貯金100万円で「安心」を手に入れた、では1000万円が貯まった時は…節約オタクが断言「お金と幸せ」の悲しい現実

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お金があれば幸せになれるのか。節約オタクふゆこさんは「お金がないとお金に執着してしまうし、稼いだら手放すことが怖くなった」という。節約・投資系YouTuberのくらまさん、ファイナンシャルプランナー1級の資格を持つサバンナ・八木真澄さんとの鼎談をお届けしよう――。※本稿は、マイナビ健康経営のYouTube番組「Bring.」の動画「FP1級取得で噂のあの芸人と、節約・投資系トップユーチューバー特別鼎談! お金と幸せの理想な関係【八木真澄、くらま、節約オタクふゆこ】」の内容を抜粋し、再編集したものです。
「お金がない不幸せ」と「夢がある幸せ」
【ふゆこ】「お金がなくても幸せ」という考え方がありますよね。ただ、わたしは生活の安定がないと、幸福を感じることは難しいと思うのです。
というのも、わたしが節約もせず貯金もなかった26歳頃は、人生に対して不満しかなく、毎日残業してストレスで浪費して……「頑張っているのに毎月お金が足りない!」というストレスに支配されていました。転職して収入が増え、節約で貯蓄できるようになって、家計が安定してようやく、自分の人生や幸福について考えられるようになった経緯があります。
八木さんに伺いたいのですが、芸人さんって売れるまでは生活的に大変だと聞きます。でも、「夢を持っている」ことでお金がなくても幸福は感じられますか?
【八木】少なくとも、僕は駆け出しの芸人で貧乏だった頃も、特段しんどいとは思わなかったですね。もちろん「生活が苦しい、しんどい」って人はいると思いますけど、バイトしながらでも芸人はできて、生活苦を強要されているわけではないので、本人の気持ち次第なんです。
ただ、ずっとそのままでいることは難しい。その理由は、芸人は結婚で悩むからです。パートナーのいる芸人なら、20代のうちは夢を追いかけてもいいですよ。でも、30代になって結婚を考えたとき、そこで収入が現実問題となってのしかかってきます。すると、家庭を取るのか、芸を続けるのかを選ぶことになります。だから、芸人を続けたいけれど、結婚して子どもができたから辞める人はたくさんいます。
そうやって辞めていった人が「芸が面白くないから売れない」かというと、そんなことなくて、15年、20年と頑張ってきた人はみんな面白いんですよ。ただ、タイミングとスポットライトが当たるかどうかなので、これは本人も周囲も苦しみを感じます。
【ふゆこ】お金がないことより、夢を追い続けられないことに、苦しみや葛藤があるのですね。
お金がないから夢を持てる
【くらま】夢があるって幸せなことですよね。でも、お金がないから夢を持てる側面があるのかもしれません。貧しいことには不満がつきまとうけれど、不満があるから夢を持つことができて、不満があるからハングリーになれるのだと僕は考えています。
大学の奨学金で384万円の借金を背負ったからこそ、東京に出てきて節約して、会社員として週5で働きながら7年以上もYouTuberをやっているいまがあるので、僕はハードモードな半生と両親に感謝すらしています。
【八木】わかります。でも、くらまさんは約6000万円の資産があるいまでも、夢は持ち続けているのですか?
【くらま】もちろんです。漠然としていますが、もっとYouTubeで再生数を取りたいし、もっと自分にできることを増やして名前を売ってみたい。もちろん、資産だってもっと大きくしたいと思っています。こういう気持ちは、最初から裕福だったら僕の場合はきっと持てなかったはずです。
それに、幸福感のハードルを低く保てるのも、貧しさを知ればこそです。屋根があって、水道も電気も使えるのだから、それで幸せといえます。ふゆこさんのいう、「生活の安定」をどのレベルに求めるかでしょうね。
100万円貯めたら安心して、1000万円貯めたら不安になった
【ふゆこ】資産ベースの話になりますけど、逆にどれほど稼いだら幸福や満足を感じられると思いますか? わたしは節約と貯金を始めて、100万円を貯められたときに、やっと少し安心できた実感があります。でも、資産が1000万円を超えたら今度は失うことが不安になってしまったのです。どうあれば安心できるのかを模索しているところです。
【八木】僕は資産ではなく、月収が30万円を超えたときに世界が変わりましたね。それこそ芸人の仕事では月5万円しかもらえなかった頃って、いろいろな支出を切り詰めていたので、自宅から駅までのお店や広告も僕には無縁だから視界に入らなかったのです。
30万円もらえるようになって、初めて駅前の居酒屋の外看板のメニューが視界に入ってきて、「俺、もうこれ食べられるんや……」って思えたことが印象深いです。それまでが苦しいとは思わなかったけれど、ステータスに合わせて新しい世界が見えてくることはあるのでしょうね。
「悩みや渇望は終わらない」と割り切る
【くらま】僕の場合は、奨学金を完済したときも、100万円貯まったときも、資産が1000万円、5000万円を超えたときも、それぞれのステージであった不満や悩みは消えたのですが、見えなかったものが見えてきて、新たな欲望や悩みが湧いてくるのです。
だから「悩みや渇望は終わらないものだ」と受け入れたら、楽になりました。終わらない欲があるから人間は絶えず発展してきたのだし、欲望や不満をポジティブなものとして受け止めています。
【八木】でも、お金があれば、もっといいものを食べて、贅沢して、好きなことができることは確かですが、その先に必ずしも幸福があるとは限らないですよね。
むかし、明石家さんまさんが、まだ若手芸人だった僕らを高級焼肉に連れて行ってくれて、見たこともない霜降り肉に若手たちは興奮していたのです。でも、さんまさんは肉を食べずにスンドゥブと白飯を食べている(笑)。
