ネモフィラ530万本の絶景を少人数で〝独占〟 ひたち海浜公園ツアー 営業時間外を活用

一面を青く染め上げる国営ひたち海浜公園ネモフィラ=茨城県ひたちなか市(同県提供)

茨城県を代表する観光スポット「国営ひたち海浜公園」(茨城県ひたちなか市)で県がゴールデンウイーク(GW)に照準を合わせて打ち出したユニークな観光ツアーが人気を集めている。市内で最も標高の高い「みはらしの丘」(4・2ヘクタール)一面を青く彩る約530万本のネモフィラの絶景を営業時間外に人数を絞った特別入園で、独占しているかのように堪能してもらえる企画だ。担当者は「5月半ばからは春バラ、秋にはコキアも見頃を迎えるスポットが県内にはある。『花の絶景といえば茨城』と実感してもらえるはず」とPRする。

一面を青く染め上げる国営ひたち海浜公園ネモフィラ=茨城県ひたちなか市(同県提供)

空と海と丘の3つの青

同海浜公園は令和6年度の入園者数が203万439人で、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する前の元年度以来5年ぶりに200万人を超えた。特に、ネモフィラが見頃を迎えた4~5月が約80万人、コキアが見頃の10月は約36万人で、ネモフィラとコキアは春と秋の〝風物詩〟となっている。

その中でもネモフィラ人気は群を抜く。空と海と丘の3つの青が織りなす絶景が見る人を圧倒するためだ。見頃を迎えると開園前から長蛇の列ができる。開園と同時に入園客が撮影などに最適な位置取りをしようと一目散に走り出す姿もみられ、「ネモフィラダッシュ」と呼ばれている。

こうした「思う存分満喫したい」という観光客の願望を実現しようと、県が昨秋から企画し、今年のGW向けに打ち出したのが「ネモフィラの花絶景いばらき堪能周遊ツアー」だ。

20人程度で堪能

花絶景いばらきとは、県が令和6年度に始めたプロモーション活動。海浜公園のネモフィラ、いばらきフラワーパーク(石岡市)の春バラ、偕楽園(水戸市)の梅など四季折々の花の名所を横断的につなげ「花といえば茨城」「一年中、さまざまな花が楽しめる県」といったイメージを交流サイト(SNS)なども駆使し発信している活動だ。

日本三名園の一つ、偕楽園の梅=水戸市(茨城県提供)

今回のツアーもプロモーションの一環として企画された。4月後半からGWの期間、海浜公園の通常の営業時間外にゆったりとした空間でネモフィラを楽しんでもらうのが狙いで、宿泊付きとなる。コンセプトは「独り占め」「ぜいたくな時間」「特別な体験」といったところだ。

県は限定約100人が入園できる特別枠を確保。営業時間外の「早朝コース」(4月30日、5月2日)と、「夕暮れコース」(4月18日、25日、5月1日)から選択する。いずれも1時間半で、「1回の利用者は20人程度なので広大な丘を前に(撮影の)画角を独占できる究極の体験ができる」と担当者。

ツアーは2月10日に販売が始まり、10日間ほどでほぼ完売。その後、キャンセルなどもあったが、4月16日時点で利用者は100人を超え、部屋の予約も9割以上が埋まった。

インバウンド向けの一手も

ネモフィラの季節が終わると、フラワーパークの春バラが見頃を迎える。隣接のグランピング施設の利用者は特典として開園前の春バラ散策が可能だ。

そして秋には、海浜公園の丘を真っ赤に染め上げるコキアが入園者を出迎えてくれる。県によると、海浜公園には関東地方以外に東北や関西など全国から観光客が訪れているほか、台湾、香港、韓国など海外からの訪日客(インバウンド)も着実に増えているという。

インバウンド獲得に向け、県は今後、著名インフルエンサーとのタイアップや、多言語サイトの開設も視野に入れる。担当者は「コキアの季節には、インバウンドに訴求力のある観光商品の企画などにも力を入れたい」と話している。(森山昌秀)