おでんのうずら巻あれこれ。かわいいフォルムに秘められた職人の矜持

今回はおでんのうずら巻についてあれこれ紹介していこう。お店によって少しずつ形状が異なり、個性がある。

おでんで玉子といえば、なんといっても鶏の玉子が有名だが、うずらの玉子も魚のすり身で包んだうずら巻として、定番の具材となっている。今回は東京のおでん種専門店で販売しているうずら巻の数々を紹介していこう。

うずら巻は2種類の形に大別される, うずら巻の形状その1:玉子の頭がのぞいているもの, うずら巻の形状その2:玉子がすべて包まれたもの, お店の個性が光るうずら巻

おでんのうずら巻あれこれ。かわいいフォルムに秘められた職人の矜持

うずら巻は2種類の形に大別される

うずらの玉子を包むように魚のすり身を巻いたおでん種、うずら巻。その姿はかわいらしく、卵が入った鳥の巣のように見えることから「巣篭もり(すごもり)」とも呼ばれている。うずら巻の発祥は不明だが、高度成長期の頃にはすでに製造されていたようだ。

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玉子は完全栄養食といわれているが、うずら玉子は鶏卵よりも栄養価が高い成分が多い。うずらのみを煮ておでん種としてもおいしいので、ぜひ試してみてもらいたい。

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うずら巻は大きくふたつの形状に分類できる。ひとつはうずら玉子の頭が見えているものだ。ほとんどのお店でこの形状を採用している。

一方で、すり身でうずら玉子を覆い隠すようにする形状も存在する。鶏卵でいうところの「バクダン」と同じ形だ。東京のおでん種やさんをのぞくと、意外にこの形の場合も多い。

うずら巻の形状その1:玉子の頭がのぞいているもの

さて、ここからは東京のおでん種専門店のうずら巻を形状別に紹介していこう。残念ながら廃業したお店のものもあるが、市井(しせい)の小さな歴史の一端として紹介しておこうと思う。

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まずは、頭が出ている形状のうずら巻だ。この形状のものは多くのお店で見られ、定番といえるだろう。断面を見ると、玉子が柔らかなすり身のクッションに包まれているように見える。これが別名「巣篭もり」の由来だ。

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日本橋の『神茂(かんも)』の「うずらボール」のように異なる名称をつけている場合もあるが、形状は「うずら巻」そのものだ。この形状のものを採用しているお店は、板橋区大谷口北町の『蒲吉商店』、品川区中延の「丸佐かまぼこ店」(閉業)、葛飾区東新小岩の『桧山水産』などがある。形状は同じだが、揚げ方ひとつとっても個性があり、比べてみるとおもしろい。

うずら巻の形状その2:玉子がすべて包まれたもの

次に、玉子がすべてすり身に包まれた形状のものを紹介しよう。ころんとした、かわいらしいたたずまいは、先述の頭をのぞかせた形状に引けを取らない魅力がある。

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すり身の量を多くして、ふくよかな味わいを重視するものや、逆に少なくしてうずら玉子のまろやかな味わいを際立たせるものなど、お店によってコンセプトが異なる。どちらが優れているかは食べる者の好み次第、この選択肢の多さが個人経営店の魅力であり、贅沢ともいえる。

この形状を採用しているのは、西東京市ひばりが丘の『大清かまぼこ店』、江戸川区南小岩の「蒲清」(閉業)、足立区江北の『人形町光縁』(うずらばくだん)などだ。

お店の個性が光るうずら巻

通常はうずら玉子をひとつだけ用いるが、複数個入れているお店もある。葛飾区東立石の『増田屋』は、玉子が3つも入った豪華なうずら巻を製造している。

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串に刺してあり、すり身のボリュームも素晴らしい。価格がおさえてあり、非常にお得感がある。

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神奈川県の妙蓮寺にある『八州屋』も玉子がふたつ入っている。ほかのお店に比べてひと回りほど小さな形状にもかかわらず、玉子をふたつ閉じ込められる技術力の高さはさすがといえる。

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うずら以外の具材を混ぜ込んでいるお店もある。千葉県の稲毛 にあった「はんぺい 三ツ星」(閉業)のうずら巻はすり身に海苔が混ぜ込まれており、非常に香りが豊かな一品であった。

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こだわりが感じられるうずら巻でいえば、墨田区東向島にあった「八幡屋」(閉業)もあげられる。玉子を一度素揚げしてからすり身に包んでおり、味がぼんやりとせず、心地よい食感を楽しめる。手間を惜しまず、味を追求する職人の矜持が感じられる。

ほかにもうずらを用いた練り物は、小田原の『鈴松蒲鉾店』のように揚げずに焼いたものなどがある。一見同じように見えるものでも、作り手によって個性があり、それぞれに魅力がある。いろいろなお店に足を運んで、ご自身の舌でその違いを楽しんでもらいたい。

取材・文・撮影=東京おでんだね

東京おでんだね

東京のおでん種・蒲鉾・練り物の魅力を紹介

「おでん種やさんでおでんを買って、家で調理して食べる」文化を盛り上げるべく、都内各地を奔走中。ビジネスでなく趣味でちまちま活動しています。