ビットコイン戦略に逆風、資金調達模索のメタプラネット-1日に総会

(ブルームバーグ): 元トレーダーで、低迷していたホテル運営会社を暗号資産(仮想通貨)投資会社に変貌させ、投資家の注目を集めたサイモン・ゲロビッチ氏に今、逆風が吹いている。

  ゲロビッチ氏が率いるメタプラネットの株価は、年初から400%超の急騰を演じた後、6月半ば以降に半値まで下落。この急落によって、同社がこれまでビットコインの買い増し資金を調達する際に採用してきたファイナンス手法が危機にさらされている。

  同社は27日、海外市場での新株発行により約1303億円を調達する計画を発表した。さらに、9月1日に都内で開かれる臨時株主総会では、追加の資金確保を目的に、日本では珍しい優先株の発行可否を巡る議案について採決が行われる予定だ。

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  時間との戦いだと、ゲロビッチ代表取締役社長は強調する。

  トランプ米大統領の暗号資産に好意的な政策を追い風に、ビットコインは今月、一時過去最高値を更新。マイケル・セイラー氏率いる米ビットコイン投資会社ストラテジーの手法に倣い、世界各地で多くの企業や投資家が競うようにビットコイン取得に動いている。

  「出遅れるわけにはいかない。皆が競ってビットコインを買っている」。オーストラリア出身で、ゴールドマン・サックス・グループで株式デリバティブ(金融派生商品)トレーダーとして勤務した経験のあるゲロビッチ氏は、ブルームバーグとのインタビューでこう語った。「自分のツールボックスに新たな道具を加えたい」。

  情報サイトのビットコイントレジャリーズ・ドットネットの集計によれば、現在、世界には170を超える「ビットコイントレジャリー企業」がある。これは、自社のバランスシートにビットコインを保有する上場企業で、保有総額は1110億ドル超(約16兆3200億円)に上る。

  世界の保有額首位は約63万ビットコインのストラテジーで、メタプラネットは1万8991ビットコインで7位となっている。メタプラネットは来年末までに保有量を現在の5倍超となる10万ビットコインへ拡大し、2027年末までには21万ビットコインまで増やすことを目標に掲げている。

メタプラネットの株価はピークから急落

  メタプラネットは今年に入り、米エボリューション・ファイナンシャル・グループ傘下の投資ファンド、エボ・ファンドとの新株予約権に基づく契約を通じて、これまでに16億ドル超を調達した。ビットコイン購入費用への充当が目的だ。

  この仕組みでは、メタプラネットが行使価額修正条項付新株予約権(MSワラント)と呼ばれる証券を用いてエボに株式を売却する。MSワラントによって、保有者のエボは、当初合意した価格を基準にしつつ、株価の動きに応じて変動する条件で株式を取得できる権利を得る。

  ゲロビッチ氏は、この資金調達手法を、ビットコイントレジャリー業界でよく使われる表現を借りて、好循環を示す「フライホイール」と呼んでいる。

  株価が上昇局面にある際には、この仕組みはうまく機能する。株価があらかじめ設定された価格を上回れば、エボは権利を行使して利益を得ることが可能だ。取引にかかる事務手数料や法務コストについて、メタプラネットが支払う額は「ほぼゼロ」だと、ゲロビッチ氏は語る。

  この契約について、エボはコメントを控えた。

  しかし、メタプラネット株は足元で急落。ビットコイン自体は約2%上昇したにもかかわらず、同社株価は6月16日の高値から8月29日までに54%下落した。

  株価が下落する中、エボにとってMSワラントを行使する妙味は薄れていると、ジェフリーズの元アナリストで現在は投資調査プラットフォームのスマートカルマで日本株調査を手がけるマーク・チャドウィック氏は指摘。「フライホイールは減速した」と語る。

  メタプラネットのウェブサイトのデータによると、ビットコイン保有量の増加率は6月末までの2カ月間で160%以上となったが、その後の増加率は50%未満にとどまっている。

  株価が下がれば下がるほど、エボによるMSワラントの行使でメタプラネットが得られる資金も減り、ビットコイン購入に充てられる資本は細っていくと、チャドウィック氏は分析する。

メタプラネットのビットコイン購入が減速 | ビットコイン保有量

  メタプラネットの時価総額は現在、同社のビットコイン保有額の約2倍にとどまっている。6月時点では、このいわゆる「ビットコインプレミアム」が8倍超に達していた。ビットコイントレジャリー企業に投資する投資家にとって、このプレミアムは重要な指標だ。企業価値がビットコインの保有額に近づくほど、新株発行によって株主が間接的に保有するビットコインの比率が希薄化するリスクが高まるからだ。

  金融サービス会社ナティクシスでテクノロジー分野を担当するアナリストのエリック・ブノワ氏は、「ビットコインプレミアムこそが戦略全体の成否を左右する」と説明。「プレミアムが圧縮すれば、有利な条件で買い増しができなくなり、投資家の関心は薄れ、株価も下がっていく」と話す。

  米ストラテジーは最近、株式売却制限を緩和し、ビットコイン購入の加速を狙った。一方、メタプラネットが打ち出した解決策は、MSワラントから優先株へと資金調達の手段を広げ、さらに海外の株式投資家の資金を取り込むことだ。

  メタプラネットは27日、9月3日から30日までエボの新株予約権行使を全て停止すると発表。この措置は「その後の優先株発行への道を開くものだ」と、アナリストのチャドウィック氏はリポートで指摘している。

メタプラの発行済み株式数、資金調達ラッシュで増加

  優先株は株式と債券の両方の性質を併せ持つ証券で、一般的に議決権はないが、普通株よりも配当を優先的に受け取れる仕組みになっている。米国ではストラテジーが資金調達手段として活用してきた。

  ゲロビッチ氏は優先株を「防御的なメカニズム」と位置付けている。普通株主の持ち分を希薄化させずに資金を調達できるためだという。「もし当社の株価が下がり続け、理論的にビットコイン保有額と同水準まで落ち込むようなことがあれば、株式を発行するのは望ましくない」と語る。

  メタプラネットは1日の総会で、最大5億5500万株の優先株発行に関する規定を新設する議案について採決する。議案が承認されると、優先株式の発行が可能となり、最大で5550億円の資金調達につながる可能性がある。

  優先株の配当利回りは最大で年6%となる可能性がある。当初は、発行上限をメタプラネットのビットコイン保有額の25%に設定する。

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  総会には、米大統領の息子であるエリック・トランプ氏が出席する予定だと、先週ブルームバーグが報じた。総会は6時間にわたって開かれる見通しで、K-POPのライブ公演も予定されている。

  メタプラネットの資料によると、同社の戦略アドバイザーであるエリック氏には、330万株を取得する権利が付与されている。

  長年にわたり金利がゼロに近い水準にとどまってきた日本では、高い配当を示唆するメタプラネットの優先株は堅調な需要を集める可能性があると、ナティクシスのブノワ氏は話す。

  ただ、「資本が無限にあるわけではない」と指摘し、「この資金調達レースがいつ終わるのか、誰もが自問する必要がある」との見方を示した。

原題:Bitcoin Proxy’s Chief Seeks Funding Fix as ‘Flywheel’ Falters (抜粋)

--取材協力:Bailey Lipschultz、田村康剛.

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