約3年ぶりに「皆既月食」が全国で見られるチャンス!夜空を見上げて赤銅色の月を楽しもう

約3年ぶりに「皆既月食」が全国で見られるチャンス!夜空を見上げて赤銅色の月を楽しもう

まだまだ昼間に散歩を楽しむには残暑が厳しい日が続いています。そんなときには日が暮れてから外へ出て、夜空を見上げてみるのはいかがでしょうか? 2025年9月は約3年ぶりに日本全国で「皆既月食」が見られるチャンスがあります。夜間も熱中症のリスクはありますが、安全に配慮しながら、いつもとは雰囲気の違った赤銅色に輝く月を楽しみましょう。

「皆既月食」とは?観察できるのはいつ?

2025年9月8日は、2022年11月8日以来、約3年ぶりに日本全国で皆既月食が見られます。そもそも「月食」とは、どんな現象なのでしょうか?

私たちの暮らす地球も月も、太陽の光を反射して輝いていますが、太陽の光が地球を照らすと、当然その反対側には影ができます。この影の中を月が通過するときに、月が欠けたように見えることを「月食」と呼ぶのです。太陽と地球、月が一直線に並ぶ、つまり満月の頃にだけ起こります(ただし、太陽の通り道に対して月の通り道が傾いているため、満月なら必ず月食が起きるとは限りません)。

月食の起こるしくみ(画像=国立天文台)。

部分食の様子(画像=国立天文台)。

皆既月食の様子(画像=国立天文台)。

月の一部だけが地球の影に入ることを「部分食」、月の全てが地球の影に入ることを「皆既食」といいます。今回は2025年9月7日(日)の夕方に月が昇り、8日(月)の午前1時27分に欠け始めます。これが「部分食」のスタートです。やがて月が地球の影にすっぽりと入り、「皆既食」が起こります。

皆既食を楽しめる時間は午前2時30分から3時53分までで、その後は4時57分まで再び部分食が続きます。日本全国、どの場所からでも同じ時間帯に楽しめます(※8日の夜ではなく、7日の深夜~8日の明け方であることに注意してください)。

肉眼でも十分に観察できますが、双眼鏡や望遠鏡などがあると色の変化も細かく見られ、周りの星たちも一緒に楽しめるでしょう。

2025年9月8日の部分食・皆既月食を楽しめる時間(画像=国立天文台)。

「赤銅色」に輝くのはどうして?

皆既月食はなぜ赤黒く見えるのか?(画像=国立天文台)。

月が欠けてしまうなら真っ暗になってしまうのかというと、そうではありません。皆既月食の最中、月は「赤銅(しゃくどう)色」と呼ばれる、10円硬貨のような赤黒い色に見えるのです。

このように見える理由は、地球の周りには大気の存在があるためです。太陽の光は地球を照らすときに、大気によってわずかに屈折して地球の影の内側に入り込みます。太陽の光には青や赤など波長の違うさまざまな色が混じり合っています。波長の短い青い光は散乱しやすいですが、波長の長い赤い色は散乱しにくく大気を通過します。この赤い光が弱まりながら月を照らすので、皆既食中でも月はほんのりと赤黒く見えるのです。

これは朝日や夕日が赤く見えるのと同じしくみです。(この連載の過去の記事【空が赤く染まる秘密って? お散歩の帰り道に……美しい夕焼けをじっくり味わってみて】でも解説しています。)

秋はお月見にぴったりの季節

皆既月食のほかにも、秋は月見をしながら散歩を楽しめる機会がたくさんあります。たとえば2025年は10月6日に平安時代から伝わる「中秋の名月」を迎えます。翌7日に満月となるため、ほぼまん丸の中秋の名月を堪能できそうです。

そして、2025年は11月2日は「十三夜」です。十三夜の月と中秋の名月を合わせて見ると、縁起が良いとされています。

空気が澄んで、過ごしやすい気候になる秋は、お月見をするのにぴったりな季節です。ぜひ名月を愛でながら、ゆったりと散歩する時間を過ごしてみてください。

秋の夜長にお月見散歩はいかが?(画像=写真AC)。

今回の皆既月食は深夜の時間帯に起こるため、なるべく1人きりではなく複数人で周囲の様子に気を配りながら楽しむようにしましょう。

また、日中ほどではありませんが、まだまだ日没後も気温が下がり切らず、夜間でも熱中症になってしまうリスクが高い時期です。こまめに水分や休憩を取りながら、熱中症対策も万全に行って、無理のない範囲で天体観測を満喫してくださいね。

文=片山美紀 TOP画像=写真AC

参考:

国立天文台 月食とは

https://www.nao.ac.jp/astro/basic/lunar-eclipse.html

ほしぞら情報2025年9月 皆既月食(2025年9月)

https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2025/09-topics01.html

片山美紀

気象予報士

大阪府出身。大学卒業後、放送局での勤務を経て気象予報士、気象キャスターに。街歩きをしながらお天気ネタを探すのが趣味。空を眺めようと上を向きがちです。NHK総合「首都圏ネットワーク」などに出演中。