菊川怜が振り返る大学受験の思い出 進路に「東大」を選んだ理由とは

 東京大学を受験し、現役で合格を手にした菊川怜さん。“難関突破”の秘訣は何だったのでしょうか? さらに、志望校の決め方、苦手教科の勉強法、試験当日にうまくいかなかったときの気持ちの切り替え方なども伺いました。

■高校2年生から、周囲も「東大受けるよね?」という雰囲気に

 中1の頃から東大受験に特化した塾と理系科目に特化した塾、2つの塾に通っていましたが、私的にはずーっと「絶対東大に受からねば」と意識していた訳でもなく、淡々と塾に通って、宿題や小テストをこなしているという感じでした。

「いよいよ」と思ったのは、文系・理系クラスに分かれて選択科目の授業が始まった高2のときからです。親や学校の先生からプレッシャーをかけられることは一切なかったですが、やはり進学校でしたから、周囲も何となく東大を受けるという雰囲気になってきていた気がします。

 私は理系クラスに進みましたが、この時点で将来何になりたいとか、何を学びたいとか、全く決まっていなかったんです。それでも東大は、入学試験では理科1類~3類、文科1類~3類の6つからどれかを選択するものの、入学してからでも進路変更できる進振り(※)のシステムを取っているため、私みたいなタイプでも安心して進学できるかなという思いはありました。

※進振り(進学選択)1年生の時点で語学含む幅広い領域の学問を学び、学部2年生の夏の時点で3年生からどの学部に進学するかを確定する。

 数学や物理、化学が得意だったので、ひとまず多くの人が理学部、工学部に進学する理1(理科1類)を選びました。

 そして他には慶応義塾大学の医学部と早稲田大学の理工学部。慶應はなぜ医学部? と思われるかもしれませんが、高校時代にハマっていた漫画『ブラック・ジャック』の影響もあり、医療系の進路も視野に入れていたためです。

 ただやはり、勉強は東大の二次試験科目(国語、数学、理科2科目、英語)がメインでした。本当に淡々と、入試のために必要な勉強に励んでいました。

 今の自分だったら考えられないですけど、本当に当時は何も考えていないというか、ただただ楽観的で。受からないかもしれないという恐怖とか、全然なかったんです。

 今思うとうらやましい性格というか……。いざ自分の子が入試となったら、自分のとき以上に心配してしまいそうです。

■苦手な社会の対策は?

 当時の東大入試はまずセンター試験を受けます。ここである程度得点しないと足切りされ、二次試験に進めません。5教科のなかで、社会だけは自信がなくて。特に歴史が苦手だったので、倫理と政治経済を選択しました。

 なぜ倫理かというと、高校で倫理の授業があったんです。そこで、昔の哲学者はどういう背景でこういう考えに至ったかとか、いろいろな思想に触れることができて、面白い学問だなって。政治経済も興味があり、歴史に比べれば嫌いじゃなかったので。センター試験対策もイヤイヤでなく、前向きにできました。

 そう考えると受験科目選びは大事ですね。

 とはいえじっくり勉強している時間はありませんでしたから、受験の必須アイテム、参考書『一問一答』と赤ペン・緑シートのセットで、通学時の電車の中で効率的に勉強しました。

 そしていよいよセンター試験の日。自分では落ち着いて解いたつもりで、全体的によくできたと思いましたが、自己採点すると国語(現代文、古文、漢文)の点数が低くて。

 でも落ち込まなかったんですね(笑)。東大は二次試験重視だし、何とかなる!とここもポジティブ思考で、すぐに気持ちを切り替えてラストスパート。家や塾の自習室で、最後まで気持ちを切らすことなく勉強に励みました。

 そしてセンター試験の足切りもセーフで、東大二次試験当日も周りも気にならず、全く緊張せずでした。うーん、なんでしょうね。小学校の頃から散々、模試やら試験を受けてきて、 う雰囲気に慣れていたのかもしれません。過去問もしっかり解いていたので、「見慣れた問題が出た」という感じで、それなりに手ごたえもありました。

■合格発表の日は高校の卒業式の日

 当時東大の合格発表は、本郷キャンパスでの掲示ほか、電報や電話で確認する方法があったと記憶しています。でも私は現地で合格の感動を味わいたかったので、必ず見に行こうと決めていました。

 ただ、合格発表と高校の卒業式が同じ日で、卒業式後には高校の謝恩会もあったんです。卒業式でも謝恩会でも6年間お世話になった先生方、仲良くしてくれた友達を思ってしみじみしたかったのに、心のどこかで合否が気になっちゃうみたいな。微妙な感じでした。

 そして謝恩会が終わったあとに本郷キャンパスに駆け付け、掲示板を見ると自分の番号が「あった!」と。友達と見にいったのか、親にはどう報告したのか、記憶がぼんやりしているのですが、とにかく嬉しかったことは覚えています。

 私なりに6年間勉強して、受験した大学の合格をすべてつかんだ訳ですが、今思えば、志望校に合格できたのは、私一人だけの力ではないんですよね。親に私立の中高一貫校や塾にも通わせてもらって、健康管理してもらって、何の悩みもなく毎日平和に暮らせたからこそ勉強にも集中できたんだと思います。

 見えてないところで全面的にサポートしてくれた両親には本当に感謝しています。当時その思いがちゃんと親に伝えられたかといえば……それは反省すべき点ですね。

(取材・文/阿部桃子)

菊川怜/1978年埼玉県出身。俳優、タレント。東京大学工学部建築学科卒。大学在学中にモデルとしてデビュー。数多くのドラマ、映画、CMに出演する一方、情報番組やクイズ番組などでも活躍。2017年に結婚し、19年に長男、20年に次男、21年に長女を出産。2024年11月に離婚を発表。今秋10月17日に菊川怜さん主演映画「種まく旅人 醪のささやき」が公開予定。