「警察が尋問したら全員辞任ですか?」元サントリーHD 新浪氏の沈黙が投げかける問い

経済同友会の新浪剛史代表幹事。9月3日の定例会見に登壇した。

9月3日、15時から開かれている経済同友会の定例会見に、同会代表幹事の新浪剛史氏が姿を見せた。9月1日付でサントリーホールディングスの代表取締役会長を辞任した新浪氏だが、代表幹事の職務の進退については、経済同友会の判断に委ねた上で、職務は当面自粛する方針を表明した。

「同友会には会員倫理制度などがある。私自身は潔白と考えているが、透明性の高い経済同友会の仕組みに判断をゆだね、当面は活動を自粛し、規定に則り、岩井副幹事に代理を依頼する」(新浪氏)

9月2日にサントリーHDが開いた緊急会見には姿を見せなかったが、この経済同友会の会見で、捜査や疑義の内容を含めた経緯を自らの声で語った。

「法を犯していないし、潔白だ」

新浪剛史氏。「ご迷惑をお掛けして申し訳ない」と頭を下げた。

「まず、私の方から事実関係の説明をさせていただきます」

9月3日に都内で開かれた経済同友会の定例会見では、代表幹事の新浪剛史氏が、警察の捜査対象となったサプリメントをめぐる経緯を自ら説明した。

私もそうだが、質疑を聞く限りでも、前日のサントリーHDの会見を取材していた取材陣は少なくなかった。昨日、姿を見ることができなかった新浪氏の表情は、やや疲労を感じさせる。この数日、どんなことを考えてきたのか。

サプリメントをめぐっては、「自身で購入したもの」と「後から送られてきたもの」の2回の動きがあることが分かった。

まず1回目について、新浪氏は、2025年4月ごろ、アメリカでCBDサプリメントを購入した。著名な健康アドバイザーである知人から勧められたもので、日本でも同ブランドの商品が販売されていることから「国内でも適法だと理解していた」と説明した。国内で入手できるものを、わざわざアメリカで購入したのは「安価だったため」だという。

当初は出張時に自ら日本へ持ち帰る予定だったが、ルートにドバイやインドが含まれていた。「これらの国はCBDの持ち込みが厳しい」と知人に指摘され、代わりに知人が日本へ運ぶことになった。知人はサプリをハンドキャリーで持ち込み、本人の自宅に送付。だが、出張が多い新浪氏と家族は、「知らない荷物は受け取らない」というルールを作っていると言い、実際には受け取られず廃棄されたようだと、会見では説明した。

次が2回目だ。知人は別の機会に、再びサプリをアメリカから自身の弟宛てに郵送し、弟に新浪氏宅に送るよう依頼した。新浪氏によると、捜査の対象になったのはこの2回目のサプリメント送付に関してだ。

この弟が逮捕された上、サプリの郵送先に新浪氏の名前と住所が記載されていたことから、「捜査の対象になるかもしれない」と姉である知人から連絡を受けた。新浪氏は「2回目の郵送は把握しておらず、受け取ってもいない。おそらく同様に家族が廃棄したとみられる」と語った。

「ですので、所持も使用もしていません。1回目のサプリメントについても、結果的に私自身が日本国内で手にすることはありませんでした。(2回目のサプリは)私が米国で適法と認定して購入したCBDサプリメントと同一であるかどうかも分からないし、手にしていません。ゆえに、私は法を犯しておらず、潔白であると思います」(新浪氏)

「大好きなサントリーに迷惑をかけてはいけない」

会見場に入る新浪剛史氏。

会見で、たびたび自身の潔白を強調した新浪剛史氏。取締役会から勧告され、サントリーホールディングス(HD)の会長職を辞したことについては、納得できない部分もあるだろう。しかし、会見中は経営陣からの辞任勧告に対する恨み節がこぼれることはなかった。

疑義が持たれたのはサプリメント。サントリー自身もサプリ事業を展開しており、違法性の有無が確定していなくても「ガバナンス上はアウト」という判断が社内で下された。新浪氏は、この決定を受け入れた理由についてこう説明した。

「鳥井信宏社長とは10年以上、一緒に現場を回り、アメリカのビーム社との統合を進め、アメリカでハイボールを広めた。(鳥井社長をはじめ)そんな仲間に迷惑をかけてはいけない。お客様にも、大好きなサントリーにも迷惑をかけてはいけない。…そう思い、辞任を決めました」

代表幹事は辞任せず

経済同友会副代表幹事の岩井睦雄氏。経済同友会における新浪氏の処遇について判断をゆだねられた。

一方で、経済同友会の代表幹事職を続けるかどうかについては、同会の判断に委ねるとした。

「経済同友会には会員倫理制度など、しっかりとしたガバナンスの仕組みがあります。私自身は潔白だと考えていますが、この透明性の高い仕組みに判断を委ね、当面は活動を自粛します」

と語り、結論が出るまでは副代表幹事で日本たばこ産業取締役会長の岩井睦雄氏に代理を任せるとした。

新浪氏はこのほか、政府の経済・財政分野の有識者委員や複数企業の社外取締役などの役職も兼任しているが、それらについても「自ら進退を決めるのではなく、判断を委ねる」と強調した。