吉野熊野国立公園の中にある「ホテル浦島」で神秘的な洞窟温泉を満喫!世界遺産「熊野古道」や那智勝浦観光も楽しめる
紀伊半島、和歌山県那智勝浦にある「ホテル浦島」。日本各地の温泉を取材してきたなかでも、最も心に残る「洞窟温泉」がある大好きな場所だ。今回は、そんなホテル浦島の体験レポートをお届けする。
ホテル浦島の天然洞窟温泉「忘帰洞」
世界遺産、国立公園の雄大な自然に囲まれたホテル

若いころはマグロ漁船に乗っていたという船長さんら、海のベテランが案内してくれる
熊野三山や熊野古道などと共に世界遺産にも登録されている、緑豊かな吉野熊野国立公園の中にある「ホテル浦島」。勝浦港の向かいに防波堤のように伸びている狼煙山半島、ほぼ全域がホテルの敷地。その面積は、東京ドームの4.5倍もあるというから驚きだ。紀伊勝浦の駅から、送迎バスなどに乗り陸路で行くこともできるが、駅から5分程の港から船に乗ってホテルへと向かうことが絶対的におすすめだ。
広々とした海と緑豊かな山に囲まれたロケーション
亀の形をした送迎船に乗って竜宮城、もとい「ホテル浦島」へ。港から約5分の船の旅、乗船時間は短いものの船に乗ることで別空間、旅をしている気分がグッと深まる。
カメに乗って到着したのは、竜宮城ならぬ「ホテル浦島」
船で到着したら、まずはロビーへ。手渡された地図を見て、その広さにあらためて驚かされる。宿泊施設は4つの建物に分かれている。船が到着する港の目の前にある「ホテル浦島」、全長154メートルのエスカレーターに乗ってアクセスする「山上館」、岩場に荒波が打ち寄せる絶景が部屋から望める「日昇館」。勝浦湾と勝浦の町の灯りが眺望の「なぎさ館」敷地内には6カ所のそれぞれ特徴的な温泉などもあり、それぞれが通路で結ばれている。
通路には宿泊棟ごとに色分けされた案内ルートが記されている
平安貴族も堪能していた!?神秘的な洞窟温泉「忘帰洞」「玄武洞」
ホテル浦島ならではの楽しみは、館内6カ所の“温泉めぐり”。敷地内には10本の源泉が湧き、6カ所の浴場はすべて源泉かけ流し。さながら施設全体が巨大な温泉テーマパークでもあるかのように、さまざまな温泉を堪能することができる。最も有名なのは、大自然が作り出した巨大な洞窟にある温泉「忘帰洞(ぼうきどう)」。大正時代初期に旧紀州藩主・徳川頼倫が来遊し「帰ることを忘れそうだ」と褒めた言葉から名付けられたという。
間口25メートル・奥行き50メートル・高さ15メートルの巨大な洞窟の中に温泉が湧き出ている
長い年月をかけ熊野灘の荒波に削られ形成された巨大な洞窟の中に温泉が湧き出している。古の時代から沐浴に使用されており、なんと平安時代末期に華やかだった「熊野詣」の際に、熊野三山に参詣した貴族たちも訪れていたと伝えられている。
海を眺めながら入る洞窟温泉は格別
京の都からも上皇や貴族たちなど、多くの人が訪れた「熊野詣」。今でも最寄駅の紀伊勝浦までは、特急で新大阪から約3時間40分、名古屋から約4時間かかる。徒歩で詣でた「熊野詣」はさらに遠く険しい道のりだったのは間違いない。そんな平安時代の人々の旅の疲れをも癒やしていたという洞窟温泉は、まさに自然の恩恵を体感できる温泉だ。
ホテル内には10本の源泉があり、1分間に1000リットル以上も湧き出ているそうだ。紙垂(しで)がかけられた源泉近くで耳を澄ませてみると、ボコッボコッと湧き上がる音が聴こえてくる。
「忘帰洞」脱衣所の源泉
ホテル浦島には、もうひとつ印象的な洞窟温泉「玄武洞」がある。こちらは細長く侵食された洞窟の中に湧き出る温泉のため、より神秘的な雰囲気を感じることができる。
洞窟内に波の音が静かに響く「玄武洞」
大海原を一望の部屋と、もうひとつの名物・日本一のエレベーター
