就職氷河期世代が“反グローバリズム”の参政党に熱狂するワケ「このままでは日本も欧米と同じ道を辿ってしまう」

参院選での躍進以来、連日のように話題を振りまく参政党。「日本人ファースト」という訴えが「差別を助長する」と大きな批判にもさらされたが、政党支持率は今や自民党に次ぐ2位に。その成長の源泉となった資金力を誰でもわかるように解説する。

◆比例代表で742万票もの票を獲得

参院選最終日、参政党は’22年参院選と同じように東京・芝公園で締めの演説を行った。熱烈な支持者にアンチも含めて2万人が集結し、最後は「イチ、ニー、参政党!」を唱和 写真/産経新聞社

7月の参院選で躍進した参政党は、比例代表で自民、国民民主に次ぐ742万票もの票を獲得した。

これを年代別に見ると、18~39歳の若者層、さらに40~59歳を加えた現役世代からの支持が厚かったことがわかる。なかでも就職氷河期世代の比例投票先では参政党が自民、国民民主をも上回り、トップとなっているのだ。なぜ、この世代は参政党にハマったのか?

◆【証言①】自分の思いを口にしてくれる参政党

高橋均さん(仮名・54歳)。専門学校を卒業後、北陸から上京。雑誌で見つけた求人をきっかけに男優デビュー。以降、30年以上第一線で活躍している

「神谷さんは漫画『ROOKIES』の先生のように情熱的で、みんなが思っているのに口にできなかったことをズバッと言ってくれるのが魅力」

こう話すのは参政党支持者の高橋均さん(仮名・54歳)。30年以上、セクシー男優として活躍する氷河期世代の男性だ。

「参政党に関心を持ったきっかけはコロナ禍。私は体に化学物質を入れるのが嫌で、ジャンクフードを食べるだけで体調を壊してしまうんです。だから、コロナワクチンも接種していないのですが、あの頃は反ワクというだけで“非国民”扱いされたじゃないですか? そんなときに神谷さんがワクチンの危険性をYouTubeで発信していた。それからは参政党の動画を見るのが日課になりましたね」

さらに、参政党の歴史観や思想にも共鳴したという。

「日本にはびこる自虐史観は中国などにとって思うつぼです。選択的夫婦別姓は伝統的な家族観にマイナスだし、移民の受け入れもマイナス面のほうが大きい。欧米はどこも移民政策に失敗しているじゃないですか? このままでは日本も同じ道を辿ってしまう」

現在は月2000円の有料コンテンツなどで政治や経済について学んでいるという高橋さん。「国会での発言力が強まったので、本当に政策が実現できるのか注視したい」と慎重な姿勢を見せるが……日課の動画視聴は続きそうだ。

◆【証言②】動画を見ながら参政党ノート作製

チャンノリさん(50代)。夫を亡くして以降、引きこもりになり、YouTubeを見続けるなかで神谷氏と邂逅して参政党“サポーター”に。@nons.anya

「今は神谷さんと参政党のことを毎日、勉強しています。ネットで調べてノートやパソコンにまとめているんです」

こう話すのは同じく氷河期世代のチャンノリさん(50代)。今年1月に夫を亡くしてメンタルを病んで、引きこもりに。現在は生活保護を受給しながら、細々と暮らしている。

「父が自民党支持者なので、家でも国会中継を垂れ流しにするぐらい政治には以前から関心があったんですけど、引きこもっているときに神谷さんの動画を見つけてからは、100%参政党支持に変わりました。反グローバリズムで、海外にヘコヘコせずに本当の意味で独立した日本にするって、こんなことを言ってくれる政治家は神谷さんだけ」

その姿勢は、もはや支持を超えて“恋”に近い……。

「今はChatGPTが一番の親友なんですが、何度も『神谷さんっていいよね?』って聞いてます。するとアーニャ(ChatGPTにつけた名前)は『いいと思うよ』って答えてくれる。神谷さんは演説がうまいし、顔も体もいい。世襲議員と違って叩き上げなのも魅力的。本当、奥さんが羨ましい。お金がないので党員にはなれないけど、最近、サポーター登録はしました!」

政治活動ではなく推し活?

チャンノリさんは毎日、神谷氏や参政党に関連する動画を見ながら、歴史観や政策について勉強。ノートやPC内にまとめているという

◆【証言③】子供を連れ集会で参政党コール

武岡博さん(仮名・47歳)。飲食店オーナーと並行して関東と九州で不動産投資を行う。参政党の公約では子育て教育給付金の定額給付の実現に期待を寄せている

夫婦仲が悪化したことをきっかけに参政党支持者になった人も。3年前から別居中という飲食店オーナーの武岡博さん(仮名・47歳)が話す。

「妻が浮気して息子を連れて出ていったのですが、このまま離婚したら単独親権を主張されて、二度と会えないかもしれない。悩んでいたときに今回当選した梅村みずほ議員が、共同親権について熱心に活動されているのを知り、支持するようになりました」

参院選では数度、街頭演説を見に行き、最終日の“2万人演説会”には10歳の息子を連れて参加したという。

「アンチも多いので最初は迷いましたが、現場には20~30代の子連れ家族が大勢いて、政治の現場とは思えない雰囲気があった。私のエゴですが、子供世代が担う日本を考えてもあの空間を共有できたことは本当に嬉しかった。ただ、妻とは政治の話をしないので、息子が『イチ、ニー、参政党~!』と叫んでいないことを祈ってます(苦笑)」