あたりまえですけど、「成功=贅沢」ではないことに気がつきました。むしろ、若手がワイワイしている場や時間など、なにか心のなかに価値を見出しているのかなと思ったのです。
芸人って、売れないと楽屋が大部屋なのですが、売れると個室の楽屋が与えられるので、みんなそれを目指します。でも、いざ売れて個室をもらった芸人たちも、大部屋に来てみんなで話しているんです(苦笑)。そういう話を間寛平師匠にしたら、「みんな若い頃は楽屋に10人も20人もいて狭い狭いというやろ? でも、あれが一番楽しいねんで」っていわれて「なるほどなぁ」と思いましたよね。
その時々に応じた「幸せ」に気づけるかどうか
【ふゆこ】お金がないときの日常に、実は幸福があるっていうことですよね。おふたりの話を伺って、資産や収入がいくらであっても、その時々の自分の幸せに気づくことが大切なのかなと思いました。
最近、わたしも節約は続ける一方で、「ちゃんと自分の幸せに投資することも大事だ」と思って、犬を飼い始めました。それだけでなく、大学院の専攻だった物理学の勉強をあらためて始めたり、キャンプに行くことを目標にしたり、贅沢とは違うお金と時間の使い方を考えています。特に勉強はコスパがよくて、4000円の教科書で200時間くらい楽しめます。
【八木】わかる、わかる(笑)。僕もファイナンシャルプランナーの資格取得をやりましたけど、結果よりも勉強自体が楽しくて、お金もかからない。
【くらま】学生のときの勉強は「やらされている」けれど、いまは自主的に勉強するから楽しいですよね。
【ふゆこ】お金で贅沢しても幸福になれるかはわかりませんが、お金があることで意図的に仕事をセーブして幸福や満足を得るための時間をつくることができます。その点で、お金と幸福は直結するのかもしれませんね。
「若者の○○離れ」の真実
【くらま】結局、幸福のあり方を世間の物差しで測らないことが大切だと思うんです。結婚して子どもを育て、車と広い家を買うのが「あたりまえの幸福」で、そこから外れたら不幸、できない人は劣っているかのような考え方に乗る必要はないですよね。実際、いまの若者は従来型の幸福像に共感できないから、「若者の○○離れ」が起こっているわけで、価値観は多様化しています。
八木さんも、ふゆこさんも節約家ですけど、無駄なことは削って、自分にとって「なにがお金をかけるべき大切なことか」を取捨選択するのが節約じゃないですか。自分の物差しで自分らしい生き方ができれば、お金の有無に関係なく幸福を感じられるのではないでしょうか。
【八木】その常識とか価値観に乗らなくても、工夫次第でどうにかできることもありますよね。例えば、家は広いほうが良しとされますが、僕が大阪で買った戸建ては4人家族でたったの14坪です。
でも、広く見せる方法はいろいろあって、ガラス板や鏡を使ったり、カーテンの位置を変えたり、やってみると意外と気になりません。あと、床暖房を導入することで家の広さはまったく変わります。
リビングには「ソファやローテーブルを置く」という先入観がありますけど、そうやって人間のポジションを定めようとするから広い部屋が必要になるわけです。でも、床暖房にすればソファはいらなくて、クッションを置いただけのフリースペースにできるので、狭くても快適になりました。
お金の使い方、稼ぎ方には「生き方」が出る
【ふゆこ】狭いほうが家族の会話も密になるっていいますよね。
【八木】本当にそうで、小さい家だけど家族の会話が絶えず盛り上がっています。実はお笑いのステージもそうで、開放感のある広い会場ってウケにくいんですよ。小さい劇場で距離が近いほうが笑いは取りやすいので、おそらくそれと同じなのでしょうね。
【くらま】うん、すごく勉強になります。お金って稼ぎ方も使い方も、その人の生き方が出ますね。「お金を大切に使う」というのは「使いどころを見極める」ことだし、それが自分の生き方を大切にすることになるのだと思いました。
【ふゆこ】お金がないとお金に執着してしまうし、稼いだら稼いだで手放すことが怖くなりますが、お金に幸福があるわけでないことを忘れたらいけませんね。お金そのものに価値観をとらわれないよう、考え続けたいと思います。
---------- 八木 真澄(やぎ・ますみ) お笑い芸人 1994年に高校の柔道部の後輩だった高橋茂雄とお笑いコンビ「サバンナ」を結成。芸人としてメディアや舞台で活躍する一方、節約家・投資家としての顔を持ち、2024年10月にファイナンシャルプランナー技能士1級に合格。各メディアで金融知識を伝える他、著書に『年収300万円で心の大富豪』、2025年3月には共著で『FP1級取得!サバンナ八木流 お金のガチを教えます』を発刊(いずれもKADOKAWA)。 ----------
---------- 節約オタク ふゆこ(せつやくおたく・ふゆこ) YouTuber 理系の大学院を修了後に電子系メーカーに就職。1カ月約10万円で生活して年間300万円を貯金し、20代で資産1000万円を達成。現在はフリーランスとして活躍中。YouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」では、日常的な節約法や投資について初心者向けに配信し、チャンネル登録者数は60万人を超える(2025年2月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がある。 ----------
---------- くらま(くらま) 会社員 ファイナンシャルプランナーの資格を有する会社員。東京都内でひとり暮らしをしながら徹底的な節約・倹約生活を送り、社会人1年目で300万円以上あった奨学金をほぼ完済。週5で働きながら貯蓄術やお金のノウハウを発信するYouTubeチャンネル「倹者の流儀」を2018年より配信し、節約系ユーチューバーの先駆けとして知られる。著書に『すごい貯蓄 最速で1000万円貯めてFIREも目指せる!』(KADOKAWA)がある。 ----------