あの町の老舗『グリルABC』(大阪)が愛されるワケ。それはオムライスと中華そばの組み合わせにあった
食楽web
●昭和25年創業、70年以上も愛され続ける『グリルABC』。人気の「オムライス」と「中華そば」を食べてきた。
派手に宣伝をしているわけでも、メディアで頻繁に取り上げられているわけでもない。けれど何十年も続いていて、お昼時には常連らしきお客さんが自然に集まってくる。みなさんの街にもそんなお店はありませんか?
旅先で名物グルメを食べるのもいいですが、地元の人たちに混ざって長く愛されてきた味を楽しむのもまた格別です。大阪・北浜にある『グリルABC』は、常連客だけでなく、若者も外国人観光客も受け入れてくれる懐の深い一軒です。
変わらぬ味で愛され続ける隠れた名店『グリルABC』
タイムスリップしたような店内
『グリルABC』は1950年(昭和25年)創業の大衆洋食店。2階建てのこじんまりした店内に足を踏み入れると、ゆったりとした時間の流れを感じます。お昼のニュースが流れるテレビ、古い冷蔵庫、壁に貼られた手作り感満載のメニューにレジ横の黒電話。昭和の空気をそのまま閉じ込めたような雰囲気です。
1階のテーブルでは常連らしき男性たちがテレビを眺めながら静かに食事中。2階からは、知り合いにすすめられて来た大学生くらいのグループと、欧米人カップルが降りてきました。海外からのお客さんも多いんですか? と店員さんに聞いてみると、「そんなことないですよ。あの人たちはスペインから来たって言ってたけど、どこで知ってくれたんやろう……」と、戸惑いながらもちょっと嬉しそう。
知り合いの紹介で訪れる若者に、遠くスペインからやってきた観光客。口コミやSNSを通じて、老舗の味がじわじわと広がっているようです。
洋食と中華を組み合わせるのが通の楽しみ方
メニューを見てみるとハンバーグやエビフライ、ミンチカツといった王道の洋食に加え、なぜかチャーシューメンや八宝菜などの中華料理も並んでいます。同店が愛される理由の一つが、洋食と中華を同時に楽しめることなのだそう。せっかくならと、人気の組み合わせである「オムライス」と「中華そば」を注文してみました。
素朴ながらも奥深い牛タン入り「オムライス」
「オムライス」700円
まず運ばれてきたのは、透き通るような薄焼き卵に包まれた「オムライス」。ケチャップもデミグラスソースもかかっていないシンプルな見た目。その分、ライスの味付けがしっかり濃いめで深みがあります。なにか秘密があるのかも……と気になって聞いてみると、「細かく切った牛タンが入ってるんです」とのこと。
グリンピースと牛タン入りのケチャップライス [食楽web]
優しい卵の風味に甘酸っぱいケチャップ、豊かな旨味の牛タンが一体となって、唯一無二の味わいを生みだしています。
じっくり堪能していると「タンシチューもおいしいですよ。分厚くてやわらかくて、噛まなくていいぐらいにトロトロしてて」。年配の女性店員さんが、にっこりしながらメニューを指差して教えてくれました。きっと、タンシチューに使わない部分をオムライスに入れているのでしょう。
次は、絶対にタンシチューを注文しなければ。ずるすぎるプレゼンに再訪が確定しました。
懐かしい味わいの「中華そば」
「中華そば」500円
チャーシューとモヤシ、青ネギ、錦糸卵がのった昔ながらの「中華そば」。スープは鶏ガラベースの醤油味で、上品でありながら口いっぱいに旨味が広がります。チャーシューはしっかり歯応えがあるタイプ。脂身が少ない分あっさりしつつ、噛むほどに赤身の濃厚な味が溢れ出します。
飽きのこないあっさりさが魅力
麺は優しいスープとよく馴染む、やわらかめでツルツルとした食感。コシが強い麺や豪華なトッピング、濃厚なスープのラーメンもいいけれど、ふと恋しくなるのはこういう味なのかもしれません。なんだか懐かしくてホッとする一杯でした。
何度も通いたくなる味
お客さんたちが「おいしかったです。また来ます」と笑顔で話している姿が印象的でした。スペイン人カップルも「Delicious!Good!」とテンションが上がっている様子。次はタンシチューか、それとも日替わりランチにしようか。筆者もすっかり常連気分で、また来ますと宣言して店を後にしました。
(撮影・文◎安達春香)
●SHOP INFO
グリルABC
住:大阪府大阪市中央区内平野町3-2-14
TEL:06-6941-9015
営:11:00~14:30
休:土・日・祝日
https://www.instagram.com/abc1950.12.23/
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