韓国大統領にもふるまった「石破式カレー」はどんな味なのか 首相と親交がある「カレー専門家」が語る“絶妙な隠し味”

■総理大臣にはなれないと思う…カレー店で漏らした“本音”, ■日本の「Karē」がインドの「Curry」を抜いた!?, ■記者、「石破式カレー」を再現してみた, ■「らっきょう」と「梨ワイン」の役割は?

 厳しい政権運営を強いられ、最近は苦々しい表情が多い石破茂首相だが、実は、永田町きってのカレー愛好家として知られる。好きが高じて、若い頃は昼休みに自分でカレーをつくっていたという。そんな「石破式カレー」がついに外交デビューを果たした。8月23日、日韓首脳会談後の夕食会で、石破首相は自ら考案した特製カレーを韓国・李在明大統領らに振る舞った。首相と親交のあるカレー専門家の一条もんこさんに、カレーを通じて浮かび上がる首相の人物像と石破式カレーの“評価”を聞いた。

*  *  *

 石破首相と一条さんが最初に出会ったのは2018年のこと。並々ならぬカレー愛を持つ石破首相は、共通の知人の紹介で一条さんのことを知り、「是非お会いしたい」と議員会館の事務所に招いたという。

 一条さんは、初めて会った石破首相の印象をこう振り返る。

「邪念のない方だなと思いました。『応援よろしくお願いします』みたいな政治的な話は一切なく、カレーの話だけで1時間くらい盛り上がりましたから(笑)」

 以降、二人は一条さんオススメのカレー店で、カレー談議に花を咲かせる仲となった。石破首相は食に関して柔軟で、本格的な南インドカレーの店では、日本ではなじみのない料理をどれもおいしそうに平らげていたという。

「石破さんは『世界中にその国ならではのカレーがあって、どれもおいしいよね』と話していて、非常に共感しました。私の持論では、真のカレー好きは偏りなくどんなカレーも好きなんです」

■総理大臣にはなれないと思う…カレー店で漏らした“本音”, ■日本の「Karē」がインドの「Curry」を抜いた!?, ■記者、「石破式カレー」を再現してみた, ■「らっきょう」と「梨ワイン」の役割は?

■総理大臣にはなれないと思う…カレー店で漏らした“本音”

 大好物を前に心がほぐれたのか、5年前、当時一議員だった石破首相がカレー店で漏らした“本音”を、一条さんは忘れられないという。

「石破さんは『僕は日本をより良い国にするために総理大臣になりたい。でも今の自民党で僕が選ばれることはないと思う』とおっしゃっていました。ご自身が自民党の中で少し浮いた存在だと分かっていたんですね。あの時の石破さんは、政治家というより素に近い顔をしていたと思います。『日本を変えたい』というのは、うわべではなく心からの言葉のように聞こえました」

 石破首相は、「僕が総理大臣になれなかったら、その時は一緒にカレーで地元の町おこしをしましょう」と続けた。一条さんは出身地の新潟県を“カレー県”としてPRすべく長年活動してきた。鳥取県出身の石破首相は、新潟と同じく日本海側で隠れた米どころの鳥取もカレーで盛り上げたいと考えたようだ。

 そして2024年9月。5回目の挑戦で自民党総裁選を制し、翌月の首相指名で“石破首相”が誕生した。一条さんはそのニュースを見て、思わず涙があふれたという。

「カレーでの町おこしは当分できなくなったし、もう一生会えないかもしれないと寂しい気持ちもありましたが、ようやく夢をかなえた姿がうれしくて。今、石破さんは『首相をやめろ』などと批判にもさらされていますが、信念を持って国のかじ取りを続けているのではないかと思っています」

■総理大臣にはなれないと思う…カレー店で漏らした“本音”, ■日本の「Karē」がインドの「Curry」を抜いた!?, ■記者、「石破式カレー」を再現してみた, ■「らっきょう」と「梨ワイン」の役割は?

