアクセスすることが可能になっている。

これは、iPadの使い方にとって大きな転換点になる仕様だ。iOSにiPad向けの機能を拡張する形で進化してきたiPadOSは、どちらかというとアプリ起点のUIだった。まず、やりたいことがあったら、どのアプリを使うかというところから検討し、次にそのアプリ内に格納されているファイルを開くといった具合だ。

一方で、パソコンはデスクトップやフォルダの中にあるファイルを起点に、作業を進めることが多い。Dockにフォルダを配置できるというのは、iPadがこの考え方を一部取り入れたことを意味する。例えば、次のような操作が簡単にできるようになった。

Dock内に配置しておいたフォルダをクリックすると、中のファイルが重なるように表示される。これをスタックと呼んでいる。ここで編集したいファイルを選び、ドラッグしてアプリのアイコンに重ねると、そのファイルをアプリで開くことができる。

ウィンドウの変更が自由自在に、メニューバーも採用, Dockにフォルダを配置、ファイル一覧はスタック表示に, フォルダのカスタマイズがより深く, ファイルを開く際は「ファイル」アプリから指定できる

Dockにフォルダを置けるようになった。これを開くと、ファイル一覧が縦にズラッと並ぶ(筆者撮影)

例えば、フォルダの中から画像ファイルを選び、それをAdobeの「Lightroom」アプリにドラッグすると、Lightroomでその画像を開いてすぐに編集を始められるといった具合だ。これまでのiPadOSだと、まずLightroomを開いてから画像を追加していた。操作の手順が逆転するというわけだ。

Dock内にフォルダを配置するには、「ファイル」アプリを利用する。アプリを開き、Dockに配置したいフォルダを長押しして、「追加」というメニューの中にある「Dock」を選択すると、そのフォルダがDock内に表示されるようになる。試してみたところ、フォルダは10個まで配置できた。

ただし、フォルダを置きすぎるとそのぶん、アプリのアイコンが小さくなってしまうため注意が必要。クリックしづらくなるのが難点だ。この仕様により、特定の資料を作る際に作業スペース用のフォルダを作っておき、それをDockに配置して、さまざまなアプリを呼び出すといったことが可能になった。この点も、iPadOSがパソコンに近づいたところと言えそうだ。

フォルダのカスタマイズがより深く

Dock内にフォルダを配置するために使った「ファイル」アプリも、iPadOS 26で大きく進化している。Dockへのフォルダ配置以外だと、まずフォルダのカスタマイズ機能が挙げられる。これは、フォルダにアイコンをつけることができる機能。無機質なフォルダに、何が入っているかがわかりやすくなる。

利用方法は簡単だ。まず、「ファイル」アプリを開き、カスタマイズしたいフォルダにカーソルを合わせて長押しする。メニューから、「フォルダとタグをカスタマイズ」を選択。アイコンが並んでいるので、フォルダの中身に合ったものを選択すればいい。また、「絵文字」をタップすると、絵文字をフォルダに貼り付けることが可能になる。

ウィンドウの変更が自由自在に、メニューバーも採用, Dockにフォルダを配置、ファイル一覧はスタック表示に, フォルダのカスタマイズがより深く, ファイルを開く際は「ファイル」アプリから指定できる

アイコンや絵文字、色でフォルダをカスタマイズできるようになり、視認性が上がった(筆者撮影)

また、タグを追加する際に、フォルダの色を変更することも可能だ。こうしたカスタマイズは、Dockに配置したフォルダ内のフォルダを表示する際にも反映されている。Dockから表示するファイルやフォルダは、1つひとつのアイコンが小さいため、色やアイコンでわかりやすくしておくと視認性が高まり、アクセスしやすくなる。

筆者も、校正データを入れておくためのフォルダを黄色くして、さらに校正を意味する手書きをしているシーンの絵文字を追加したところ、一発でそのフォルダを見つけることが可能になった。パソコン風にiPadを使いたい人には、必須のカスタマイズと言えるだろう。

ファイルを開く際は「ファイル」アプリから指定できる

さらに、ファイルをタップした際に開くアプリを、「ファイル」アプリから指定できるようになる。例えば、JPEG形式の画像ファイルを開く場合、通常だとiPadOS 26から内蔵された「プレビュー」アプリが起動する。ただ、いきなり「Photoshop」で開いて編集したいという人もいるはずだ。このようなときには、ファイルを長押しして、「このアプリで開く」を選択すると、対応するアプリの一覧が表示される。JPEGの場合、「Photoshop」や「iMovie」などが対応アプリとして表示された。

ウィンドウの変更が自由自在に、メニューバーも採用, Dockにフォルダを配置、ファイル一覧はスタック表示に, フォルダのカスタマイズがより深く, ファイルを開く際は「ファイル」アプリから指定できる

特定のアプリを指定してファイルを開くことが可能だ(筆者撮影)

このように、よりパソコンに近づいたiPadだが、それでも完全に同じというわけではない。デスクトップの扱いの違いは、依然として大きい。MacやWindowsでは、デスクトップに自由にファイルやアプリのショートカットを配置して、そこを起点に作業できるが、iPadOSではそこまでの自由度はない。

また、アプリも既存のiOSをベースに開発されているため、ファイルを指定したフォルダに保存するといった操作ができないものもある。そのため、iPadOS 26でも、パソコンを完全に置き換えるデバイスにはなりえない。

一方で、できることやその実現方法はよりパソコンに近づいた。同じアップル製品同士の比較だと、モバイルネットワーク対応やApple Pencil、さらにはタッチパネルもiPadならではの機能。上手く活用すれば、パソコン以上に生産性の高いデバイスになる可能性もありそうだ。