猫のために選んだ全館空調、13年後に壊れたら最大200万円の修理見積もり 結局、各部屋個別エアコンに“切り替え”「慎重に考えたい設備」
猫のために選んだ全館空調、13年後に壊れたら最大200万円の修理見積もり 結局、各部屋個別エアコンに“切り替え”「慎重に考えたい設備」
近年の猛暑に加え、光熱費の高騰も相まって、「新築戸建てを建てるなら、エネルギー効率も重視しないと」と考える人が増えています。家全体の空気を循環させ、どこにいても快適な温度を保てる「全館空調」に関心を持つ家庭も多いのではないでしょうか。
全館空調を導入して13年が経過したAさん(関東在住、40代、主婦)ご一家に話を聞くと、最近になってようやく見えてきた「後悔ポイント」があるといいます。
確かにみんなにうらやましがられた数年間
Aさん一家がマイホームを建築したのは13年前のこと。当時はAさんが独身時代から飼っていた猫も一緒に暮らしていました。
建築を依頼した地元の工務店に猫を飼っていることを伝えると、全館空調を提案されました。
「猫ちゃんを家の中で自由に過ごさせたいということでしたら、全館空調はいかがでしょうか。夏場はクーラーをつけていない部屋や外出時が心配になりますが、全館空調なら家中が快適な温度になりますし、24時間稼働が基本なので、つけ忘れもありません。個別空調と違って1台で全室をまかなうので、意外と電気代もかかりません。それに、各部屋にエアコンを設置しないぶん、デザイン面でも好評ですよ」
確かに、ただでさえ猫にはストレスがかかる引っ越しです。せめて新しい家では自由に快適に過ごしてほしい。これから子育てをする上でも、お風呂や廊下での温度差で体調を崩す心配がないのは安心です。予想外の設備投資にはなりましたが、思い切って導入したそうです。
実際に暮らし始めると、冬でもフローリングを裸足で歩けて、夏は玄関を開けた瞬間から家全体が涼しく快適。友人や親せきからも「いいなあ」と言われることが多く、導入してよかったと思っていました。
冷房の効きが悪くなり、送風口からホコリが飛んでくる
異変を感じたのは、今年の夏の初めでした。「今年は暑いな。さすがに自動運転だと暑く感じるのかも」と思ったのが最初のきっかけです。
まったく冷房が効いていないわけではないものの、湿度が高く、ジメジメした暑さを感じるようになりました。送風口をよく見ると、時折ホコリの塊や水滴が飛び出してくることに気づきました。
そこでようやく「空調機の故障かも?」と気づいたAさん夫婦は、全館空調を設置した工務店に連絡をしました。
「13年前ですと、メーカー保証はすでに切れていますね」と言われてしまいました。
むしろ、もっと早く故障してくれていた方が良かったのにと思いましたが、どうにもなりません。
想定をはるか上回る出費に衝撃
家を建てたとき、空調機の修理にかかる費用は「基板とファンモーターの交換で10万円~30万円程度」とも聞いていました。そのくらいの出費は覚悟していたAさん夫婦。しかし、修理に来た工務店の担当者の話を聞いて驚きました。
「おそらく当時は予算を抑えるためだったのだと思いますが、一世代前の機種が使われていました。この機種は2年ほど前に交換部品の生産が終了しています。基板交換だけで済めばよかったのですが、今回は本体を完全に入れ替えるしかありません。それに、今の機種は一回り小さくなっているので、空いたスペースの補修や壁の修正も必要です。だいたい150万~200万円ほどかかる見込みです」
想定外の高額修理に、「それなら、もう全館空調はやめてしまってもかまいません。普通のエアコンを各部屋に設置した方が安いですか?」と尋ねてみると、申し訳なさそうにこう返されました。
「各部屋に個別エアコン用のコンセントやスリーブがないですよね。それらの設置費用だけでも数十万円かかるかもしれません。すべての部屋にエアコンをつけた場合、総額はあまり変わらない可能性があります」
「家具や家電の故障はなぜか同時期に起こる」とよく言われますが、それをきっかけに、引っ越し当時にそろえた家電製品が次々に不調になり、ボーナスどころか貯金にも手をつけることになったというAさん夫婦。
「来年まではだましだまし使おうかとも考えましたが、猛暑で完全に壊れたら大変なので、結局、各部屋にエアコンを設置しました」とAさんは話します。
「全館空調をリプレイスするとなると、工事期間中は空調が一切使えなくなってしまいます。もしあの猛暑の中でそんな状態になっていたらと思うと、辛かっただろうなと感じます」と振り返ります。
そして、「全館空調は、屋根や外壁と同じように、壊れる前に大規模な更新や補修が必要になる設備だと痛感しました。自分たちは深く考えずに導入してしまった部分もあり、今ならもっと慎重に検討したと思います。全館空調にもいろいろな仕組みがあると思いますが、よく検討した方がいい設備だと感じています」と語っていました。
確かに、こんな酷暑で「家中の空調が全部止まる」と思うと、それだけで恐ろしいことです……!
(まいどなニュース特約・中瀬 えみ)