今回、宿泊したのは「日昇館」。畳の香りが心地よい、広々とした部屋の目の前は太平洋の雄大な海。日昇館は和室は全室がオーシャンビューで、部屋の窓から地平線から上ってくる日の出を見ることもできる。
窓を開けると、打ち寄せる波の音も聴こえてくる客室
ホテル浦島、もうひとつの名物が本館と山上館をつなぐエスカレーター「スペースウォーカー」。全長が154メートル、高低差が77メートルもあり、エスカレーターとしての高低差は日本一だそうだ。下から上まで乗っている時間は5分45秒もかかる。横には428段の階段もあり、中ほどの窓からは熊野灘を一望することができる。
エスカレーター「スペースウォーカー」
そんなエスカレーターで上がった先にあるのが、海抜約80メートルの山頂に建つ「山上館」。ホテル浦島の4つの宿泊棟の中で最もランクが高い宿泊施設となっており、山上館に宿泊した人だけが利用できる眺望のいい温泉「遙峰の湯」もある。
大パノラマの温泉「遙峰の湯」
海を眺めながら味わう熊野キュイジーヌ

熊野の食材をたっぷりと堪能
食事は旅行の大きな楽しみのひとつ。ホテル浦島の食事は、豊富な選択肢があるブッフェスタイル。「熊野cuisine(キュイジーヌ)」をテーマにしたメニューは、和歌山県や熊野地方など地元の生産者がこだわって大切に育てた食材を使ったご当地料理が充実。勝浦漁港に水揚げされた地元の魚で握った寿司や、マグロ料理があるのも特徴的だ。
マグロの町・那智勝浦ならではの料理が並ぶ
しかも、ソフトドリンクやアルコールも含めたドリンクが食事中、飲み放題!生ビール、和歌山県産の地酒、焼酎、ワイン、梅酒やじゃばら酒などがそろう。朝食時にもアルコール飲み放題(朝食時は生ビールとワイン3種のみ)を楽しめる。
果実酒だけでも30種類以上がそろう
ブッフェのメニューには一つひとつ、何の素材が使われているかが記されており、自分が食べたい物を自由に選ぶことができるので、アレルギーがある人などにも便利。「キッズコーナー」もあり、子どもが好きな唐揚げなどのメニューも用意されている。
「デザートコーナー」も充実
朝食もブッフェスタイルでいろいろ用意されているが、なかでも人気なのは好きな具材を入れてつくる「お茶漬け」。用意されている具材は、鯛の切り身など実に20種類。どんなお茶漬けにするか迷いながらチョイスするのも楽しみだ。一つひとつ丁寧に作られる「だし巻玉子」も秀逸。ぜひ味わってほしい。
好みで具材を入れて味わう「朝茶漬け」
ぜひ味わってほしい「だし巻き玉子」
1日では足りない、のんびりゆっくり滞在したくなる
広大な敷地内のホテル浦島では、さまざまな散歩が楽しめる。まずはもちろん、温泉から温泉への散歩。各施設を結ぶ通路沿いには紀州ならではの土産を扱うお店などが並んでいるので、浴衣で温泉街を歩く風情でプラプラ散歩も味わえる。
通路の両脇にはお店がズラリ
ホテル内にはコンビニもあり、お土産の品ぞろえも充実
山上館のほうからは、「狼煙山遊歩道」へも行くことができる。かつて、クジラ漁のクジラを見つけたときや黒船(外国船)を見つけたときに狼煙を上げたという「狼煙山遊歩道」は、勝浦の町や太平洋を一望できる眺めのいい散歩道。日の出や夕日のスポットでもある。
ホテル浦島は、熊野古道や那智の滝などへの散策の拠点としてはもちろん、連泊して温泉や散歩をのんびり楽しみながら、ゆっくり過ごすのもおすすめだ。
「狼煙山遊歩道」を行くと、ノルマントン号遭難碑などが
狼煙山公園からは小さく那智の滝も見える
取材・文・撮影=レックス 外島美紀子
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※20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。