いけず女将・大西里枝さん35歳「急死」関係者の慟哭と死因の謎

大西里枝さんがイメージキャラクターを務めた「いけずステッカー」の建前が描かれた表面

まさに、「佳人薄命」だ。京都ならではのコミュニケーション文化を表現した「いけずステッカー」のイメージキャラクターや、「菖蒲打ち」動画で広く知られた、「いけず女将」こと、大西里枝さんが22日午前、35歳という若さで、京都市下京区の自宅で死去した。死因など詳細は公表されていない。突然すぎる別れに、その後も女将を慕う関係者たちの悲しみの声が止まない状態だ。

大西里枝さんがイメージキャラクターを務めた「いけずステッカー」の本音が描かれた裏面

大西さんは、日本の伝統工芸品「京扇子」の老舗で、家業である、「大西常商店」の4代目社長を務めていた。

本業の傍らでは、フォロワー数が3万人を超える自身のX(旧ツイッター)アカウントによる発信や、テレビ番組出演などで、「いけず文化」など京都の伝統を発信することにも尽力してきた。

23日に大西さんの急死が報じられて以降、生前に親交のあった関係者たちからは、その死を惜しむ声が止まらない。

京都市の松井孝治市長

「いけず女将」突然の別れに親交者たちから追悼の声が止まず

Xのフォロワー数が20万人を超えるカメラマン、稲田大樹氏(34)は24日、次の通りに悲痛な思いを吐露した。

昨日、大西さんに最後のお別れをしてきました。

とても優しく気さくな方で、とても良くして頂きました。

以前見かけた菖蒲打ちする姿に惹かれ、去年初めて撮らせて頂きました。

実際に見た有志に惚れ込んで「今年は丸一日付きっきりで撮影させてほしい」とお願いしたら、

二つ返事で是非きて欲しいと言っていただいて。

あの日、暑かったし、しんどかったけど、

楽しかったねーって打ち上げでみんなで笑ってました。

今でも菖蒲背負って自転車漕いで、

京都の街を颯爽と駆け抜ける姿が目に浮かびます。

来年はあれしよう、これしようなんて話もあがってて、

毎年5月5日は勝負打ちをつきっきりで撮ろうと思ってました。

「いけず女将」で売ってますけど、本当に優しくて朗らかで、気持ちの良い方なんです。大西さん。

一回お会いしたら、いけず女将はキャラだなってすぐわかるぐらい。

ある意味、ステレオタイプな京都人とはかけ離れてますよね。

一回、浴衣撮影をさせてもらったことがあったんです。

ご本人は「撮影モデルなんてしたことない」なんて笑ってましたけど、流石の着こなしで、ご本人の綺麗さも相まってすごく良くて。

昨日、京都新聞のツイートで一昨日に亡くなられたことを知って、電車の中で「は?」って声に出しちゃって。

信じられなくて、実感がなくて、

その日の夜、最後にお会いした大西さんは、いつもの綺麗なお顔で、本当にただぐっすりと寝ているような表情で、

大西さん、僕と年齢ほとんど一緒なんですよ。

学年が一つ上なだけ。ほぼ同い年なんですよ。

早すぎるよ…。

悲しいです。本当に。

もっと遊びたかった。

こんなことしか言えないけど、ご冥福をお祈りします。

って書いたら泣けてきた

大西さん、

菖蒲打ちの動画、長編の方は編集まだ完成してなかったけど、できたらお母さまにお渡しするね。

ゆっくり休んでね。

「心にぽかりと穴が空いてしまっております」と松井孝治・京都市長

京都市の松井孝治市長(65)も自身のXで、23日、「驚きの余り、言葉が見つかりません。いま、お父上様にご挨拶して、お顔を拝ませていただきました。とても安らかな、うっすら笑みを浮かべられたような、寝顔のようなお顔でした」「ほんまにいつも真面目で真剣で、全力投球のお方でした。お父様とも今日お話しましたけれど、その全力投球がこの世の寿命を縮めたのかも知れません」とコメント。

松井市長は、25日にも次の通りに、大西さんについてコメントした。

追悼、大西里枝さん

老舗、大西常商店の女将さんにして、カルチャープレナーとしてもご活躍してこられた大西里枝さんが急逝されました。

お会いして約8ヶ月でしたが、その京都への深く誠実な思い、伝統への敬意、何事につけ素晴らしい行動力と情熱、いずれをとっても真摯で、他に代え難い魅力を持った方でしたので、その急逝に驚き、同じように洛中で生まれ育った京都人として、歳は違えどもとても貴重な同志を若く亡くてしまった喪失感に、心にぽかりと穴が空いてしまっております。

金曜日の夜に第一報に接し、お許しを得て土曜日の昼にご自宅でお顔を拝ませていただき、昨宵、御身内のお通夜に壬生寺の松浦俊昭貫主、西脇隆俊京都府知事とともに参列させていただきましたが、開式前にあらためて里枝さんらしいお着物姿を拝し、お父上様、旦那様、そしてご子息様とそれぞれ言葉を交わさせていただきました。

本日午前の告別式は公務のためお伺いできませんでしたが、今頃は野辺の送りも済まされた頃ではなかろうかと思います。

突然の御逝去でしたが、大西里枝さんらしく、前を向いて最期まで全力投球の人生だったのではないかと思います。

お通夜の開式前にご子息に声をおかけしましたら、悲しみの中にも存外明るく振る舞っておられましたので、お母さんの分まで頑張りや、と激励しましたら、ご子息が、元気に、

うん、頑張る!