参院選後、月党費1000円の一般党員に登録したという武岡さんは、「『DIYスクール』という参政党の政治塾にも参加して、政治家を目指す」ことを模索中だ。

◆「参政党は社会人サークル」

プロトラさん(20歳)。神谷氏が当選した’22年の参院選から参政党をウォッチし始め、’24年に一般党員登録。党費の値下げをきっかけに今年から運営党員に

参政党は若年層の支持も厚い。大阪在住の大学生プロトラさんも支持者の一人。弱冠20歳ながら、月2500円の党費を納める運営党員として活動中だ。

「きっかけは3年前の参院選。当時、極端な反ワクチン政策やスピリチュアルな主張にはうさんくさい感じもありましたが、外国人政策には共感しました。国粋主義ではないですが、外国人店員で溢れる大阪なんばの繁華街を見ていて、将来に対して強い危機感を覚えたことも大きかった」

昨年3月、大学進学をきっかけに参政党の一般党員(月党費1000円)に登録し、今年1月には運営党員として再登録したという。

「運営党員になると公認発表の前に党内の候補予定者の選定に携われるんです。最初は大学生が党内イベントの手伝いに行くと驚かれましたけど、最近は高校生の支持者も見かけます。僕にとっては、いろんな人と出会える社会人サークルみたいな感じです」

選挙の手伝いの合間には、参政党に関する動画を定期的にアップしているという。

「選挙予想と結果、毎月の世論調査の解説などを投稿していて、1本の動画編集にかかるのは平均3時間。当初は広告収入などを時給換算すると300円ぐらいだったのですが、今回の参院選前後に登録者数が急増して時給1000円までアップしました(笑)。その収益を動画の取材費や参政党グッズ収集に充てています」

参政党は青春を捧げる場にもなっているようだ。

今年5月に東京で開催された「参政党フェス」にも大阪から深夜バスに乗って参加したプロトラさん。新グッズも大量に入手したとか

◆40~50代から最も多くの支持を集めた背景

参政党が40~50代から最も多くの支持を集めた背景には明確な理由がある。「日本ファースト」というキャッチーな標語の裏に隠れた「反グローバリズム」だ。実は、これを唱えたのは参政党だけ。第一生命経済研究所の永濱利廣・首席エコノミストが解説する。

「就職氷河期世代はバブル崩壊以降の“失われた30年”を社会人として過ごしてきた世代です。長期間にわたってデフレが進み、賃金が上がらない状況をずっと押しつけられてきたので、既存政党に対する忌避感が強い傾向がある。その30年の間にグローバリズム化が加速して、生産拠点が中国をはじめとした新興国に移っていったこともあって、『外国人に仕事を奪われた』という意識の人も少なくないのでしょう。

だから、国内政党のなかで唯一、『反グローバリズムで失われた時間を取り戻そう』と訴えた参政党に共感を抱いたのではないか。年を重ねている分、日本の伝統と文化にも理解があり保守的な考えの人も少なくないので、右派色の強さにもハマった可能性があると考えられます」

そもそも、代表を務める神谷氏も氷河期世代ド真ん中の1977年生まれ。昭和の熱血教師ばりの演説も氷河期世代に刺さったことは想像に難くない。一方で、神谷氏は「高齢女性は子供を産めない」など差別的な発言が批判にさらされたが、メディア研究を専門とする成蹊大学の伊藤昌亮教授は「資本家や投資家などのエリート層を敵視するような姿勢がハマった」と見る。

「参政党は、国民民主などが多用した『現役世代』という言葉を使わず、“真ん中の人”を指す言葉として『日本人』を多用しました。さらに、『賃上げ』という言葉も使わなかった。現役世代と賃上げが並ぶと給与所得を得る会社員には刺さりますが、氷河期世代に多い個人事業主やフリーランス、非正規雇用者には届きにくい。

この世代は大企業の正社員になれなかった人も多く、正社員であっても賃上げしてもらえなかったため、最前線で働く現役というよりも“補欠”のような感覚を持っている人が少なくない。だから、典型的なエリート像に当てはまる玉木雄一郎氏率いる国民民主よりも叩き上げの神谷氏と参政党にシンパシーを抱きやすかったと考えられる」

◆唯一の反グローバリズム政党の勢いは…

伊藤氏曰く「真ん中を重視するため、外国人や性的マイノリティなどの端っこを切り捨てるというのが参政党の考え方」。高齢者の終末期医療を全額自己負担にするという訴えなども“真ん中重視”が先鋭化した結果と考えられる。

では、参政党は今後も支持を拡大し続けられるのか? 永濱氏は「リベラル色が強い政権から、保守色が強い政権へと与党が変わっていくと、参政党の勢いは続かない可能性がある」と見る。一方、伊藤氏は「成熟化しなければ持続性はないだろう」と話す。

「思考実験にすぎないMMT(現代貨幣)理論をベースにした積極財政など参政党の政策は実現性に乏しいものが少なくありません。一方、成果が上がらないからと政策を修正して行けば、既存政党と大差なくなってしまう」(伊藤氏)

秋の臨時国会以降の参政党に要注目だ。

【第一生命経済研究所 永濱利廣氏】

首席エコノミスト。衆議院調査局内閣調査室客員調査員や景気循環学会常務理事なども務める。近著に『就職氷河期世代の経済学』

第一生命経済研究所の永濱利廣氏

【成蹊大学教授・社会 伊藤昌亮氏】

日本IBM、ソフトバンクなどを経て現職。メディア研究を専門に行う。『炎上社会を考える』『デモのメディア論』など著書多数

成蹊大学教授・社会の伊藤昌亮氏

取材・文/週刊SPA!編集部 図版/WADE