OpenAI、博士号レベルの「GPT-5」 コスト・速度・能力 全向上で「これ1つ」に

OpenAI、博士号レベルの「GPT-5」 コスト・速度・能力 全向上で「これ1つ」に

OpenAIは8月7日(米国時間)、AIモデル「GPT-5」を正式発表した。同社は「これまでで最も賢く、最も速く、最も便利なモデル」と説明しており、今後の主軸モデルとして全面展開する。

GPT-5は無料版から月額200ドルの「ChatGPT Pro」利用者まですべてに即日公開され、日本でも利用可能になるという。

OpenAIのサム・アルトマンCEOは、「GPT-5はまだAGI(汎用人工知能)ではないものの、そこに向けた明確な進歩だ」と語る。

「博士号(Ph.D.)レベルの専門知識に質問に答え、ソフトウェア作成などのタスクを実行できるシステムが世界中の誰でも無料で利用できるようになった。5年前には絶対に不可能と考えられていたことであり、多くの人々に利益をもたらすだろう」(アルトマンCEO)と自信を見せた。

OpenAIサム・アルトマンCEO

推論モデルへと統合、無料でも利用可能に

これまでOpenAIは、複数のAIモデルを使い分ける戦略をとってきた。現状の主軸は「GPT-4o」。それに加え「o3」「o4-mini」などを併用している。

理由は、GPT-4oまでとo1・o3・o4-miniといったモデルでは性質が違ったためだ。

GPT-4oは言語予測型、すなわち一般的な「大規模言語モデル」だ。ただ、GPT-4oのままでは複雑な推論や問題解決に限界があるため、同社はo1以降「論理的推論(Reasoning)」モデルを採用した。これは、答えを出す前に思考の時間を設け、ステップを踏んで自律的な推論を行なっていくもの、と考えれば良い。それぞれには得意・不得意もあり、処理スピードやかかるコストも異なる。

GPT-5からは両者の路線を統合、スピード・賢さ・正確さなどの点でベストな状態での提供を目指す。モデルの選択は可能だが、GPT-5のまま、ほとんどの用途に適合する。コスト面での細かい情報は開示されていないが、冒頭で述べたように、GPT-5は無料の利用者にも提供される。これまで、Reasoningモデルであるo3などは有料サービス契約者にのみ提供されていたので、「無料ユーザーには最初のReasoningモデル提供となる」とアルトマンCEOは語る。

月額200ドルの「ChatGPT Pro」利用者はGPT-5を無制限に利用できるほか、GPT-5の上位版にあたる「GPT-5 Pro」も利用可能。月額20ドルの「ChatGPT Plus」利用者は、GPT-5 Proは使えないし無制限ではないものの、「相当に満足できる量」だけGPT-5を利用できるという。

無料での利用者はGPT-5の利用可能量がChatGPT Plus契約者よりかなり少なくなるものの、そのあとは性能限定版である「GPT-5 mini」に切り替わって利用可能であるという。

現時点では、正確にどれだけの量が使えるかは情報が得られていない。

博士号レベルでコーディング能力も向上

では、GPT-5はどれだけ賢いのか。

現時点で細かなベンチマーク結果は得られていないが、OpenAI側は「最も賢く、最も速く、最も便利」であること、各種ベンチマークにおいて最先端・最高級の結果を残していることを強調する。

アルトマンCEOは、GPT-5の性能を「GPT-4oが時代遅れのテクノロジーに感じられるほどだ」と話す。

「GPT-3は高校生レベル、GPT-4は賢い大学生レベルだった。それに対してGPT-5は、Ph.D.(博士号取得者)レベルの専門家のようだ。GPT-5を皆、これまでのどのAIシステムよりも気に入って使うだろう」(アルトマンCEO)

特に有用性として強調されたのが、「コーディング能力の向上」「ライティング能力の向上」、そして、「ヘルスケア関連の回答」だ。ただ正確性・信頼性は高まっているものの、医療専門家の代替となるものではない。

中でもコーディング能力については、「GPT-5時代の決定的な特徴の一つになる」(アルトマンCEO)とする。

AIに自然言語で指示を与えて、ソフトウェアのコードを生成・修正させるいわゆる「Vive Cording」の能力向上については、ソフトを作った経験のない人でもチャットからソフト開発が行なえるため、「オンデマンドでのソフトウェア活用」(アルトマンCEO)が視野に入る。つまり、自分が欲しい機能・サービスをその場で考え、GPT-5にアプリを作ってもらい、必要がなくなったら使い捨てる……というスタイルが可能になる、という主張だ。

Vive Cordingがもたらす究極の姿として語られることが多いが、アルトマンCEOは改めて、ここでそのビジョンを説明したことになる。

さらに、GPT-5はGPT-4oよりも、o3よりも早く思考するため、その分応答も早くなる。

また、いわゆるハルシネーション(事実と異なる回答)の発生率も抑えられており、GPT-4oよりも低い値になるという。

信頼性もコストも改善、テスト企業からも絶賛の声が

o3では最大200Kトークンまでのデータを扱えたが、GPT-5ではそれが最大256Kにまで拡大され、同社史上最も長いコンテキストを扱える。

OpenAIによれば、GPT-5はこれまでのモデルよりも「長い時間処理がかかるタスク」の信頼性と精度が上がっているという。

例えば、数秒で終わるチャットなどだけでなく、処理が終わるまでに数分かかるようなタスクであっても、ちゃんと最後までタスクを完了する信頼性が増しているようだ。これは、コーディングに代表されるエージェント的なタスクや、内部でWebブラウザや他のAPIなどを活用する「ツール的な利用」にもプラスとなる。

その上で、インフラの更新とソフトウエアの最適化から、運用コストも下がっている。

以下はAPIから使った際のコストだが、少なくとも入力については、o3とGPT-4.1の100万トークンあたり2ドルに対し、GPT-5では1.25ドルとこれまでのモデルよりも安くなる。

APIからの利用コストを比較。より素早く賢くなったが、入力のコストは下がった

インフラの先進性には強い自信を見せる一方で、「AIをグローバルな市場で利用可能にするために、世界中でより多くのインフラを構築する必要があることを認識している。Stargate ProjectやOpenAI for Countriesプログラムを通じ、各国と協調態勢にある」(アルトマンCEO)と話す。

AIエディターのCursorやWindsurf、統合開発環境大手のJetBrains、健康保険事業のOscar healthやUberなどはGPT-5のテストに参加し、それぞれ「高い効果が得られた」とコメントしている。

日本でも発表後すぐに使えるようになると予想され、OpenAIやテストした企業の言葉が正しいか、すぐに確かめられそうだ。