と答えられたのが、とてもとても印象的でした。

大西里枝 さん、

京都市中心部は、涙雨どころか、雷鳴轟き滝のような雨。号泣です。

さようなら。

どうぞ、あちらでも、お元気で。

でも、気張り過ぎず、ちょっとはゆっくり休んでくださいね。

昨年10月の衆院選に自民党公認で出馬した、元経済産業省の官僚で、門ひろこ氏(45)は、大西さんの訃報を受けて、自身のXで、「大西里枝さんの急逝に衝撃を受けました」と絶句した。門氏のコメントの内容は次の通り。

沖縄尚学優勝、日大三準優勝、

のニュースに湧いた後に、京都の大西里枝さんの急逝に衝撃を受けました。

松井京都市長のXでしばし、拝見してましたが、菖蒲打ち動画、いけずシールなどの企画力、発信力など感嘆しており、老舗を継ぎ、京都の新しい可能性を広げておられ、活躍を応援しておりました。

安らかに眠られますよう、心よりお祈り申し上げます。

大西さんの告別式は近親者で行い、喪主は夫、裕太氏が務める。大西常商店は24日、公式Facebook(フェイスブック)を更新し、4代目社長の大西さんの訃報を伝えた。葬儀については遺族の意向で近親者のみで執り行われる。後日、お別れの会が開かれるという。発表の全文は次の通り。

この度は既に一部の方にはお伝えしておりましたが、

京都新聞にも掲載がありました通り、大西常商店の4代目 代表取締役社長 大西里枝 が

逝去いたしました。

ここに生前賜りましたご厚情に、心より深く御礼申し上げます。

なお、葬儀につきましては家族の意向により近親者のみで執り行います。また、誠に勝手ながら供花・供物・香典等は固くご辞退申し上げます。

後日、皆様と「お別れの会」を催す予定でございます。詳細が決まり次第、改めてご案内申し上げます。

令和7年8月24日 大西家

IT化で家業を革新、夫との絆も語っていた「いけず女将」の素顔

大西さんは立命館大学卒業後、NTT西日本に入社。同社を2016年に退職し、家業である大西常商店に入社し、2023年に代表取締役に就任した。

当時は、扇子職人とのやり取りがFAX行われていたり、使っていたパソコンが20年前のモデルだったといい、連絡はFAXからメールに変更。在庫管理はスマートフォンのアプリで効率化をするなど、業務のIT化に尽力した。

私生活では、NTT西日本時代の同僚の裕太氏と24歳の時に結婚。夫婦の間には、9歳になる息子も誕生している。

2024年8月2日配信の「AERA DIGITAL」の夫婦インタビューの記事の中では、夫について、「商売をしていると不安だし、心が不安定になることもあります。でも夫はいつも穏やかなので、帰宅して夫がいると嬉しいし落ち着きます」と信頼を明かしていた。

こんな大西さんについて、Xユーザーたちが訃報を受けて思い起こしたのが、「いけずステッカー」だった。

これは、「ぶぶ漬けでもどうどすか?」と聞かれたら、それは「早く帰れ」という意味というような京都のコミュニケーション「いけず」を、建前の表面と、本音の裏面で表現したもので、表面の大西さんの穏やかな表情と、裏面の変顔のギャップも相まって、バズっていた。

もう1つ、大西さんについて、Xユーザーたちが思い起こしているのが「菖蒲打ち」をしている動画だ。菖蒲打ちとは、端午の節句に男の子たちが菖蒲の葉を編んで縄状にし、地面に勢いよくたたきつけて遊んだ日本の伝統的な風習のことで、これに本気で行っている大西さんの動画が話題になっていた。

大西さんが今月14日にまで投稿を行っていたXアカウント(@RieOhnishi)はすでに削除されている。削除したのが誰なのか、削除した正確なタイミングは不明で、死因は明らかにされていないため、さまざまな憶測が広がる一因になっている。

また、Google検索にはキャッシュが残っているため、大西さんのXの直近の投稿内容は閲覧できる。

生前最後の14日の投稿では、「それにしてもこの女ノリノリである。盆ジョビ!!!!」というコメントと共に、10秒間の動画が公開されているほか、13日のポストには、「朝日新聞さんの四季つれづれ、連載2回目!お盆のあれこれ、ご覧くださいませ〜!」「たまには真面目な姿もご覧…ご覧いただけませんでしょうか…」「なぜ私はこんなに険しい顔で団子を捏ねてるのか。お迎え団子、ようこそお精霊様方!#お盆ガチ勢2025」「三条大橋付近、鴨川随一の鴨鴨ポイントです」などと記されており、大西さんの明るいテンションがうかがえる。

大西さんのSNSについては、フェイスブックのアカウントはまだ残っている。最後の投稿は8月12日で、トークイベントについて、「でまーす! おたのもうしますっ!」とつづっていた。

(zakⅡ編集部・小野田聡)

■小野田聡(おのだ・さとし) ライター歴2年。産経デジタル新卒入社6年目。現在はzakⅡ編集部に在籍。エンタメ・スポーツ分野の執筆経験が豊富。1996年生まれ。X(旧ツイッター)のアカウントは@zakdesk。