■日本の「Karē」がインドの「Curry」を抜いた!?

 そんな石破首相が8月23日、日韓首脳会談後の夕食会で、韓国の李大統領らを「石破式カレー」でもてなしたことについて、一条さんは「カレーは外交ツールとして非常に優秀なんです」と断言する。

 日本のカレーの味は、今や世界的に受け入れられている。有名チェーンの「カレーハウスCoCo壱番屋」や「ゴーゴーカレー」は、海外での店舗展開を着々と進めている。22年には、ブルガリアの体験型旅行サイト「Taste Atlas」が発表した「世界の伝統料理ランキング」で、インドの「Curry」を抜いて日本の「Karē」が1位に輝いた。一条さんによると、特にカツカレーが、フライを好む欧米を中心に大ブームになっているという。

「カレーは世界中で知られていて、日本のカレーは本場・インドの方もおいしいと言ってくれる誇るべき料理です。国のトップ同士が一緒にカレーを食べて、世界が平和になる。そんなカレー外交が実現したらすてきですね」

■総理大臣にはなれないと思う…カレー店で漏らした“本音”, ■日本の「Karē」がインドの「Curry」を抜いた!?, ■記者、「石破式カレー」を再現してみた, ■「らっきょう」と「梨ワイン」の役割は?

■記者、「石破式カレー」を再現してみた

 さて、肝心の石破式カレーとはどんなカレーなのか。石破首相は過去にテレビ出演した際にレシピを明かしており、ネット上の情報を頼りに記者が再現してみた。

■総理大臣にはなれないと思う…カレー店で漏らした“本音”, ■日本の「Karē」がインドの「Curry」を抜いた!?, ■記者、「石破式カレー」を再現してみた, ■「らっきょう」と「梨ワイン」の役割は?

石破式カレー(約5人前)

【材料】

・鶏手羽元 6本

・ニンジン 2/3本

・玉ねぎ 大1個

・鳥取県産のらっきょう 約45グラム

・鳥取県産の梨ワイン 36cc

・インスタントコーヒー 大さじ1/4

・カレールー 5皿分

・ガラムマサラ 小さじ1/2

・カレーパウダー 大さじ1/2

【作り方】

①鶏手羽元を軽く炒めて焼き色をつける

②みじん切りにした玉ねぎと、やや大きめに切ったニンジンを加えて炒める

③火が通ったら、カレールー、ガラムマサラ、カレーパウダーを加えてよく混ぜる

④梨ワインと水を加えてじっくり煮込む

⑤最後にらっきょうとインスタントコーヒーを加え、完成

■「らっきょう」と「梨ワイン」の役割は?

 長年の試行錯誤の末にたどりついたという石破式カレー。石破首相は、一条さんに「妻や娘からも好評なんだ」とうれしそうに語っていたという。

 骨からダシが出る手羽元を使ったり、インスタントコーヒーで苦みを加えたりとカレー通ならではのこだわりを感じるが、何より異色なのは「らっきょう」と「梨ワイン」だろう。一条さんは、こう解説する。

「どちらも酸味を出すための食材ですね。実はカレーにおいて酸味はとても大事で、お酢を入れるレシピもあります。甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の絶妙なバランスを、石破さんは経験と本能で弾き出したのでしょう。梨ワインの36ccという分量には緻密で研究肌な性格が表れていますが、正直36ccでも35ccでも味は変わらないと思います(笑)」

 記者が自作の石破式カレーを食べてみると、梨の甘酸っぱさの後にガラムマサラのガツンとした刺激が広がり、なかなか奥行きのある味わいだった。火が通ったらっきょうは、甘くトロンとした玉ねぎのようで、予想外のマリアージュだ。

 渾身の石破式カレーは、世界平和だけでなく、「石破おろし」に揺れる党内融和にも一役買うかも?

(AERA編集部・大谷百合絵)